表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/28

ミューゼア嬢の秘密


「なぜあなたは、そんなに色々なことを知っているのですか?」


 俺の問いに、ミューゼア嬢は真剣な表情で答えた。


「予知夢……のようなもの、と言えばわかりやすいでしょうか。ゲーム転生なんて言っても、ギリアムさまにはピンとこないでしょうし」

「予知夢? ゲーム転生? いや、さっぱりわかりません」


 俺は首を振ったが、彼女の目は本気だ。

 昔、俺の目の前で大地震を言い当てたあのときと同じ、妙に確信に満ちた目。普通なら笑いものだが、彼女の言葉には妙な重みがある。


「この先、世界がどうなるか。いくつかの『ルート』――『未来』を見たんです。信じてもらえますか?」

「未来? それは俺たちの、ってことですか?」

「はい。その中には、ライゼル領が破滅する未来も……私自身の破滅も」


 彼女の声が少し震えた。

 破滅。重い言葉だ。だが、幼い頃に彼女が言っていた俺の「破滅エンド」も、俺が昔のままなら確かに辿り着いたかもしれない道だった。

 あのまま俺が民を顧みず、魔族に負け、荒れた領地で腐っていたら……。


「にわかには信じがたい話です」


 俺はゆっくり言った。彼女の顔が一瞬曇る。だが、俺は続けた。


「ですがミューゼア嬢、昔のあなたの言葉――あの予言がなかったら、俺は今みたいな領主にはなれていませんでした。あのときのあなたは、俺しか知らないだろうことをズバリ言い当てた上で、俺がダメになる未来を教えてくださった。だから信じますよ、あなたの言葉を」

「ギリアムさま……」


 ミューゼア嬢の目が潤んだ。

 ふう、と彼女は小さく息を吐き、肩の力を抜いた。俺もつられて笑う。なんだか、ようやく腹を割って話せた気がした。


「この話をしたのは、ギリアムさまが初めてです」

「へえ? それは光栄な。でも、なんでですかね」

「あなたも仰ってましたでしょうギリアムさま。なかなか信じて貰えるような話じゃありませんから」


 それはそうだな。

 突然こんなこと言われても、頭がおかしいと思うだけだろう。

 俺だって過去のことがなかったら、信じてなかったに違いない。


「ギリアムさまなら信じてくださるんじゃないかと思い、勇気を出して告白しました」

「それは嬉しい。で、お聞きしたいのですが、この先俺たちの前には、どんな破滅エンドの可能性が待っているのですか?」


 となると、これも聞いておきたいよな。


「今の流れで、一番近い破滅エンドは『中央に謀反の嫌疑を掛けられて首を刎ねられるエンド』だと思います」


 ミューゼア嬢を疎ましく思ったセルベール公爵家が、全てを清算するために俺ごと処分しようとするのだという。


「ああ! だから公爵家を潰しましょうなんて言ってたのか!」

「はい」


 つまり、やっぱり本気だったのかあれ。ミューゼア嬢怖い。


「だけど、ウチには公爵家と争えるような力はないよ?」

「そうですね。幸せそうな領地だとは思いましたが、規模として見たらまだまだなのは、見ててわかりました」

「とはいえ我がライゼル領は、まだまだ伸びしろのある土地だと思う。あれじゃないかなミューゼア嬢、ウチが強い都市になって、あちらさんが気軽に手を出せなくするってのも、良い防衛策になるんじゃないか?」


 俺は彼女に、この先ライゼル領を開拓していく未来のビジョンを伝えた。


 まずは周辺の魔物を狩って街道の脅威を取り除き、流通の弁を整える。

 パパラ米はウチの主力特産品になるだろう、これを大量に輸出できる環境を整える。

 得た金でどんどん領地を開拓して、広くしていく。


 なにせ辺境だ、開拓できればできるほど、領地を広げられると思っていい。

 町が成長すればするほど、いくら公爵家といえど俺たちに手を出しづらくなるはずだよな。


「なるほど! ……その発想はありませんでした!」

「だろう?」

「確かに私が知っていた未来では、ライゼル領は貧困の底にある土地でした。なので簡単に中央からの処断を受けてしまった、というのはあると思います」

「よかった、同意を得られたみたいだ」


 なら話は早い。


「で、物は相談なのですがミューゼア嬢」

「はい?」

「あなたのその『予知知識』を、もっと活用はできないものでしょうか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ