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 向かった先は近所のファミレス。リハーサル後はのんびりと軽食と飲み物で時間を過ごす。普段はリハーサルの感想や意見交換をする場になってもいる。

 その場でブロッコリーやおっさんが俺の知らない話をしてくれた。正直戸惑ったけれど、まぁ、仕方がない。色恋沙汰には色々あるって事くらい学んでいる。それに、俺の才能の出所を知れて嬉しくもあった。母親は音楽を聞く耳は持っていたけれど、演奏はしない。歌も音痴だ。環境が俺を育てたと思っていたけれど、それだけではなかったらしい。

 俺には父がいた。まぁ、当然だな。人間は一人で子供をこさえる事が出来ない。出産は一人でも出来るけれどな。

 父親の存在を知らずに生きてきたが、問題を感じた事はない。母親がしっかりと愛してくれていたし、この環境だからなのか母親の魅力なのか、父親代わりの大人は多かった。

 ブロッコリーは俺の父親に会った事がある。そこで俺の話を聞いたそうだ。直接本人の口からではなかったけれど、本人もその場にいて笑いながらその事実を認める素振りをしていた。

 あるジャズバーにいる赤ん坊がこいつの息子なんだ。戸籍上は他人だけど、血は繋がっているし認知もしている。会って話した事はないようだけれど、こいつも売れる前まではそこで演奏している。何度か顔は見ているんだ。赤ん坊の頃から音楽的センスに溢れていたよ。確かもう高校生か? きっと近いうちに表舞台に出てくるんだろうなって思ってるよ。

 バンドメンバーの一人がそう言った。そしてこう付け加えた。

 売れてからもお忍びで顔は出しているからな。店の彼女とは今でも繋がっているようだし、養育費は相当払っているんだろ? どうして名乗り出ないのか不思議だよ。

 それからブロッコリーはようやくその人の名前を告げた。

 ジャズに興味がなくても音楽好きなら必ずその名前を知っている程の有名人だ。その曲もテレビでよく流れている。CMにドラマにバラエティー、街中やショッピングモールでもよく耳にする。コーヒーだかのコマーシャルにも出ていて、名前や曲とは結びついていなくても顔を知っている人は多い。そのパロディーがテレビや漫画で流れる事も多い。

 あの人が父親なのか? ライヴを見た記憶はなかったけれど、お忍びでやって来ては母親と仲良く会話をしているのは見た記憶があった。

 まぁ、どうでもいいこった。血の繋がりがどうだとかっていうのは外野が言う言葉に過ぎない。俺にとってあの人は父親ではない。正直言って憧れてもいなかったし、似ていると言われても嬉しくはない。まぁ、だからといって嫌う事もないし、避けるつもりもない。

 今はまだ話した事はないけれど、いつか俺もあのレベルに達したら話しかけようかとは思っている。まぁ、息子を名乗るつもりは毛頭ないけれどな。

 それでも事実を知った今では多少感謝をしている。あの人のお金で俺が自由に成長出来た事に違いはない。

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