86
一通りの演奏が終わったタイミングで俺達全員の演奏が重なった。あの子はそのまま一人でも続ける意思だったようで、一瞬不快の念を放出したけれど、すぐ様ご機嫌に演奏を続けた。
最高の一日だったのは確かだ。
けれど少し、悔しかった。
俺達のライヴは最高に盛り上がった。俺は正直、彼を喰うつもりでいた。その後のライヴに少しでも影響を与えたいと思っていた。それが出来るって、確信もしていた。
けれどそうはいかなかった。
彼はやっぱりスターだ。その登場と共に、俺達の記憶なんて消えてしまう。
アンコールが終わるまで、俺達に出番なんて必要ない。彼の後に出る勇気もなかった。楽曲がいいとか悪いとか、歌が上手いとか下手とか、そのレベルで彼は語れない。その存在感で彼には敵わない。つまり俺達はまだまだって事。それはまぁ、伸び代があるって事でもある。
あの子を誘ったのは、いつもの手順だ。メンバー募集のチラシも残りは一枚。最後はその渡し方も工夫が必要だな。
まぁ、あの子にはノビちゃんがいるからあれでよかったんだ。
幼馴染っていうのはいいもんだよ。俺もそんな恋をしてみたかったって思うこの頃だ。
あの子が入った事で、俺達は一種の限界に到達している。もう一人必要だが、その答えが分からない。
最後のピースを埋めるのは難儀だ。
ってな訳で俺は、この後少し迷走するんだが、その光景をここに挟むべきかで悩んでいる。まぁ、取り敢えずは語るつもりだが、必要かどうかの判断は後の世に任すとしよう。




