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暴食の少年~最弱ステータスで追放された少年は、暴食スキルで成り上がる~  作者: カンチェラーラ


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毒抜き

 地下水道に存在するスライムはここにある汚水をきれいにしてくれるモンスターだ。

 都市から排出された汚水は地下水道へ集められ、やがて川へ流れていく。

 その途中でスライムが汚れを浄化することで、川の水の汚染が防がれている。

 また、増えたスライムを倒して魔石を得ることで、照明用の魔道具にも利用している。

 スライムは街にとって便利な存在として扱われている。


 だが、それを食べようなどとは一度も考えたこともなかった。

 スライムは汚れた場所に集まり、それを取り込む。

 その半液体の体内には、当然ながら不純物が溜まっている。

 つまりスライムは、この都市の汚れを凝縮した塊のような存在だ。

 そんなものを食べようと考える奴なんて、普通はいないだろう。


 が、調理スキルは食べられると判定した。

 もっとも、無害ではない。

 むしろ高い毒性を持つ。

 魔ネズミの肉も毒性があるとはいえ、食べればお腹を下すというものだった。

 それに対してスライムは食べると一日以内に死に至る致死性を持つ毒性があるらしい。


 致死性の毒があるのに“食用可能”判定とは、どういう理屈だろう?

 そんなことがあり得るのだろうか?

 スキルを手に入れたのが昨日だから、いまいち信用しきれない。

 それでも、食べたときの効能を知ってしまえば無視はできない。


 魔ネズミの肉は食べると暴食スキルの効果でAGIが微増する。

 それに対してスライムは食べると暴食スキルの効果でMPが増加するらしい。

 “微増”ではなく“増加”。

 ならば、上昇値もそれなりに期待できるはずだ。


 欲しい。

 MPはできればもっと上げたい。

 クリーンを一度使うだけで俺の全MPである3を消費してしまう。

 調理スキルでの食材鑑定はMPを消費しないのだけれど、加熱するなどの調理過程ではMPを使う。

 攻撃魔法を持っていないけれど、MPは上げられるならば上げたい。


 というわけで、スライムが食べられないかを俺は試すことにした。

 少しでもステータスを上げられる可能性があるならばやらない手はない。

 けれど、致死性の毒を健康スキルで防ぐことは難しそうだ。

 健康スキルは健康値の強化と減少緩和ができるだけで、毒無効というわけではないしな。


 となると、毒抜きができないだろうか?

 例えば、スライム自体が毒なのではなく、取り込んだ汚れが毒性を高めているのではないか。

 少しでも毒を抜ければ、健康スキルでどうにか抑え込めるかもしれない。


「えいやっ」


 そう考えた俺は汚水の中にいたスライムを攻撃した。

 ゲル状の体内にある核を小剣で貫く。

 崩れた体を蹴り上げ、歩道へと転がした。

 腰の木製水筒の中身を捨て、そこへスライムを掬い入れる。


「クリーン」


 失敗したらこの水筒は二度と使えないな。

 そう思いながら、水筒内に入れたスライムにクリーンの魔法をかけた。

 すると、汚れを落とす生活魔法のクリーンを受けたスライムの体は魔法の効果を受けて劇的に洗浄された。

 黒い濁りが、すっと消えていく。

 水筒の中で、スライムが透き通った色へと変わった。


「……スライムの体ってこんなきれいな空色をしていたんだな」


 汚れきって黒いヘドロのようなスライムばかり見ていたが、クリーンをかけたスライムは薄い青色の体になっていた。

 それを再び食材鑑定する。


「やったぜ。これは毒性なし。しかも、MP増加の効果はある。これは勝ったな」


 思い切ってMPを使った甲斐があった。

 なんとスライムの毒性は完全になくなったのだ。

 ならば食うしかない。

 俺はクリーンできれいになったスライムを、一気に流し込む。

 ひやりとした感触が喉を滑る。

 ……味は、ない。

 だが――体の奥に、確かに熱を感じたのだった。

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