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あいつが加入した事で俺は思いついた。この先の世界制覇に向けて、音楽以外で攻めてみてはどうかってな。
音楽は感情だ。言葉もまた感情だ。
俺は歌の歌詞だけではなく、単純な言葉でも勝負をしたいと考えた。
なんていうと大袈裟だよな。実のところ、俺は単純に物語好きなんだよ。
俺の基礎は果てしない。ネバーエンディングストーリーが全ての始まりだ。
物語には全てが詰まっている。文字で記しただけでも、映像も音も聞こえてくる。しかも物語が終わる事はなく、永遠と広がっていく。
俺は音楽一家で生まれた生粋の音楽好きではあるが、そのルーツは深い。
爺ちゃんが作家だったんだ。
元々は新聞記者で、将棋や麻雀の記事を得意としていて、有名人の代わりにエッセイやら解説本やらを書いていた。よくある有名人が書いたとされる小説も代筆していた。
所謂ゴーストライターっていうやつだ。
俺の音楽は物語になっている。そもそも言葉を紡げば物語が始まる。人が動けば音楽が流れる。音楽が流れれば映像も浮かぶ。
全ては繋がっている。それだけの事だ。
あいつの音には物語が宿っている。確かにそれを感じる。あいつは歌心に溢れている。
俺の誘いに乗ってくれたあいつだが、ただ単にトロンボーンを吹かせるのは勿体ない。演奏中は口を塞がれてしまうが、その言葉も面白いから腹が立つ。
初ライヴからMCを任すまでとはいかないが、あの喋りを封印させるのは勿体ない。
俺はロックナインの小説化も考えている。中心にあいつを添えようかとも考えたが、やっぱそれはなしだ。あいつの言葉は面白い。けれどしつこ過ぎるのが難点だ。
それでも小説化は諦めない。俺は物語にこそ音楽が宿っていると考えている。
物語っていうのは、それそのものが歌なんだ。まぁ、詩とも言えるがな。
あいつのトロンボーンは歌っている。
しかも下手くそなんだよ。
それがまたグッとくる。
この先もあいつには今のままでいて欲しい。小慣れたあいつなんて見たくもないね。
だから俺はあいつをいじめて楽しんでいる。
まぁ、陰湿じゃないがな。愛があればどんな虐めも許されるとは思わないが、俺のは問題ない。虐めっていうのは、受ける側が感じたらそれでお終いではあるが、側から見て感じられてもお終いなんだよ。残念ながら俺の行動を虐めと呼ぶ奴は一人もいない。俺はほんの少し、あいつを弄んではいるが、しっかりとあいつの存在やら何やらを認めている。




