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四、五人体制初野外
たまたま俺はそこにいた。そしてたまたまあの人が俺の顔を知っていた。
あの人は俺が好きで聞いているジャズバンドのトランペッターだ。丸メガネとモヒカンが特徴だ。
ショッピングモールのステージであの人達が演奏していた。新しいアルバムの宣伝のようだが、真っ昼間からの演奏には少しばかりの違和感があった。あの人達には夜が似合う。
観客は少ない。けれど意外と若い女性からの支持がある事に驚いた。
少し距離を置いた位置から拝見していた。半径一メートル以内に誰もいない空間は、ステージ上からよく目立つ。
演奏時間は短い。三十分もない。新作の宣伝だからそんなもの。その場で購入すれば握手が出来る特典は、何の意味があるのだろう? 俺はどんなに好きなアーティストだとしても、通りすがりの挨拶に興味はない。仲良くなってからじっくりと話をするなら楽しいがな。
けれどその日俺は初めて握手会に並ぶ事になった。
最後の演奏を始める前に恒例らしい新作の宣伝が始まった。おっさんが口上を述べていると、トランペッターが俺に顔を向けながらそっとおっさんに耳打ちした。
するとおっさんは観客に向けての会話を途中で遮断し、俺に向かって直接話し始めた。
そこのハンサムなお兄さん。直接顔を見るのは初めてだな。けれど俺達は皆あんたを知ってるんだぜ。未来の有名人だ。是非ともこの後の握手会に参加してくれ。
その言葉の説得力に押され、頷いた。小遣いは少ないが、仕方がないかと覚悟を決める。
そして始まった握手会に俺は並んだ。意外と多く並んでいた。以前からのファンもいるようだが、その場でファンになった人が多くいたように見えたのが嬉しかった。




