鍛冶スキル
錆びた短剣やナイフを、新品同様に研ぎ直したい。
ジャガ婆の店では錆びた短剣は安く買い取られてしまうが、もしこれがもっと状態が良ければ値段は上がると聞いたときに思ったことだ。
地下水道は薄暗いせいか、落とし物が多い。
落とし物を探すには不向きな場所だ。
けれど、俺には察知スキルがあった。
気配を察知するというスキルのはずなのに、なぜか隠れた物品を見つける能力もあったのだ。
だが、察知スキルで見つかるものの多くは、きっとがらくただ。
それは、俺が探索している場所が地下水道だからだ。
お金になりそうな金属製品も、水気の多い場所では錆びてしまう。
いくら察知でアイテムを見つけても、単価が安ければ意味がない。
持ち帰る手間のわりに、稼ぎが少なくなる。
だからこそ、見つけたアイテムを少しでも高く売れるように錆びた短剣などを研ぎたいと思ったのだ。
【SKL:鍛冶(SPを10消費して獲得可能。金属の鑑定や鍛錬・製造の知識・技術の獲得)】
やったぜ。
このスキルは取ろう。
鍛冶。
その二文字を見た瞬間、迷いはなかった。
俺は迷わずSPを消費した。
研ぎの技術やスキルが欲しいと思っていたけど、こっちのほうがいいだろう。
調理スキルの食材鑑定も便利だったし、金属鑑定も役に立ってくれるはずだ。
鍛冶スキルを取ると決めたら、ステータスに変化が現れた。
俺のスキルに新たに鍛冶が追加され、同時に、手にしていた錆びた短剣の整備方法が頭に流れ込んできた。
これを新品同様によみがえらせるには、いくつかの工程が必要らしい。
錆を落とすための薬液に浸したり、荒さの違う複数の砥石で研いだりする必要があるようだ。
だが、理解したのは技法だけではない。
スキルの力そのものもわかった。
本来であれば職人が各種道具を用いて行う工程を、MPを消費して行うこともできるらしい。
調理スキルの時と同じだ。
焼く・煮る・茹でるなどの調理をMPを消費することで行うことができた。
鍛冶スキルなら、MPさえあれば刃物も研げるらしい。
つまり――道具がいらない。
火も道具もないのに昨日は魔ネズミの肉を焼いて食べることができた。
それと同じように、鍛冶スキルでは砥石が手元になくても研げるらしい。
不思議だ。
が、スキルというのはそんなものなのだろう。
クリーンだって道具もなしにいろんなものをきれいにしてくれるんだしな。
「じゃあ、最初はこいつからだな。きれいになってくれよ」
スキルの使い方を理解したら、あとは実践あるのみだ。
俺は手にしている錆びた短剣を鍛冶スキルで研ぐことにした。
こいつも地下水道で見つけて利用していたもので、全体的に錆びもあるし、欠けている部分もある。
それらが一瞬で変化した。
俺の手から魔力が伝わるような感覚があった後、短剣が淡く光り、次の瞬間にはきれいな状態へと変わっていた。
短剣の刃は、どう見ても新品にしか見えない。
だが、柄だけは朽ちかけた木のままなので、違和感があるな。
刃物だけが異常にきれいってのは変だ。
けれど、実用する分にはなにも問題はないと思う。
この短剣は売らずにおこう。
ジャガ婆のところでそれなりの値段で買い取ってくれるはずだけど、魔ネズミの解体をするときに便利だから俺が自分で使おう。
さすがに小剣で解体はやりにくいしな。
なので、売るためのものとして、ほかの錆びたナイフ二本を鍛冶スキルで研ぐことにした。
こちらのナイフも全体が錆びついていて、多分これで魔ネズミを攻撃してもぽっきりと折れてしまうだろう。
が、そんなナイフも研ぐことで生まれ変わった。
光を反射する、鋭く研ぎ澄まされたナイフが二本。
ジャガ婆がこれを見たら、いくら出すだろうか。
そう思うほどのすごいナイフが、俺の手の中に残った。
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