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第63話 島の気配

 城館の外。




 アウルの馬が先を行く。




 その後ろを、ソフィアの馬が続く。




 ノアはその後ろに乗っていた。




 揺れに合わせて、自然と身体が近づく。




 気付けば、ノアの手はソフィアの腰に回っていた。




「……」




 ソフィアは何も言わない。




 だが、内心は落ち着かない。




 振りほどく理由はない。




 だが、意識はしてしまう。




 ノアは特に気にした様子もなく、前を見ている。




 その無意識さが、余計に距離を際立たせる。




 やがて――




 視界が開ける。




 泉。




 澄んだ水面が静かに揺れている。




 アウルが振り返る。




「どうよ?」




 ノアは素直に答えた。




「綺麗だね」




 ソフィアも泉を見る。




「この泉の存在は古くから伝わっている」




「だが私も叔母上も、特に気にはしなかったな」




 アウルが眉を上げる。




「えぇ?何でだよ」




「明らかに普通じゃねぇぞ、この泉」




 ソフィアは淡々と返す。




「澄んでいるのは分かるが」




 ノアが小さく呟く。




「なんか、不思議な感じだ」




 アウルが笑う。




「ほら見ろよ、ノアも言ってるぜ?」




 ソフィアはわずかに考える。




「……ううむ」




 そして、静かに言う。




「これから開拓するのだろう?」




「この泉についても、追々分かってくるかもしれん」




「まぁ、学者にでも見せるしかねぇか」




 アウルは肩をすくめた。




 ノアはそのまま泉を見つめる。




 水面の揺らぎ。




 言葉に出来ない違和感。




 だが、それ以上は何も言わない。




 アウルが手綱を引いた。




「よしっ、じゃあ次行くかっ」




 馬が再び動き出す。




 森の中へ。




 しばらく進んだ時だった。




 アウルが顔をしかめる。




「……なんか臭わねぇか?」




 ソフィアは首を傾げる。




「特に感じないが?」




「いや、臭えって」




 ノアが周囲を見回す。




「なんか……あったかい気がする」




 アウルが頷く。




「だよな?さっきまでと違うよな?」




「うん、何となくだけど」




 ソフィアは目を細める。




「……そうか?」




 アウルは考え込む。




「なんだろうな……どっかで嗅いだことあるような……」




 しばらく唸る。




「……うーん、分からんっ」




 そしてすぐに切り替える。




「ま、進むかぁ」




 そのまま一帯を見て回る。




 森。




 草原。




 岩場。




 そして――




 魔物。




 飛び出してきた個体を、アウルは一瞬で仕留める。




 突き。




 終わり。




 ノアが素直に言う。




「凄い」




 アウルは軽く笑う。




「まぁなっ」




 ソフィアも静かに言う。




「私もあれくらいは出来る」




 アウルが肩をすくめる。




 やがて、空が橙に染まり始める。




 夕方。




 アウルが周囲を見渡す。




「まぁ、こんなもんか」




 指を折りながら数える。




「森に、草原に、岩場……」




 一拍。




「んで泉」




 軽く笑う。




「人集めりゃ、何とかなりそうだな」




 ソフィアは冷静に返す。




「まぁ、時間は掛かるがな」




 アウルは続ける。




「あと開拓するにあたって護衛が要るなぁ」




「冒険者でも使うかな」




 ソフィアは頷く。




「長期になる故、騎士や兵士より都合が良いだろう」




 アウルは外周の方へ視線を向ける。




「外周も見た感じだと、港に使えるのは俺たちが使った場所だけか?」




「そうだな」




 ソフィアは説明する。




「この島の周りは潮流が速い」




「港として拓いた場所が唯一の良港らしい」




 アウルが納得したように頷く。




「成程な」




「それなら先に拠点作った奴が強いわな」




 ソフィアは続ける。




「城館の外の見張り塔で広く見渡せる」




「私たちがルクレツィアの船で帰った時も、兵士達が待機していただろう」




「そういうことだ」




 アウルは小さく笑う。




「分かりやすいな」




 そして手綱を引く。




「じゃあ帰るか」




 振り返り、ニヤリとする。




「ちょい飛ばすから、ノアはソフィアにしがみついとけよ」




 ノアは素直に頷く。




「分かった」




 ソフィアは一瞬だけ目を逸らす。




 そして、ほんのわずかに頬が赤くなった。




 馬が駆け出す。




 中央島の中を――

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