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暴食の少年~最弱ステータスで追放された少年は、暴食スキルで成り上がる~  作者: カンチェラーラ


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魔ネズミ戦

 魔ネズミを見つけると、右手の錆びた短剣を静かに構えた。

 先に相手を見つけられるかどうかが勝負を分ける。

 できればこちらが先攻したい。

 が、今回のように魔ネズミのような小型の相手が石の影などに隠れている場合にはそれができない。

 この錆びた短剣は石や壁に当てれば、下手をすると折れてしまう。


 武器は高い。

 買おうと思うと孤児の俺ではとてもお金を払えない。

 この錆びた短剣ですら、大事に大事に使っている。

 だからこそ、武器に負担をかけない戦い方をしなければならない。

 硬いものにぶつけるリスクは避ける。


 一匹でいた魔ネズミがこちらに気づき、敵意を向けてきた。

 こいつは強いやつを見るとすぐに姿を消そうと隠れるのだけど、勝てる相手だと判断すると襲ってくる。

 ちなみに、俺は一度も魔ネズミから逃げられたことがない。

 冒険者見習いとしてこの地下水道に来ていた奴らの中には、「魔ネズミが寄ってこない」と愚痴る者もいたのに。

 魔ネズミにとっても俺は最弱の相手に見えるんだろう。


 だが、それでもいい。

 俺の腹がさっきからずっと悲鳴を上げているのだ。

 空腹耐性スキルを得たといっても暴食スキルのせいでずっとお腹が空いている。

 今の俺にはこいつは格上の敵ではなく、ただの肉だ。


 そんな肉、もとい魔ネズミが俺に向かって走り寄ってきた。

 チチチ、と鳴き声を鳴らしながら薄明かりの照明しかない地下水道の歩道の上を右に左にと駆けてくる。

 見習いの頃は、この動きに何度も翻弄された。

 小さな体だが噛みつかれるとまずいのに、ちょろちょろ走り回って動くのを追いきれないこともあった。

 けれど、今は違う。


 右へ、左へと軌道を変える魔ネズミを目で追う。

 進行方向を変えるときにはどうしても地面に力を入れて踏ん張る必要がある。

 それは人間でも魔ネズミでも同じだ。

 魔ネズミが右に行こうとすれば左の前足の付け根や後ろ足のももの筋肉がわずかに膨らむ。

 もともと、目は悪くないから、相手の筋肉の動きを見極めて移動先を予測するようにしていたのだ。


 これは、スキルを得る前から俺が積み重ねてきた経験だ。

 そう思っていた。

 だがそれとは別の感覚があった。

 今までの経験からの予測以上にはっきりと魔ネズミの動きがわかる。

 ……もしかして、察知スキルが関係している?


 てっきり、さっき手に入れた察知というスキルは相手がいる場所を発見する気配察知みたいなものだとばかり思っていた。

 もちろん、察知にはその力もあると思う。

 けど、相手の筋肉の動きを察知する、みたいなことにも使えるのかもしれない。

 要するに、スキルを得たおかげで俺は今まで以上に魔ネズミの動きがよくわかるようになっていた。


 近づいてきた魔ネズミがジグザグに動きながらも最終的には俺に噛みつこうと直線的な動きでこちらへと飛び掛かる。

 それを俺は事前に察知して迎撃した。

 首筋へ錆びた短剣を叩き込む。

 切れ味なんてものは期待できないこのなまくらだが、それでも十分に効果があった。


 魔ネズミは壁へ叩きつけられた。

 そして、ぴくぴくと体を痙攣させながら次第に動かなくなった。

 ……いつもより、明らかに楽だ。

 思いもしなかった快勝に俺は笑顔を浮かべながら、魔ネズミの体を回収したのだった。

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