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ライヴを観たのは偶然だった。たまたま友達に紹介された映像にあいつが映っていた。
最近話題になっていると言われた。ライヴ活動だけで音源はリリースしていないけれど、音楽好きの間では世界が変わるかも知れないと言われていた。
世界を変えたのはプレスリーくらい。ビートルズでさえその上に寝転がっていたに過ぎない。
映像を観た感想は、それは言い過ぎ、だった。けれど夢中になってしまったのは確かで、最後まで見終わった時には確かに私の世界観が変わっていた。
これはもしかして、凄い事が始まるんじゃないかと思った。
けれどまだまだ足りない。少なくともそこに私がいないのはおかしい。すぐにあいつへと連絡を入れた。
いきなりバンドに入れて欲しいなんて言わない。間近に控えていた発表会へと誘った。
いつもに増して喰い気味の私に狼狽えているあいつの様子が面白い。渋っている様子はなかったけれど、返事をするのに時間がかかる。まぁ、そういう奴だ。
発表会の日、あいつはまさかの女連れだった。当てつけかって一瞬思ったけれど、見覚えある顔に驚いた。すぐには思い出せなかったけれど、ほんの少しの会話をして楽屋で待機している時にあっと声が出てしまった。
バンドでベースを弾いている子だ。
演奏中のカッコいい顔とは違って可愛らしい表情をしていた。制服姿じゃなかったら私より年下に見える。女子高生の制服は狡いよなって思う。まぁ、今では私もその恩恵を受けているんだけどね。中学生とは違う独特のオーラを勝手に身に纏えるんだから凄い。
終演後にはベースの子が花束を渡してくれた。中にはメッセージカードが挟まれていた。
あいつが自分でそんな事を思いつく筈もない。女の力は絶大だって事。
けれど不満もある。あいつが無言なのはいいとして、ベースの子まで無言だった。笑顔だけで差し出された花束を受け取っただけで、その後は会話もなく、しかもそそくさ消えてしまい、そのまま戻って来る事はなかった。
まぁいいんだ。メッセージカードを開いてからは冷静になれたんだから。
今度一緒にスタジオに入ろうと書き記していた。
それだけ。せめて楽しかったの一言は欲しかったけれど、それもまぁあいつらしい。
それから私は既に決まっていた志望校を変更した。親への説得は問題なかったけれど、学校の先生が厄介だった。残念な事に、私の担任は職業教師だったから。
あいつが通う高校は、そこそこ頭がいい。しかも遠い。隣の隣の県。知り合いがいるから問題ないと説明をしても、今の成績では難しいと言われた。内申が悪いからねと、歯茎を見せる。
その歯をへし折ろうかと思って隣に座っている母を見ると、母も全く同じ事を考えていた。
母は拳をボキボキ鳴らしていた。私がそっと手を添えていなかったらきっと、その教師は歯抜けになっていたに違いない。
自分の進路は自分で決めますと言い、妥協を誘導するのだけはやめて下さいとお願いした。




