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 音源は七曲入りだった。覚えるのは難しくない。元々ベースの入っていない音源、コード進行を踏まえれば自由に演奏出来る。だから私は、時間の限り聞き込んでコード進行を頭に入れた。後は本番を待てばいい。即興での演奏は今までスタジオでしか経験していないけれど、あの二人となら何とかなる。これは楽観ではなく、確信だ。

 二人はいつもツイている。私が参加を決めた事もそうだけれど、前座のヴォーカルが風邪で外出禁止になった事で困ったメインのバンドに急遽代わりの前座を頼まれた。千人以上は入る有名なライヴハウスで常に即日完売のチケットを手に入れるのさえ大変なのに、どういう訳かバンドとしては二度目のライヴを行う事になったようだ。好みのバンドではないけれど、テレビでも取り上げられる程の有名バンド。何処で二人の事を知ったのか、後で聞いてみるつもりだけれど、ツイているっていうのはこういう事だと感じている。そもそも初ライヴだってそうだった。あの場に立てるのは簡単じゃない。新人ばかりを集めたイベントや自主企画から始めるのが普通だ。完全アウェーとはいえ、いきなり満員の客を相手に演奏出来る事が凄すぎる。私だって知り合いすら来てくれないライヴを経験している。音尾君だってそうだ。最初から恵まれている速井君は、もしかしたら本物なのかも知れない。

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