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 高校に入学をして先輩と出会ってから由は変わってしまった。

 由もまた中学時代には吹奏楽部に所属していました。マリンバなんていう珍しい楽器を選んだのは、その音色が美しかったからだと言っています。けれど本当は、その見た目は別として今ではアイドル的人気の歌手が以前に組んでいたインストバンドでその楽器を演奏していたからというのが本音であり、それ以外の理由は見当たりません。

 由の演奏はあっという間に吹奏楽部レベルを超えてしまった。これは悪口なんかではありません。教育と芸術は違う。それだけの意味です。

 先輩は由の存在を意識していました。入学当初から声をかけていた事を知っています。

 正直悔しい。

 先輩に声をかけられ、その音楽性を体験した由は、先輩に恋をした。

 それは僕だって同じだ。性的感情はなくても恋はする。そもそも先輩に恋心を抱かない生き物なんていない。本気でそう感じています。

 噂は入学前から聞いていました。既に有名人だったし、その後も日々知名度を増しています。

 けれどまさか、どうして? 先輩は突然僕の前に立ちはだかり、これを聞いてくれとカセットテープを差し出してきました。

 今時カセットなんて誰が聞くんだって思ったけれど、僕の家にはラジカセがあります。家に帰るとすぐにテープを回しました。

 先輩がバンドマンだって事は知っていましたが、音源を聞くのは初めてでした。向こうから声をかけてくれるなんて、これ程の喜びはありません。

 カセットテープを受け取りそれでお終いって事が悲しい。先輩はじゃあまたなと言い残し、背中を見せて消えて行きます。やっぱりカッコいいなって素直に感じました。

 ラジカセから流れる先輩の声は、純粋なカッコ良さしかありません。優しいとか強いとか、余計な形容詞は必要がないのです。

 スッゲェ! それが素直に飛び出た言葉です。

 凄いのは先輩の声だけではありません。ドラムもベースもギターもピアノも最高です。そこに絡みつくサックスが僕のお気に入りですが、ほんの少し身体が熱るのを感じました。正直悔しい。僕の音を重ねたい。というか、勝負したいと感じてしまったのです。

 翌日僕は、自らの足で先輩の前に立ちはだかりました。僕が入ればもっと楽しくなる。是非一緒に戦わせて欲しい。

 先輩の目つきが怖かった。何を言っているんだこいつはっていう声が聞こえてくるようです。まるで僕の瞳の奥から、言葉の真意を読み取ろうとしているかのようでした。

 今のお前じゃあまだ勝てないな。

 そんな言葉は聞きたくありませんでした。何故なら僕は、そんな事は百も承知だからだ! 分かっているんだ! だからこそ勝負したいんだよ! そんな言葉は当然表には出しませんが、その想いはたっぷりとこの瞳で表現しました。

 まぁ、やる気があるなら今夜のスタジオに招待するよ。場所と時間は勝手に調べる事だな。

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