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五、六人目のピース
あいつがメンバーになる事は前から決まっていた。物心ついた時からと言っても過言でない。
あいつは凄いピアニストなんだ。初めはクラシックを習っていたけれど、元からの素質なんだろうな、直ぐに個性が剥き出された。
バンドを組む事を決心したその日から既に俺の頭の中にはあいつがいた。どんな曲を演奏していてもあいつのピアノが頭の中に流れてる。
あいつがこの高校を選んでくれた事は嬉しかったよ。けれどすぐにって訳にはいかない事情がある。だからうちに半居候するっていうのは物凄く気まずかった。
あいつを避けていた訳ではないし、意識なんてする筈もない。あいつは俺にとって、妹なんだ。愛してはいるが、異性として見る事はない。出会った時から家族だった。そんな感情が湧く暇なんてなかった。それはお互い様だって、会話をしなくても分かるんだから不思議だよな。
出会いは忘れたからここには記さない。けれど音だけは記したい。
クラシックを習っていたお陰だか知らないが、あいつの音は過去と未来を繋いでいる。まるでベーブルースだ。
その意味を深掘りするのはヤブってもんだ。
俺がイメージする音をあいつは奏でてくれる。いいやちょっと違うな。それ以上の事を表現してくれると言った方がしっくりくる。
本気で引っ越してくるとは驚いた。しかもうちのアパートに。食事は同じテーブルだしな。
まぁ家族みたいなもんだから一緒にいる事に遠慮も恥もないが、あの圧力にはまいったよ。
どうして誘ってくれないの? 準備は出来ているのに!
向かい合って座っているとその視線がモノを言う。敷地内のアパートからは、その音も毎日届けられていた。
あいつは凄い。ただ上手いだけじゃない。その音が既に特別だった。打楽器は個性が出やすい。叩く時の感触が音に出る。誰にも真似の出来ない音を、あいつは幼い頃から出している。そしてその音は日々進化を続けているんだから驚いた。
タイミングは大事だ。あいつを披露する場所に拘りがある。まぁ、それ程いいものではないがな。拘りっていうのは我儘でしかない。




