ギリアムさまはイレギュラーすぎます
俺はミューゼア嬢に相談を持ち掛けた。
「あなたのその『予知知識』を、もっと活用はできないものでしょうか」
「と、仰られますと?」
「たとえば、俺たちはこれから町を発展させるために、まず流通の弁を確保しないとなりません」
現在ライゼルでは四ヶ月に一回、他の町からも冒険者を募って大規模な魔物狩りを実施している。
領内に魔物が多くて、ライゼルの町に商人が立ち寄ってくれないので、少しでもと思い俺の代になって始めた対策だ。
「しかしこれは、費用対効果の効率がすこぶる悪いのです」
「なるほど」
「ミューゼア嬢の知識では、これをどうにかしていける未来などは知り得ていないのでしょうか?」
俺はダメもとで聞いてみた。
ここの効率を上げられたら、それだけでもウチの経済は良い方向へと向かうだろう。
「良い提案、ありますよ」
「やはり無理ですか。――って、えええ!?」
あるんですか、良い案が!?
聞いてみるものだな!
「魔物が増えるのは、大黒魔石が土地のどこかにあるからです。これを処理できれば、魔物が寄ってくるというモトを絶てます」
「へ? 大……黒魔石?」
初耳だ。セバスも首を振った。彼でも知らないなんて。
「ミューゼアさま、それはどちら由来の知識でございましょう。魔物の発生には諸説ありますが、その話は初耳にございます」
「ゲームの最終章で……あ、いえその」
「……先ほどの、未来予知の話の一環なのでしょうか」
「はい」
ミューゼア嬢は、少し困り顔ながらも頷いた。
セバスが俺の方を見た。どうなさいますか、と目で問いかけてくる。ふむ。
「俺はさっきミューゼア嬢を信じます、と言った。だからここも、彼女を信じる」
信じるといったからには、その責任も負わないと。
言葉は行動が伴って初めて真実となるものだ、俺はミューゼア嬢に対して真摯でありたい。
それになにより、俺から訊ねたことだしね。
「で、ミューゼア嬢、その黒魔石というのは?」
「魔物を呼びよせる効果のある魔石です。この土地に魔物が多いのはそれが原因です」
言い切った。
つまり彼女には、確証があるということか。
「なるほど。それを見つけ出して壊す方が、今の魔物狩りを続けるよりも効率良いと」
「はいギリアムさま。……ですが」
彼女は顔を曇らせた。
「ですがそれを行うには、魔族に伝わる宝具が必要なのです」
「ああ、魔族?」
「はい魔族です。……宝具は彼らが大事にしているもの。戦って奪うか交渉するか、どちらも難しい。失敗すれば魔族エンドの可能性も出てくる恐ろしい相手――」
「セバス、魔族王に連絡して」
「かしこまりました」
「え?」
キョトンとした顔で、俺とセバスのやり取りを見るミューゼア嬢。
「こないだの火炎竜のモモ肉は美味しかったって礼も忘れずに。返礼も考えてといて」
「そうですな、なにか見繕いましょう」
「え?」
彼女の顔が、なんだか困惑に染まっていく。
「ギ、ギリアムさま。いったいなんのお話を?」
「ん? いやほら、ミューゼア嬢が魔族から宝具を借りろっていうからさ」
魔族とは懇意にしている。
というか魔族王のガリアードレが、一方的に俺のことを持ち上げて付きまとってきてる、というのが正解に近い。なにが気に入ったのか、あいつは俺を褒め始めると止まらないのだ。
「ガ、ガリアードレ!? あの最狂最悪の、大魔族!」
「え、そんな悪い奴じゃないぞ? あ、でも少し悪いか、頭が」
「なにを言ってるんですか。原作だと、ガリアードレは超高難易度ルートの隠しボス。そんな簡単に名を呼べる存在ですらないはずなのに」
急にアタフタし始めるミューゼア嬢だ。
両手の平を前に出してフリフリ振ってる姿はなんだかカワイらしい。俺が女性苦手じゃなかったら、ああいう仕草にイチコロなのだろうか。
「……では、ギリアムさまは魔族と親交がおありになる、と?」
「ええ。セルベール家にご支援頂いたあの戦争以来ですから、十年来の付き合いになりますか」
目を丸くするミューゼア嬢。
「ガリアードレが……貸してくれる? 隠しボスのアイテムを、そんな簡単に……?」
なんだろう、こんどは頭を抱えだした。――と思ったら。
「ギリアムさまはイレギュラーすぎます! どうしてこうも、私のゲーム知識を上回っていくのですか!?」
怒られてしまった。
話の方向性がだいたい出揃ったと思います。
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