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 本来なら二郎の後すぐに声をかけたかった。けれどその頃のあいつは忙しそうで、俺はなかなか顔を合わせられずにいた。バンドの掛け持ち。あいつなりの焦りだったんだろうな。まぁ、俺には理解出来ない焦りだな。

 結果としては大正解だった。一つ間を入れる事で準備は完璧になり、あいつが望むステージが用意されたからだ。

 俺達は運がいい。そのお陰で彼に出会えたんだしな。

 彼はファンキーでハワイアンでカントリーでブルージーなサーファーだった。海が似合う彼は、この国に来てから毎日海に通っていた。その為に一ヶ月も早く来日しているんだから驚くよ。

 トシさんは河原以外でも練習をする。山中や海辺にも行くんだ。潮風は管楽器には大敵でしかないのにな。理由は単純だ。思いっきり吹ける。それだけ。音の拡がりも最高だが、吹いている本人にはあまり意味のない事だったりする。

 そして驚く事に、トシさんもサーファーなんだってさ。

 まったく・・・・ 似合わないのが悲劇だ。

 そこでトシさんは彼と出会った。仲良くなってからその素性を知ったらしい。素性を知ってから驚いても困るよな。大ファンなんだの言葉が軽くなる。

 彼は別口で俺達のライヴ映像を拝見する事になった。それは偶然なんかじゃない。新人バンドの前座を探すのは、ある程度のミュージシャンなら絶対に考える。ファンを増やす事にも繋がるし、何よりも異国の流行りやら新物やらに触れたいって気持ちが強く働くんだ。

 まぁ、まだまだ未熟な俺達にはそんな余裕はない。今はただひたすらに音を鳴らしたいってだけだ。それも出来るだけ多くの前でね。

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