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折り返しはすぐにはかかってこなかった。俺は特に求めていなかったから何とも思っていない。とっくに忘れていたっていうのが事実だ。家に帰り着いて食事も風呂も終えて、勉強やら曲作りやらを終えて布団をかぶった頃に電話がかかってきた。
あいつの事が気に入ったならよろしく頼む。俺はお前が気に入っているんだ。
おっさんは挨拶の言葉もなくそう言った。
俺もだ。おっさんをマイフェバリットに入れておくよ。
それは単純に携帯の連絡先フォルダの話だったんだが、おっさんは凄く気に入ったようだ。数年後にアイムフェバリットマンなんて曲を初めての歌物として発表している。一応だけどチャート入りもしている。ほんの少しではあるが、学生界隈では流行ってもいた。運動会でも使われていたとの噂も耳にした。
その後俺とおっさんはあいつの話を他所に音楽話で盛り上がり、正式にライヴのゲストに誘われた。既にあいつへのメッセージ付きのチケットは手元にあったが、俺はまだその事に気づいてはいなかった。手紙以外の何かがあるなってふうに感じていた程度だったよ。
まさかそんなメッセージが書き込んであるとは想像出来なかったんだ。
俺とおっさんはその後本番のその日まで一度も会っていない。連絡すらしていない。そんなんでいいのかって今では思う。まぁ、そんなんでもいいよなとも思うんだ。
守と優美や二郎には学校で伝えた。得体の知れない人物ではあるけれど、おっさん達のグループ名を出したら妙な仕方の納得をしていた。そして前座に出ると言ったら驚き、会場が野音だと知ったら絶句した。
俺達はそれまでに進めていた新曲だけでなく、あいつのイメージに合う楽曲も生み出していた。それと同時にあいつに似合うジャズも練習した。
俺は常々感じる。音楽にジャンルなんて無意味だ。それは音楽に限った事でもない。知っているか? 人種だって一つのジャンルなんだよ。
音楽はただ演奏しているだけで楽しい。それでいい。つまらないしがらみを与えるからややこしい。
ロックとクラシックの融合なんて遠の昔。派手なファッションや髪型も化粧も以前からやっている。少なくとも日本人が始めた事ではない。ジャズとロックの接近も同じ。とういか、ロックの先祖にジャズがある。ロックはその時代に合った音楽のごちゃ混ぜだ。ミクスチャーなんて言葉があるが、それはロックと同意語だ。よく聞くミクスチャーロックは、チゲ鍋みたいなもんだ。チゲは韓国語で鍋だ。訳すと鍋鍋だ。ミクスチャーロックはロックロックなんだよ。
まぁそんな事はどうでも良くてさ、俺はあいつの音に惚れた。おっさんが意図していた事までは分からないが、ピタッと嵌るピースを見つけた事に違いはない。
毎日観察していると、単純にあいつを誘う事はつまらないって感じた。あいつはすでに出来上がっている。出来上がった状態のあいつを迎えるなんて無意味だ。あいつにはその先を求めている。言っちゃ悪いが、現状で満足なんて出来やしない。




