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暴食の少年~最弱ステータスで追放された少年は、暴食スキルで成り上がる~  作者: カンチェラーラ


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肉串

「解体してからクリーンをかけたほうがよかったのかもな。けど、これであとは加熱すればいいだけだ」


 健康スキルを手に入れた俺は、さっそく次の作業に取りかかった。

 それは手に入れた肉の解体だ。

 魔ネズミの小さな体から皮をはいで内臓を取り除いていく。

 錆びた短剣でもなんとかできた。

 むしろ、これまで経験したことがないくらいスムーズに作業は終わった。


 多分これは調理スキルのおかげなんだろう。

 どこをどういうふうに切って、剥いで、取り除けばいいのかがかつてないほどに分かる。

 まるで孤児院の院長のような鮮やかな手さばきで解体できた。

 今まで孤児院で料理の手伝いをしても、こんなに手間取らずに食材を扱えたことはなかったと思う。


 だけど、それでも血が出るのはしょうがない。

 切って剥いでを繰り返して、解体を行った地下水道出入口近くの地面は汚れてしまった。

 当然、俺の手も短剣も汚れてしまって臭いが付いている。

 こんなことならば、解体が終わってからクリーンを使ったほうがよかったなと反省する。

 まあ、初めての経験なんだし、次はそうしようという反省をして気持ちを切り替えた。


 あとは、この肉を焼くだけだ。

 調理スキルはほかにも煮たり蒸したりと、焼く以外の方法も教えてくれる。

 が、どうもこの魔ネズミの肉はどういう調理法を用いたところで味はそんなに変わらなさそうだ。

 弱火でじっくりと火を通せば肉質が柔らかい状態で食べられるくらいだろうか。

 まあ、お腹さえ膨れればそれで十分なので今回は焼く工程を行うことにした。


 で、この肉を焼くなら本来ならばここではできない。

 孤児院に持って帰るか、厨房が借りられる宿に行くか、共同の調理場に行く必要がある。

 つまり、街中で火を使える場所まで行かなければならない。

 が、どうやら、今の俺にはその必要がないらしい。

 それもこれも、スキルの恩恵だ。


 調理というスキルは食材の鑑定を行うことができる。

 その食材が食用可能かどうかを判定してくれて、毒性もチェックできる。

 さらに、暴食スキルを持っているからなのか、同じく食材鑑定を行った時にその食材を食べたときにステータスへの影響も知ることができた。


 そして、それ以外に調理法もいろいろとわかる。

 その食材に適した調理法はどんなものがあるかを知ることができる。

 初めて手にする食材でもこのスキルのおかげで少なくとも失敗せずに食べられるのではないだろうか。


 だが、それ以外にも調理スキルには非常に有用な能力がある。

 それは魔力を使って調理できることだった。

 むしろこっちのほうがメインなんじゃないだろうか。

 つまりは、魔ネズミの肉を魔力を使って焼くことができる、というわけだ。

 このおかげで、わざわざ厨房を探して移動する必要はなくなった。


 なお、今の俺の魔力はゼロだ。

 クリーンを使うのに魔力を消費してすっからかんになってしまったからだ。

 だけど、この場で肉を焼くことができる。

 それは、スライムの核を取ってきたことで、俺の手元には小さな魔石があるからだ。


 売るつもりで持ち帰ったこの魔石だが、どうやら内包している魔力を使えば、俺の魔力の代わりになるらしい。

 地下水道の明かりもこの魔石が用いられているって話だったし、それと似たようなことなんだろうな。

 魔ネズミの肉なら四匹分でも魔石一つあれば全部調理できる。

 もしかしたら、たとえ激安でも魔石を売ってお金にしたほうがよいのかもしれないが、それは気にしないことにしよう。

 金にすればパンが何日分かは買える。

 けど――今日は、自分の力を試したかった。

 何ごとも経験だ。

 俺は早速調理スキルを使って肉を焼くことにした。


 近くに生えていた木の枝を肉に刺して肉串とし、そこに魔石を握った手を近づけてスキルを発動する。

 なるべくならおいしく食べられるようにじっくりと弱火で焼いて、柔らかい肉串となるようにイメージする。

 すると、あっという間に肉に火が通っていた。

 魔石が淡く光り、肉の表面にじわりと熱が走る。

 次の瞬間、じゅう、と音がして――もう焼けていた。


 ……スキルって、本当にすごいな。

 これなら料理するのもあっという間だ。

 そんな感慨も頭の中から一瞬で消え、俺はすぐに目の前の肉串に齧り付いた。


 うまい。

 ……うまい。

 こんなに温かい肉を、腹いっぱい食べたのはいつ以来だろう。

 味付けは一切していない野性味あふれる魔ネズミの肉は、わずかに血の味が残っているものの、噛みしめるほどに肉汁がジワリと口の中に広がるものとなっていた。

 塩やコショウがあれば絶品の一品となっていたかもしれない。

 が、それでも孤児ゆえに腐ったものでも食べることがあったことを考えると、これまで食べてきたものの中でも、かなり上位に入る味だった。

 俺はあっという間に手に入れた肉をすべて食いつくしてしまったのだった。

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