第94話 初めての友達
風呂上がり。
「ふぅ〜、さっぱりした〜」
アウルが大きく伸びをする。
隣ではノアが穏やかに微笑んでいた。
「よしっ、俺の部屋行くぞ〜」
「うん」
---
王城、アウルの私室。
部屋へ入った瞬間。
「あっ」
アウルが声を漏らした。
「しまった、ベッド一つしか無ぇや」
広い部屋ではあるが、置かれているベッドは一台だけ。
するとノアが不思議そうに首を傾げる。
「ん? 十分大きいし、僕は一緒でも良いよ?」
「いやぁ、俺も良いんだけどよ?」
アウルは頭を掻いた。
「なんだかなぁ」
「?」
ノアはきょとんとしている。
「……まぁ良いかっ」
アウルは深く考えるのをやめた。
二人はベッドへ腰掛ける。
「……」
「アウル?」
「……う〜ん」
「?」
ノアは再び首を傾げた。
「俺、ソファーで寝ようかな……」
「一緒が嫌なら、僕がソファーで寝るよ?」
「いやっ、言い出したの俺だし!」
アウルが慌てて否定する。
「ノアをソファーで寝かせる訳にはいかねぇっ」
「明日ベッド追加するから気にすんなっ」
「そう?」
「おうよっ」
ノアはそれ以上気にした様子もなく頷いた。
---
しばらく他愛のない雑談が続く。
そんな中。
アウルがふと思い出したように口を開いた。
「さっき姉さん達と会ったろ?」
「うん」
「どうだった?」
ノアは少し考える。
「そうだなぁ」
「アウルとお姉さん達は仲良いんだなって思った」
「あははっ」
アウルが笑う。
「まぁ姉さん達は昔からあんなだ」
そう言ってから。
少し真面目な顔になる。
「俺の心眼看破は知ってるか?」
「心眼看破?」
「俺のエクストラスキルだ」
「あぁ、アウルも持ってるんだね」
ノアが納得したように頷く。
「凄いね?」
「男の一万人に一人でしょ?」
「そうだな」
アウルは少し得意げに笑った。
「まぁ伊達に王太子じゃ無ぇってことだ」
「師も持ってるんだぜ?」
「へぇ」
「まぁ、どんなスキルか知らねぇけど」
アウルは肩を竦める。
そして。
少しだけ視線を落とした。
「んでよ?」
「俺の心眼看破ってさ?」
「色々見えるんだよ」
「人の本音とか、色々さ……」
「うん」
ノアは静かに耳を傾ける。
「まぁ小さい時は、人の思惑とか見えるからよ?」
「身内以外は避けてたんだ」
アウルは苦笑した。
「そんな時に師だったり、クラリスと関わるようになっていってさ?」
「次第に慣れていったけど」
少し間を置いて。
ぽつりと呟く。
「お前と出会うまで、俺は友達居なかったんだよなっ」
「そうなんだ?」
ノアは驚いたように目を瞬かせた。
「あぁ」
「じゃあ僕と一緒だね」
「まぁ、お前の場合は特殊だろうけどなっ」
アウルは笑う。
けれど。
その後、少しだけ視線を逸らした。
「まぁなんだ」
「お前が俺と友達になって感謝してくれたのさ?」
「……嬉しかった」
「そっか」
ノアは優しく微笑む。
その表情に。
アウルは少しだけ照れ臭そうに頭を掻いた。
「今話してるのめっちゃ恥ずいけどよ」
「でも言っとかなきゃならねぇ」
アウルが真っ直ぐノアを見る。
「ノアっ」
「うん」
「俺と友達になってくれて……」
アウルは少しだけ詰まりながら。
それでもしっかりと言葉にした。
「あっ、ありがとなっ」
ノアは静かに微笑む。
「どういたしまして」
「ふっ」
アウルが小さく笑った。
「そろそろ寝るかぁ」
「明日、謁見もあるしな」
「うん、おやすみアウル」
「おうっ」
その夜。
アウルは生まれて初めて、“友達”と同じ部屋で眠った。




