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第66話 領域の力

 訓練場。




 朝の空気は澄んでいる。




 すでにアウルとソフィアは中央に立っていた。




 軽く距離を取り、向かい合う。




「待たせたな」




 ソフィアが言う。




「問題ねぇ」




 アウルは短く返す。




 互いに手にしているのは――




 刃を潰した槍。




 そして刃を抜いた剣。




 訓練用とはいえ、その佇まいは本物と変わらない。




 やがて、観客が揃う。




 ノア。




 アリス。




 クラリス。




 そして数名の騎士たち。




 静かに見守る空気。




 アウルが槍を構える。




「準備いいか?」




 ソフィアも剣を構えた。




「問題ない」




 沈黙。




 風が一度だけ、場を抜ける。




 互いに動かない。




 視線がぶつかる。




 睨み合い。




 ――次の瞬間。




 動いた。




 踏み込み。




 同時。




 その瞬間――




 終わった。




 一拍。




 静寂。




 アウルの槍は空を切り。




 ソフィアの剣は、アウルの喉元にあった。




 動けない。




 止まっている。




 いや――




 止められている。




「……」




 アウルの思考が追いつかない。




(……は?)




 ソフィアも同じだった。




 手応えはある。




 だが、違う。




 今のは――




 ゆっくりと。




 ソフィアは視線を動かす。




 その先。




 ノア。




 それを見て、アウルも視線を追う。




 そして――気付く。




「……お前」




 一歩。




「お前かああああああ!!」




 叫びが訓練場に響く。




「お前、何をしたんだよっ」




 ノアは戸惑う。




「え……えっと」




 ソフィアが静かに言う。




「ノア」




「ゆっくりでいい」




 ノアは少し考える。




「……えっと」




 言葉を探す。




「包んでた」




「……は?」




 アウルが眉をひそめる。




「包む?」




 ノアは頷く。




「ソフィアのこと」




 沈黙。




 ソフィアは目を細める。




「……成程」




 小さく呟く。




「以前検証した時とは、別次元だ」




 アウルは頭を掻く。




「いや、これヤベェだろ」




 真剣な声。




「全く見えなかった」




 そして続ける。




「……師みたいだったぞ、今の」




 ソフィアは静かに考える。




「ふむ」




 一歩引く。




 剣を下ろす。




「……届く可能性がある、か」




 その言葉は、確信に近かった。




 アウルは腕を組む。




「いや、師はレベル100だぞ?」




「今のソフィアが勝てるかは知らねぇが」




「レベルが上がって差が縮まったら……分からねぇ」




 一瞬、沈黙。




 そして。




「……ヤベェな」




 本音が漏れる。




 ソフィアは視線を向ける。




「どうする?」




「ノア抜きでやってみるか?」




 アウルはすぐに首を振った。




「いや、いいわ」




 一歩下がる。




「それどころじゃねぇ」




 ノアを見る。




 真っ直ぐに。




「寵愛領域……ヤベェ」




 その言葉だけが、重く場に残った。




 騎士たちは、誰も声を出さない。




 ただ静かに――




 その異常を、目の当たりにしていた。

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