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第62話 穏やかな夜、穏やかな朝

 夜。




 ノアの部屋。




 静かな時間。




 扉が控えめに叩かれる。




「ノア様」




「アリス?」




 扉が開き、アリスが入ってくる。




「少し、お時間よろしいでしょうか」




「うん、大丈夫だよ」




 アリスはベッドの近くまで来る。




 そのまま、自然に隣へ座った。




 距離が近い。




 だが、もう違和感はない。




「……今日は、どうでしたか?」




「うん、楽しかったよ」




 ノアはそのまま答える。




「アウルも楽しそうだったし」




「そうですね」




 アリスが小さく微笑む。




 少しだけ間が空く。




 そのまま、アリスがそっとノアの腕に触れる。




「……こうしていても、よろしいですか?」




「うん」




 ノアはそのまま受け入れる。




 アリスは安心したように、軽く寄りかかる。




 静かな時間。




 何も起きない。




 ただ、それが心地いい。




「……ノア様」




「ん?」




「明日も、お側に居ます」




「ありがとう、アリス」




 その言葉だけで、十分だった。




 ――コンコン。




 扉が叩かれる。




「ノア、起きているか」




 ソフィアの声。




 アリスが少しだけ離れる。




「うん、起きてる」




「入るぞ」




 扉が開く。




 ソフィアが入ってくる。




 二人の距離を一瞬だけ見る。




 だが何も言わない。




「……邪魔だったか?」




「いや、大丈夫だよ」




「そうか」




 ソフィアはそのまま椅子に腰掛ける。




「少し話をしようと思ってな」




 そこから、三人での時間が流れる。




 他愛もない話。




 今日のこと。




 明日のこと。




 静かで、穏やかな時間。




 やがて――




 夜は更けていった。





 ---




 翌朝。




 食堂。




 いつものように三人が揃う。




 食事を終えた後。




 アウルが立ち上がる。




「よしっ」




 軽く伸びをする。




「俺とソフィアが居るなら、今日は護衛いらないな」




 ソフィアは迷いなく頷く。




「そうだな」




 そしてアウルを見る。




「で、今日はどこを見たいんだ?」




 アウルは即答した。




「とりあえず泉行こう」




 少しだけ笑う。




「ノアに見せてやりてぇ」




 ソフィアは小さく頷いた。




「分かった」




 そしてノアを見る。




「ノアは私の後ろに乗れ」




「うん」





 ---




 城館の外。




 馬が用意されている。




 アウルは軽く地面を蹴り――




 ひょい、と馬に乗る。




 無駄のない動き。




 ノアは少しだけ戸惑いながらソフィアを見る。




「えっと……」




「来い」




 短く言う。




 ノアはぎこちなく馬に乗る。




 そのまま、ソフィアの後ろへ。




 距離が、近い。




(……近いな)




 ソフィアは内心でそう思う。




 だが、表には出さない。




 ノアが少しだけ動く。




「僕も馬に乗れた方がいいかな?」




 即答だった。




「不要だ。私が乗せる」




 一切の迷いがない。




 アウルが軽く笑う。




「過保護だな」




「問題ない」




 短く返す。




 アウルは前を見る。




「じゃあ行くか」




 手綱を軽く引く。




「ノアも居るし、ゆっくり行くわ」




「ありがとう、アウル」




「おう」




 馬がゆっくりと動き出す。




 中央島の中へ。

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