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第67話 世界の起点

 訓練場。




 決着の余韻が、まだ場に残っている。




 誰もすぐには動けなかった。




 アウルはその場に立ったまま、槍を下ろし、考え込んでいた。




「……」




 ノアが近づく。




「どうしたの?」




 アウルは顔を上げる。




「いや……」




 少し言葉を探す。




「お前の寵愛領域を、どうしたもんかなってさ」




 ノアは首を傾げる。




「どういうこと?」




 アウルは苦笑した。




「お前が居るだけで、色々ぶっ壊れるからな」




「色々って?」




 ノアの問いに、アウルは視線を少し上げる。




「王城での謁見の時、話してただろ」




「スキルの壁も覆すって」




 ノアが思い出す。




「あぁ……理解促進ってやつ?」




「そうだ」




 アウルは頷く。




 そして、ゆっくりと言葉を選ぶ。




「いいか、ノア」




「お前が居るだけで、女の精神が安定する」




「それだけでも戦闘力は上がる」




 一歩、踏み出す。




「そこにスキルの成長加速まで加わるなら……」




 一瞬、間を置く。




「お前は狙われる立場だ」




 静かな声だった。




 だが、重い。




「……」




 ノアは何も言わない。




 アウルは息を吐く。




「いや、謁見の時は面白いと思って聞いてたが……」




 頭を掻く。




「……こいつ、ヤベェ」




 ソフィアが口を開く。




「理解したようだな」




 アウルは小さく笑う。




「あぁ」




 そして周囲を見渡す。




「師がこの島に隔離するのを即断したのも納得だ」




「ノアを守る意味でも、この島は都合がいい」




 一拍。




 アウルの目が変わる。




「よしっ、決めた」




 まっすぐに前を見る。




「やっぱこの島は、世界の中心にすべきだ」




 空気が変わる。




「ノアがこの島に現れた意味……偶然じゃねぇ」




 強く言い切る。




「ここから世界が動く――」




 ソフィアは黙ってそれを聞いていた。




「……」




 アウルはふと視線をノアへ向ける。




「今更だがな」




「お前の寵愛領域の“白金”」




 眉をひそめる。




「他とは違う」




 ソフィアが反応する。




「……何だと?」




 アウルは続ける。




「俺が知る限り、エクストラスキルは金色に発光する」




「だが、こいつは違う」




 ノアを見る。




「白金だ」




 静かな断言。




「レベルも無い」




 ソフィアの目がわずかに見開かれる。




「……エクストラスキルも、特殊なのか」




「あぁ」




 アウルは頷く。




「もしかしたらな」




 少しだけ笑う。




「こいつ、人間じゃねぇかもしれねぇ」




 ソフィアは静かに息を吐いた。




「……そうか」




 アウルは肩をすくめる。




「下手したら神の化身かもな」




 ノアがぽつりと呟く。




「……神」




 アウルはすぐに笑った。




「まぁ、全部俺の憶測だけどな」




 空気が少しだけ緩む。




 そして――




 アウルは真っ直ぐにノアを見る。




「まぁ、何にせよ」




 一歩近づく。




「ノアは俺の友達だ」




 迷いはない。




「俺はノアを守る」




 ノアの目がわずかに揺れる。




「……アウル」




 アウルは笑う。




「こっから忙しくなるぜ〜」




 軽い口調。




 だが、その言葉の奥には――




 確かな覚悟があった。

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