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第96話 朝の騒動

 王城、アウルの私室。




 朝。




 窓から差し込む陽光が部屋を照らしていた。




「おいっ、起きろノア」




 アウルがノアを軽く揺する。




「……ん」




 ノアが小さく反応する。




「起きろって」




「ん〜」




 寝返りを打つ。




「えぇ……」




 アウルは思わず引いた。




 何度か呼びかけてみる。




 だが。




 起きない。




「……ソフィア呼ぶか」




 ---




 しばらくして。




 ソフィアとアリスがやって来た。




「なぁ?」




 アウルが困った顔をする。




「こいつ起きねぇぞ?」




 ソフィアはベッドへ視線を向けた。




 そして隣のアリスを見る。




「アリス」




「はいっ」




 アリスは小さく頷いた。




 ベッドの傍へ歩み寄る。




 そして優しく声を掛けた。




「ノア様?」




「そろそろ起きましょうね?」




「ん〜?」




 ノアがゆっくり目を開く。




「アリス?」




 アリスが微笑んだ。




「おはようございます」




「おはよう」




 ノアも微笑み返す。




 その様子を見ていたアウルが目を見開いた。




「マジかよ!?」




 アリスは少しだけ得意げに微笑んだ。




 ソフィアは平然と言う。




「自分で起きる日もある」




「いや何のフォローだよっ」




 アウルが即座に突っ込んだ。




 ---




「ふわぁ〜」




 ノアが欠伸をする。




「あれ?」




「みんな何で居るの?」




「お前が起きねぇからだよっ」




「あぁ……ごめん」




 ノアが素直に謝った。




「俺が何度呼びかけても起きねぇからよ?」




「ちょいビビったわ」




「ごめんね?アウル」




「いや」




 アウルは腕を組む。




「お前アリスが呼んだらすぐ起きたけどよ?」




「どうなってんだ?」




 アリスが微笑む。




「ノア様を起こすにはコツがありますから」




「コツねぇ」




 アウルは納得したような、していないような顔をした。




「とりあえずノア」




 ソフィアが言う。




「支度だ」




「分かった」




 ---




 支度を終えたノアが戻って来る。




「ごめん、待たせた」




「いや時間は大丈夫だ」




 アウルが笑う。




「面白かったしな」




「うっ……」




 ノアの頬が少し赤くなる。




 その時。




 ソフィアが静かに口を開いた。




「ノア」




「なに?」




「明日はちゃんと起きるのだぞ?」




「……分かった」




「母親かよっ」




 アウルが笑う。




 アリスも楽しそうに微笑んでいた。




「よしっ」




 アウルが立ち上がる。




「じゃあ飯だなっ」




 ---




 王城、迎賓区画。




 貴賓室。




「お帰りなさいませ」




 クラリスが一礼した。




「食事の用意は出来ておりますよ?」




「おうっ」




 アウルが笑う。




「ありがとなクラリス」




「当然の務めですので」




 クラリスも小さく微笑んだ。




 その時。




 ソフィアが周囲を見回す。




「叔母上は?」




「まだお休みですが?」




 クラリスが答えた。




 一瞬。




 全員が沈黙する。




「……叔母上」




 ソフィアが額を押さえた。




「……私が起こそう」




 ---




 客室。




「叔母上、起きてください」




 ソフィアが声を掛ける。




 だが。




「……」




 反応は無い。




「寝入ってるな」




 アウルが呟いた。




「きっとお疲れなのでしょうね」




 クラリスが苦笑する。




 その時。




 ノアが何かを思いついた。




「ちょっと試してみるね」




 小さく呟く。




 そして。




 ヘレナへ向けて寵愛領域を放った。




 ---




「……うん?」




 ヘレナが目を開く。




「叔母上、お目覚めになられましたか?」




 ソフィアが安堵したように言った。




 しかし。




 ヘレナは不思議そうな顔をする。




「……お前、私に何かしたか?」




「?」




 ソフィアが首を傾げた。




 その時。




 ノアが小さく手を挙げた。




「……寵愛領域飛ばしてみた」




 ヘレナの視線が移る。




 ノアを見た。




「成程」




「ノアか」




 一同の視線もノアへ集まる。




「……寵愛領域」




 ヘレナは感心したように頷く。




「寝起きだと言うのに頭が冴える」




「これは良い目覚ましだな」




「悪くない」




 ノアは少し安心したように笑った。




 だが。




 ヘレナは続ける。




「流石の私も」




「大勢に寝顔を見られるのは好ましく思わんぞ?」




「も、申し訳ありませんっ」




 ソフィアが即座に頭を下げた。




「今回は許してやる」




 ヘレナは軽く手を振る。




「俺とノアが見るのは良くなかったな」




 アウルも反省したように言う。




「すまなかった」




「ほう?」




 ヘレナが笑う。




「中々良い気遣いじゃないか」




「そうか?」




「普通だろ」




 アウルは首を傾げた。




「えっと……」




 ノアも頭を下げる。




「すみませんでした、ヘレナさん」




 ヘレナはしばらくノアを見つめた。




 そして。




 ふっと笑う。




「ノア」




「はい?」




「お前が居ると心地良いな」




 ノアがきょとんとする。




「私の元に来ないか?」




「っ!?」




 ソフィアが目を見開いた。




「え?」




 ノアも固まる。




「お前が居ると快眠できそうだ」




「駄目ですっ」




 ソフィアが即答した。




「いくら叔母上と言えど認められませんっ」




 ヘレナは楽しそうに笑う。




「まぁ半分冗談だ」




「気にするな」




(半分?)




 ソフィアは思わずそんな事を考えた。




「さて」




 ヘレナはベッドから降りる。




「朝食だろう?」




「頂くとしよう」




 そう言って歩き出す。




 その後ろ姿を見ながら。




 ソフィアは小さく溜め息を吐いた。

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