UR商人
ユーノスさんの声が街中に響き渡り、俺は笑いながら売り物の整理を手伝う。
彼は客一人一人から丁寧に要望を聞いて回り、なにを取ってくれませんか、と俺に指示を出す。その姿は誠実そのもの、笑顔も真剣だ。
その真剣さが客にも伝わっているのか、あれをくれ、これはあるか? と尋ねる皆の声にも熱が篭もっていた。嬉しそうに楽しそうに、領民たちは売り物を物色する。
なんだか胸が熱くなってきた。街道作りを手掛けて良かったな、という気持ちが湧いてくる。ああそうだ、こういうのがいいんだよ。皆が幸せそうに笑ってる豊かな町。これまでも俺たちは笑ってやってきたけど、この輪をもっともっと広げていきたいんだ。
「ユーノスさん……いや、ユーノス。来てくれてありがとうな、おまえが新生ライゼルに訪れた最初の旅商人でよかった」
「光栄ですギリアムさま。ちょっと寄り道したつもりだけだったはずの場所がこんな素晴らしい町だなんて、俺も嬉しい限りです」
俺たちは目を合わせて、ニッと笑いあった。
「ギリアム、でいい。俺はおまえと仲良くしたい」
「はは、ありがとう。じゃあ早速仲良しとしての注文だ、――手が止まってるぞギリアム、商売のときはお客さまを第一に!」
おっと。咎められて周りを見渡すと、商品を待つ領民が渋滞してしまっていた。
「焼けるねぇ、男同士の友情かい? おばちゃんには目の毒さね」
ドッと笑い出す皆。
俺は軽く頭を掻いて、忙しく手を動かし始める。ユーノスがパン! と手を打ってまた声を出した。
「よしわかった、友情セールだ! 俺とギリアム、そして皆さんとの出会いに感謝の値下げ! その代わりに買った人らは町を回って吹聴してくれ、今ならお得な商人がここに居る、と!」
「お、おい。いいのかそんなに値引いて?」
「ギリアムが心配することじゃない。ここは損して得取れ、さ」
片目を瞑って笑うユーノスに、領民たちは大盛り上がり。
やっぱりこいつ、ただの商人じゃない。俺は苦笑した。
◇◆◇◆
その晩の話だ。
屋敷にユーノスを招待して、ミューゼア嬢と一緒の食事の席で。
「え、ユーノス!? もしかして、ユーノス・ベルクラウスさんですか!?」
ミューゼア嬢が彼の名を聞いて驚いていた。
ん? 有名人なのか? 俺が小声で訊ねると。
(URクラスの商人キャラですよ! 捕まえられると旅商人から大店にクラスアップして、その後のゲーム展開がだいぶ助けられる超有能な在野の商人!)
(ほほー)
とまあ小声でやり取り。……なんだURクラスって?
相変わらず彼女の言葉には不可解なものが多い。
「はい、そうです。自分はユーノス・ベルクラウス……って、あれ? 俺、ベルクラウスを名乗りましたっけ?」
「ユ、ユーノスさんは都だと有名でしたから! ベルクラウス商会の跡取り、今は旅商人として研鑽を積んでいる」
「研鑽、というほどのものではありませんが」
ははは、と頭を掻くユーノスだ。
テレてというよりも、困ってるように見える。
それにしても、ほうほう、やはりユーノスは只者じゃなかったか。
「なんだユーノス、そんな有名な商人だったんだな」
「黙ってて悪かったねギリアム。ベルクラウス商会の顔で評価されたくなかったから」
「気にするなって。お陰で今日一日で、おまえとはだいぶ仲良くなれた気がする」
商売の手伝いは夕方遅くまで続いた。
途中からはウチの町の商会主であるレグノアもやってきて、あっちも突如大バザーを初めてしまう始末。
忙しかった。そして楽しかった。
その結果として、ユーノスとはこれくらいの口調で話せるくらいには、気心が知れたと思ってる。
「そう言って貰えると嬉しいよ」
俺たちが笑っていると、ミューゼア嬢が頃合いを見計らったようにユーノスに訊ねた。
「で、ユーノスさま。いま貴方はお悩みのことがあるのではないですか? 大旦那さまのことで」
ユーノスは、ビックリ、というより唖然とした顔を見せたあと。
「……そこまでお知りでしたか。さすがセルベール家のご令嬢」
肯定の苦笑をしたのだった。




