第81話 結ばれた朝
朝。
柔らかな光が、静かに差し込む。
ノアはゆっくりと目を開けた。
隣には――
アリス。
小さく寝息を立てている。
「……」
ほんの少しだけ、視線を落とす。
昨夜の余韻が、まだ残っている。
アリスの表情は、どこか穏やかで。
安心しきったような寝顔だった。
ノアは、そっと手を伸ばす。
髪に触れる。
やわらかい感触。
「……ん」
小さく反応するアリス。
ゆっくりと、目を開けた。
「……ノア様」
少しだけぼんやりとした声。
「おはよう」
優しく返す。
アリスは数秒、何も言わず――
やがて。
「……おはようございます」
そう返して、微笑んだ。
だがその直後。
自分の状況に気づいたのか。
一瞬、顔が赤くなる。
「……っ」
言葉を探すように、視線が揺れる。
ノアはそれを見て、少しだけ笑った。
「大丈夫?」
「……は、はい……」
小さく頷く。
だが、その身体は。
自然と、ノアの方へ寄っていた。
「……あの」
遠慮がちに、声を出す。
「その……」
言葉が続かない。
だが。
ノアは急かさない。
ただ、そっとその背に手を回す。
「うん」
それだけで。
アリスは、安心したように息を吐いた。
「……思っていたより、痛くなかったです」
ぽつりと。
「むしろ……」
少しだけ、言葉を止めて。
顔を伏せる。
「……気持ち良かったです」
小さな声。
だが、確かな想い。
ノアは、静かに頷いた。
「そっか」
それだけ。
それだけなのに。
アリスの頬が、ふわりと緩む。
「……はい」
そのまま、そっと身を寄せる。
ノアの胸に、額を預けた。
「……こうしていると、落ち着きます」
素直な言葉。
ノアは、その頭を優しく撫でた。
「なら、もう少しこのままでいようか」
「……はい」
小さく、しかし嬉しそうに。
頷く。
静かな時間が流れる。
言葉は、いらない。
ただ、触れ合うだけで十分だった。
やがて。
アリスが、ふと顔を上げる。
「……ノア様」
「うん?」
少しだけ、恥ずかしそうに。
それでも――
視線は逸らさない。
「……これからも、よろしくお願いします」
ノアは、優しく微笑んだ。
「こちらこそ」
その一言に。
アリスは、安心したように笑った。
朝の光が、二人を包み込む。
新しい一日が、静かに始まっていく。




