街を開拓していくために
「魔族と人間は不倶戴天の敵、裏ルートで世界を滅ぼすのは魔族なんですよ!? そんな簡単に仲良くなれるはずないのに!」
語気荒く俺に訴えるミューゼア嬢。
なぜか彼女は涙目だ。どうしたんだろう、俺は前に出した両手を軽く振って苦笑いで返した。
「ちょ、ちょっと待ってください。そんな大層な話じゃありませんて」
「大層な話です! 人類の前に立ちはだかるはずの魔族王ですよ? ガリアードレですよ? それがなんで、ギリアムさまと仲良くなってるんですか」
んー。
「あいつとの一騎打ちで勝ったら、なんだかショボンとしちゃって」
そのショボくれかたが半端なくて、なんだか可哀そうになった俺は言ったんだっけ。
「おまえも強かったぞガリアードレ、って」
そしたら懐かれた。
まー実際すごい強かった、ガキ時代の俺よりホンの少し、本来はアイツがの上だったと思う。
思えば、勝てたのはミューゼア嬢のお陰だったかもな。
彼女の予言で魔族に負けたときのことを聞いてたから、「負けてたまるか」という気迫が内から湧いて出たのだから。
あー久々に腕試ししたいかも。こんど会いにいくか。
「戻りましたギリアムさま。大黒魔石を処理する宝具には心当たりがあるそうです、お貸しくださると」
「よし」
「それとガリアードレさまからの伝言です『今度顔を見に行くのじゃ』とのことでした」
お、あっちから来るってか。
丁度いい、また強くなった俺を見せてやれるな。
「魔族の宝具に関しては準備できましたミューゼア嬢、これでよろしいですかね?」
「え? あ? なんでもう返事を頂いてこれたのです!?」
ウチの町とガリアードレの国には、『鏡』を使った相互通信端末が置かれている。
魔族の宝具らしいが、俺の顔を見たくて仕方ないガリアードレが勝手に設置していったのだ。
「通信装置……!? この世界の技術力だと、都にすらそんなものまだ存在しないのに」
「ちょっとだけ便利だよ?」
「ギリアムさまの原作ブレイカーっぷりには、もう言葉がありません」
なんだか呆れ顔のミューゼア嬢だ。
そんな特別なことをしたわけでもないんだけどな。
「それにしても、ミューゼア嬢は本当に色々なことを知ってらっしゃる」
「ギリアムさまが関わっていると、計算外のことばかり起こって困惑してしまいますけどね」
「なんだか申し訳ない」
「いえ構いません。そういう方なのだな、と理解しました」
呆れ顔のままに苦笑をされてしまった。
だが彼女の顔は、この地に一人残されて馬車が去ったあの時と、比べ物にならないくらい明るくなっている。
よしよし。それなら万事オッケーだ。
大黒魔石を壊せば、魔物が減って商人が立ち寄りやすい町になる。
そして町が発展すれば中央から難癖付けられづらくなり、破滅エンドとやらも遠くできる。
わかりやすい話で良いじゃないか。
なんだかウキウキしてきた。
「そうなったら毎月祭りを催したいな。大市を開くんだ、旅商人が余所からやってくるような」
「当面は税を安くして人を呼び込むのがいいかもしれませんね」
「いいですねミューゼア嬢、それですね」
「そうなると、街道の整備もしなくてはなりませぬな」
「確かに。セバスの言う通りだ」
予定がいくらでも立ってくる。いいことだ。
この領の未来が楽しみで仕方ない。
「うふふ、もう事が成ったとばかりに嬉しそうですね」
「領民も喜んでくれるに違いないよなぁ。ありがとうミューゼア嬢、あなたはこの町に可能性をもたらしてくれました」
思わずミューゼア嬢の手を握ってしまう。
彼女は顔を真っ赤にし、俺は顔を真っ青にした。
対女性コミュ障、ここに極まれり。ヤバい、俺めっちゃ失礼だった。
俺たちはテーブル越しに距離を取り直し、ゴホンと同時に咳払いをする。
「えっとそれじゃ……、あとはどうやって黒魔石を探すか、ですね」
「は、はい。そうですね、それについてお話が」
「なんでしょうか」
彼女が言うには、魔石の近くには当然ながらより多くの魔物が集まってくるという。
なるほど我が領には一つ、そういった場所がある。
「魔物の森が怪しい……と仰られるわけですね、ミューゼア嬢は」
「ええ」
「わかりました。さっそくそこから調べてみることにしましょう」
もう数日は1日2話更新、その後は1話更新に落ち着く予定です。
7時10.分と12時10.分での更新を予定しています。




