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第69話 重なる想い

 夜。




 ノアの自室。




 静かな空気の中、扉が控えめに叩かれる。




「どうぞ」




 入ってきたのはアリスだった。




「失礼いたします、ノア様」




 いつも通りの丁寧な所作。




 だが、その表情はどこか柔らかい。




 ノアは微笑む。




「また一緒に王都だね」




 アリスは少しだけ驚いたように目を瞬かせる。




「はいっ」




 すぐに頷く。




「今度は……楽しみです」




「そうなの?」




 ノアが首を傾げる。




 アリスは少しだけ視線を落とした。




「前回は……不安でしたから」




 小さな声。




 ノアはゆっくりと近づく。




「そっか」




 そのまま、そっとアリスを抱きしめた。




「っ……ノア様」




 驚きと、安堵が混ざった声。




 ノアは優しく背を撫でる。




「僕は、どこにも行かないよ」




 その言葉に、アリスの身体から力が抜ける。




「……はいっ」




 今度は、自分から抱きしめ返す。




 少しだけ強く。




 まるで確かめるように。




 ノアはそのまま、アリスの髪に触れる。




「アリス、頑張ってたよね」




「え……」




「いつも、そばにいてくれてる」




 アリスの呼吸が、少しだけ乱れる。




「そんな……私は……」




 言葉が続かない。




 ノアは軽く笑う。




「ありがとう」




 その一言で、アリスの頬が染まる。




「ノア様……」




 視線が重なる。




 ほんの少しだけ、距離が近づく。




 だが――




 アリスははっとして、ゆっくりと離れた。




「……申し訳ありません」




 小さく首を振る。




「いえ……その……」




 言葉を整える。




「お休み前に、お顔を見たくて」




 ノアは優しく頷く。




「うん、来てくれて嬉しいよ」




 アリスは微笑んだ。




 柔らかく。




 満たされたような表情で。




「……失礼いたします」




 軽く頭を下げる。




 そのまま、静かに部屋を後にした。




 扉が閉まる。




 再び、静寂。




 ――コン、コン。




「どうぞ」




 今度は、少しだけ間を置いて扉が開く。




 入ってきたのは――ソフィアだった。




「ノ、ノア」




 どこかぎこちない声。




 ノアは優しく応える。




「うん」




 ソフィアは一歩、部屋に入る。




 そして、少しだけ視線を逸らしながら言った。




「……勝ったぞ」




 ノアはすぐに微笑む。




「うん、格好良かったよ」




 その一言で。




 ソフィアの頬が一気に赤くなる。




「な、なっ……」




 言葉が続かない。




 ノアはゆっくりと近づく。




 そのまま、ソフィアを抱きしめた。




「あっ……」




 驚きの声。




 だが、すぐに力が抜ける。




「いつもありがとう」




 静かな声。




 ソフィアの身体がわずかに震える。




「と、当然だ」




 強がるように言う。




「私は……お前の正妻なのだからなっ」




 ノアは優しく笑う。




 そのまま、そっと頭を撫でる。




「……っ」




 ソフィアの顔がさらに赤くなる。




 逃げることもできず、ただその場に立っている。




 ノアは少しだけ顔を近づけた。




「ソフィア……好きだよ」




 その言葉。




 ソフィアの思考が止まる。




「ノアっ……」




 声が震える。




 次の瞬間。




 ソフィアは、勢いのままノアの胸を押し――




 そのまま、唇を奪った。




 一瞬の衝撃。




 だが、ノアは拒まない。




 そのまま、受け入れる。




 触れ合う距離。




 言葉は、もういらなかった。




 静かな夜。




 二人の距離は――




 もう、離れなかった。

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