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 彼の耳に俺達の音楽が届いたのは、求めていたからだ。彼は常に新しい音を求めている。

 後で知る事だが、俺達は恵まれている。ずっと誰かの前座ではあっても、注目度はライヴを重ねる度に上がっている。彼の耳に届いたのは、トシさんが彼と出会った事とは直接的には無関係だ。その前に俺達の映像を見た彼が、たまたまトシさんと出会い、側から見ていた彼のマネージャーの気付きで二人はお互いの素性を知ったに過ぎない。もっとも、素性を知ったからといって二人の心情に変化はなかった。二人は今でもサーファー仲間だよ。

 けれどまぁ、お陰様で前座に呼ばれた。毎度の事ではあるが、嬉しさはこれまで以上だった。仮にも外タレだ。それだけでも大興奮だが、彼はあいつの憧れだったんだ。もってこいだよな。

 俺はこう見えてサプライズ好きだ。まぁ、実際はどう見えているかになんて興味ないがな。

 あいつはぶっちゃけ趣味がいい。あいつから教わったアーティストの多くをリスペクトしている。彼もその内の一人だ。

 俺達からすれば彼は随分と年上だ。カッコいいというか、驚きだよ。とにかくご機嫌なんだ。俺はいまだに彼程ご機嫌なアーティストを知らない。その日は一人でやってきた。普段はバンドを組んでいて、そっちもこっちもご機嫌なのが堪らない。

 今回俺は直接話を受けていない。トシさんが受けた仕事だ。だからって事もある。まるで準備なしに始まるライヴも珍しい。あいつはブーブー文句を言っているが、そもそも俺が知ったのも当日なんだ。朝起きるとメールが送られてきていた事に気がついた。トシさんのメールには、明日のライヴが決まったと書かれていた。明日っていつだって思ったよ。メールの着信は十二時ちょうど。日付も場所も書かれてはおらず、あいつに伝えた時はまだ、俺も何も知らなかった。けれどまぁ、今日なんだろうなって予感はあった。だからあいつにはそれだけを伝えたんだ。

 学校に着いても連絡は来ない。他の三人に伝えて後は任せる事にした。連絡するのは面倒だ。そんな時間があれば新しい曲のアイディアを形にしたい。基本昼休みは音楽室か図書室に篭っている。どんなに短い時間でも、創作意欲は湧くし効率がいい。音楽室には楽器も置いてある。

 俺達の学校には軽音楽部があるが、奴等とは上手くいっていない。だから機材の豊富な部室は使えない。まぁ、その必要はない。音楽室の方が教室からは近いし、校長の許可で楽器置き場として利用させてもらっている。当然そこは生徒が勝手に入れないように鍵のかかっている一画だ。仲間を信じていない訳ではないが、余計な心配は身体に毒だからな。

 俺が当日の場所と時間を知ったのは出発してからだ。あいつの方が俺より早く情報を得ていた筈。まぁ、一緒に学校から直で向かったんだからどうでもいい話だな。

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