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 並ぶ前に新作を買おうかと覚悟をしていると、販売員の方から声をかけられた。これを差し上げてくれと言われています。そう言いながら新作を一枚手渡さられた。

 それは新品ではあるが封が開けられていた。俺は少し不思議顔を浮かべた。すると販売員とは別のスーツ姿の女性が現れこう言われた。あちらにお並び下さい。中身は後で確認してくれると助かります。

 女性の言葉よりも、周りの反応が気になる。注目されるのは苦手だ。ステージ上で見られるのは嬉しいが、それ以外での視線は少し痛い。気不味さを感じながら列に並んだ。

 順番が近づいても嬉しくはない。何故だかそわそわはしてしまう。周りがそわそわしているのが原因だ。

 俺は緊張をしながらおっさんの前に立った。メンバー全員と握手が出来るってのはファンとしては嬉しいのかも知れないが、一発目がおっさんっていうのはちょっとキツイよな。あまりにもインパクトが強過ぎる。

 おっさんってのはアジテーターのニックネームだよ。俺が名付けた訳じゃない。バンド内での呼び名が世間にも広まっているだけだ。

 お前に紹介したい奴がいるんだ。詳しい内容はその中に書いてある。返事は早い方がいい。とにかくそいつに会えば俺の言っている意味は分かる筈だ。

 俺は頭に?マークを浮かべながら他のメンバーとも握手した。楽しみにしてるぞとか、あいつはいつも急なんだよとか、仲良くしようぜとか、会いたかったんだぜとか、きっと上手くいくさとか言われたが、曖昧な頷きを返すのが精一杯だった。

 家に帰る前に新作の中身を拝見した。電車で座席に座れたからだ。

 河原でサックスを吹いている奴がいる。あんた達より少し年上だ。きっと上手くいく。一度見て欲しい。それからチケットを渡してくれ。詳しい説明がなくても勘のいい君なら伝えたい意味が分かる筈。俺達はこの前のライヴを見ていた。君達は素晴らしい。是非とも協力を願う。

 一方的な手紙が差し込まれていた。それからおっさんの名前と電話番号が書かれていた。

 一緒に差し込まれていたのはおっさん達のバンドが三週間後に行うライヴのチケット。俺達にとっては憧れの一つである野外コンサート。そこに立てという意味なのか? 見ず知らずのサックス奏者と共に?

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