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第76話 静かな約束

 夜。




 ノアの自室。




 柔らかな灯りの中。




 アリスとノアは、静かに寄り添っていた。




 近い距離。




 自然と、唇が重なる。




 一度。




 二度。




 何度も。




 名残を惜しむように。




「……ノア様」




 アリスが、小さく呼ぶ。




「うん?」




 優しく返す。




 アリスは少しだけ視線を揺らし――




「……その、夜伽なのですが」




 言葉を選ぶように続ける。




 ノアは頷く。




「うん」




 その一言に、アリスは息を整えた。




「明日……よろしいですか?」




 少し震えた声。




 だが、その瞳は真っ直ぐだった。




 ノアは迷わず答える。




「分かった」




 安心したように、アリスの表情が緩む。




 ノアはそのまま、彼女の頭を優しく撫でた。




「……」




 アリスは目を細め、微笑む。




「ソフィアに伝えとくよ」




 その言葉に――




 アリスの頬が一気に赤く染まる。




「……お願いします」




 小さく、頷く。




 ノアはそのままアリスを抱き寄せた。




「緊張する?」




 静かに問いかける。




 アリスは、少しだけ間を置いてから。




「……はい……とても」




 正直に答える。




 ノアは優しく笑った。




「大丈夫だよ」




 背中を、ゆっくりと叩く。




 安心させるように。




「ノア様……」




 アリスは、ぎゅっと抱きしめ返した。




 その腕に、力がこもる。




 離れたくないように。




 その時――




 コンコン、と扉が叩かれる。




 アリスがゆっくりと体を離した。




「……私は失礼しますね」




 一歩下がる。




「おやすみなさい」




 ノアは頷く。




「おやすみ、アリス」




 アリスは最後に一度だけ視線を向け――




 静かに部屋を後にした。




 入れ替わるように、扉が開く。




 ソフィアが入室する。




「邪魔してしまったか?」




 少しだけ様子を伺うような声。




 ノアは首を振った。




「いいや、大丈夫だよ」




 そして少しだけ言葉を選び――




「明日、アリスがその……」




 言いかける。




 だが、ソフィアはすぐに理解した。




「そうか」




 短く答える。




 次の瞬間。




 ソフィアは一歩近づき――




 ノアを抱きしめた。




「ソフィア?」




 少し驚いた声。




 だが、ソフィアは離れない。




「明日の夜は、共に過ごせぬだろう?」




 静かな声。




 だが、どこか熱を帯びている。




「……だから今夜は、私を選べ」




 その一言に。




 ノアは小さく息を吐き――




 優しく微笑んだ。




「……おいで」




 ソフィアの身体を、しっかりと抱き返す。




 夜は、まだ長い。

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