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俺はその日まで毎日通っていたが、俺以外の三人もそれぞれ足を運んでいる。あいつはその時点で既に俺達の仲間になっていたんだ。そしてあいつを迎える準備が整った。俺はライヴ前日に忘れ物大作戦の仕上げを終え、二郎の家で集まってあいつからの連絡を待っていた。あいつは分かり易い。全てが想定内だ。
と言ってもだ、音楽に関しては予想を裏切ってばかりでもある。
あいつの音は面白い。絶妙のタイミングで外す事が多いんだ。それは当然いい意味での外し方。まぁ、無意識でしているって点が天才的ではあるが、意識をする時はビシッと合わせてくる。このタイミングしかないだろって思うのは、いつもあいつが音を鳴らした後なんだ。
リハーサルがきちんとした初対面だったが不安はない。俺達はすでにあいつの音を知っていたからな。
だがあいつは違う。不安だらけじゃないかと想像していた。まぁ、それは余計なお節介でしかなかったがな。俺達の事はさておき、おっさんの事を完璧な程に信頼している。おっさんが薦める相手が間違った試しはない。実際にその後、おっさんに進められた子と結婚している。
俺達にとって最高の時間は、意外とあっさり過ぎて行く。今では勿体なく感じているんだ。俺も皆も憧れていた野外ライヴ。しかもいきなりの聖地だよ。
ライヴバンドとしてはどうしても開催したい会場が主に四つある。この時の野外会場はその内の二番目だ。一番目は二郎を迎えたそこそこ大きなライヴハウスだ。俺達は早くも目標の半分に到達していた。
三番目は難しい。世界最高のロックバンドがこの国で初めてライヴをした場所で、格闘技の聖地だよ。四番目はありきたりだよな。とにかく大勢を集められるし、ロックナインとしては立たなければならない場所だ。野球場の中でも特に多くの集客が出来るドーム会場だからな。
野外ライヴは気持ちがいい。それは確かだ。ライヴは所詮ライヴ。何処でやっても気持ちがいい。場所の違いなんて演者にはどうでもいい。それが本音だよ。
まぁ、大成功のライヴだった。前座もそうだしアンコールでも盛り上がった。いつも通りって言えばそうだが、それを継続出来る事が凄いんだ。
俺達は凄い。そういう事だよ。
俺達の音楽は確実に広がっている。俺は例のよってあいつにメンバー募集のチラシを手渡した。あいつは不思議顔で呟いた。一体何処を目指しているんだ?
あいつはきっと無意識だったのだろう。俺が浮かべた困惑に気付きもしないでメンバー入りを快諾していた。
憧れだった野外ライヴの感動は、数日後にやって来た。俺達五人は偶然の散歩で会場前に行ったんだ。意識なんてしていない。その野外音楽堂は大きな公園の中にあり、俺がお気に入りのレコード屋と最寄駅の間に存在している。無意識でその横を通る事も稀にはある。まぁ、いつもは俺一人だけだが、その日は何故だか当時の皆が一緒に付いてきた。まぁ、その最寄駅には貸スタジオがあって当時はよく利用していた。興味本位で付いて来たってだけだ。あいつらは俺の行き先が何処かを正確には知らなかった。
俺は正直レコード屋の行き帰りでその公園に立ち寄る事はしない。近道にもなるから横切る事はたまにあるが、大抵は無意識の帰り道だ。その音を聞いていると居ても立ってもいられない。お祭り会場を素通りするのって難しいだろ? それと同じ。しかもあそこには簡単には入れない。余計な興奮は身体に毒だ。




