MPと拾い物
「あー、死ぬかと思った……」
スライムの一気飲み。
前代未聞の悪食を披露した俺は死にかけていた。
スライムの毒性からではない。
クリーンをかけたスライムは、きれいな空色へと変わり、毒性も消え去っていた。
本来のスライムには毒がないということなのだろう。
それでも俺が死にそうになっているのは、一気飲みをした、ということが原因だ。
スライムは飲めないわけではなかった。
だが、そのどろどろとした体は、一気には飲み切れなかった。
のどの途中で引っかかって、ゴホゴホとむせてしまったのだ。
のどの奥にぬるりとした塊が詰まる。
呼吸が止まり、視界が白くなった。
しかし、ここで吐き出すことはできない。
今俺がいるのは汚れ極まる地下水道なのだ。
クリーンできれいにしたとはいえ、ここで歩道の床に吐き出してしまっては、また汚れてしまう。
もう俺のMPは無いのだから、絶対に吐かない。
そう固く決意した俺は、むせながらも耐えて飲み込むことにしたのだ。
その結果、息が止まって死にそうになっているというわけだ。
が、それでも俺はやりきった。
水筒に入れて飲んだスライムを、吐き出さずに体の中に収めることに成功した。
自分で自分を褒めてやりたい。
自分の頑張りをそう評価しながら、ステータスを確認する。
「……MPの増加は1なのか。まあ、スライム一匹で上がったと考えれば妥当なのかな? 魔ネズミのときは、肉を複数食べてようやく1増加だったわけだし」
ステータスの確認をした俺は、なんとも言えない微妙な気持ちになってしまった。
スライムを食べたことで確かに数値が変化していた。
MPはこれまで最大値が3だったのが4になっている。
3から4へ。
たった1。
だが、確実な前進だ。
大きな一歩だ。
増加という表記だったから、もっと上がるのかと期待していたので、残念な気持ちもあるけど。
まあ、いいか。
確かに期待以上ではなかったものの、確かな効果はあったのだ。
MPが上がるという効果に偽りはない。
この地下水道にはスライムは無数にいる。
これからもっとスライムを見つけて食べていけばいいだけだ。
それに魔ネズミも倒して食べればさらに素早く動けるようになる。
そう気持ちを切り替えて、俺は再び地下水道の探索を開始したのだった。
「お? なんか反応があるな」
その後もスライムや魔ネズミを倒しながら、地下水道を進んでいく。
そして、この汚れた世界で歩き続けていたところで、察知スキルに反応があった。
地下水道の歩道の端だ。
石やがれきが積み重なった場所で、いかにも魔ネズミや虫が潜んでいそうな雰囲気だ。
察知スキルには生き物の気配はしていない。
なのに、そこが無性に気になる。
何かあるかもしれない。
小剣を見つけたときのような感覚を信じて、それを確認することにした。
といっても、すぐにそこに駆け寄ってがれきをどかすことはしない。
万が一、何かいてもいいように離れた位置から小さな石を投げつけて反応を確認する。
「……なにもいないみたいだな。よっし、それじゃお宝が見つかることを期待しようかな」
一人での地下水道探索だが、ずっと暗い空間で活動しているためにそう独り言をつぶやいてからがれきに近づいていく。
積み重なった石などを近くに移動させていく。
すると、そこにはなにやら金属らしきものが見えた。
今度も剣だったりしないだろうか。
心臓が少しだけ早くなる。
こういうときの予感は、案外当たる。
そう思ったが、がれきの山の下は剣が埋まるほどの空間はなかったようだ。
金属のなにかは比較的小さなものだった。
拾い上げてパンパンと叩いてついている土や泥を払い落とす。
「これは、指輪か」
宝石などはついていないシンプルな指輪。
だれがこんなものをここに置いたんだろうか?
人間が隠すにしてもこんな場所を選択しないだろうと思う。
ってことは、もしかすると魔ネズミだろうか?
地下水道に来た人が指輪を落として、その指輪を魔ネズミが見つけてここに隠した、とかそういうことかもしれない。
その推測が当たっているかはわからないが、今から考えると積み重なったがれきの隙間ならば魔ネズミが潜り込むこともできたと思う。
なんにせよ、いい土産ができたな。
この指輪がいくらで売れるようなものかはわからないが、やはり地下水道には落とし物が存在する。
そして、それを察知スキルのおかげで見つけることができた。
照明の魔道具が地下水道の壁には取り付けられているとはいえ、基本的には最低限の数しかなく薄暗いから、こういう物があるかもしれないと期待していたが正解だったようだ。
MPも上がった。
拾い物もあった。
今日の俺は、なかなか悪くない。
これなら金策のほうも多少は期待できるだろう。
ほくほく顔になった俺は、再び地下水道内の探索を再開したのだった。
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