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第91話 王都到着

 夕暮れ。




 長い街道の先に――




 王都が姿を現した。




 高くそびえる外壁。




 その外側に広がる外町。




 さらに内側には、より堅牢な壁に守られた内町。




 八十万の人が暮らす大都市。




 その圧倒的な規模が、遠目からでも伝わってくる。




「……やっぱりすごいね」




 ノアが思わず呟く。




「だろ?」




 アウルが得意げに笑った。




「王都はこの国の中心だからな」




 やがて馬車は外壁の門へと近づく。




 門前には検問。




「……辺境伯様だ」




 兵士が気づき、姿勢を正す。




「通せ」




 ソフィアの短い言葉。




 兵士は何も言わず、ただ頷いた。




 検問は、そのまま素通りされた。




 内町へ。




 整然とした街並み。




 そして――




 その奥に。




 王城が見えた。




「よっしゃ」




 アウルが身を乗り出す。




「王城に直行してくれ」




 馬車はそのまま進む。




 城門へ。




 重厚な扉の前で止まり――




「おい、俺だ。通せ」




「はっ!」




 即座に開かれる門。




 一行は、そのまま王城の中へと入った。





 ---




 城内。




 馬車を降りたアウルは、振り返る。




「母上に言ってくる」




「ちょっと待っててくれ」




 そう言い残し、足早に去っていく。





 ---




 王城、執務棟。




 扉の前で一度だけ息を整え――




「ただいま戻りました、母上っ」




 勢いよく扉を開ける。




「――げっ」




 思わず漏れた声。




 室内には、女王と――




 そしてもう一人。




「ほう?」




 低く、重い声。




「師に対して“げっ”とはな」




 白髪の男。




 灰の瞳が、ゆっくりとアウルを射抜く。




「中央島に飽きて戻って来たか?」




「いや、その……」




 アウルは一瞬言葉に詰まり。




 すぐに姿勢を正した。




「とりあえず大事な話があるんですが」





 ---




 中央島の開拓。




 ノアという存在。




 そして――




 一行を王城に滞在させたいこと。




 全てを簡潔に伝える。





 ---




「……はぁ」




 老獅子が小さく息を吐いた。




「お前がこの部屋に直行して来たあたり」




「陛下から先に承諾を得ようとしたな?」




「ま……まぁ」




「ソフィアの一行は既に王城に居るのか?」




「……はい」




「……まったく」




 短く、呆れたように言い。




 そのまま女王へと視線を向ける。




「明日、秘匿の謁見だ」




「そこで詳しく話せ」




「陛下もよろしいですな?」




「そうね」




 柔らかな声。




 女王カエリアが、静かに頷く。




「アウル」




「はい、母上」




 一瞬だけ。




 その表情が、僅かに緩む。




「おかえりなさい」




「ただいまっ、母上っ」




 アウルは真っ直ぐに答えた。




「ソフィア一行の王城滞在を許可します」




「あなたが案内しなさい」




「承知しました」




 そのやり取りを見届け。




 老獅子が、低く告げる。




「ノアに伝えておけ」




「寵愛領域を可能な限り抑えろと」




「良いな?」




「はいっ」




 アウルは力強く頷く。




「では失礼しますっ」




 そのまま踵を返し、部屋を後にした。




 扉が閉まる。




 静寂。




「元気そうね」




 カエリアが小さく微笑む。




「……そうですな」




 老獅子は、静かに答えた。

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