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 あの人は野外ライヴでこそ真価を発揮する。オープニングアクトであるのに、その日のベストアクトに選ばれている。大トリが終わった後でも多くの人の脳裏にあの人が留まっていたって事だよ。私もそうだった。ノビも凄かったけれど、やっぱりあの人がいるからこそ皆が輝いていた。私の憧れは、間違いじゃない。

 野外ライヴは翌日には伝説と化していた。あの人は一気に学校内でも注目の的になっていた。それ以前は知る人ぞ知る有名人ではあったけれど、先生までもが憧れの眼差しを向けている。

 次回のライヴが決まったんだ。今度こそ、頼むよ。

 朝の会が始まる前に現れたあの人がそう言った。

 ノビとは同じクラスではあったけれど、いつも遅刻スレスレでやって来るからその場を目撃されていない。

 ライヴの日付と場所は聞いたけれど、それだけだった。あの人は、見た目通り素っ気ない。もっと愛嬌があれば絶対にモテるのにって思うけれど、その必要はなさそうだ。今のままでもあの人はモテているし、そもそもあの人はそれを求めていない。

 モテたくて音楽を始めるのが基本だとか古い人はよく言うけれど、それってただの後付けでしかない。大抵の場合、その時聞いた音楽に触発されただけの事。

 あの人はライヴでも殆ど喋らないし、私も誘い文句以外は聞いていない。

 誘われたんでしょ?

 昼休みにノビがやって来た。

 ノビがやって来ると、ほんの少し教室がざわついた。前日の噂はもう広まっている。

 日程は聞いてる?

 ノビはそう言いながら私の前の席に後ろ向きに座り込む。

 その席が誰の席なのかを知らないノビは幸せ者だと思う。

 そこに座っているのは、この高校のPTA会長の息子だ。彼には三年生のお姉さんがいて、この高校で生徒会長をしている。

 けれど問題はそこじゃない。

 彼はとてもオナラが臭い。その椅子は彼の匂いに染まっている。少なくとも後ろの席にいる私はそう確信している。

 昨日の今日ってのは流石に早過ぎるよね。

 ノビはまだ前日からの興奮が冷めていないようだった。

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