第48話 港の女
港町は活気があった。
荷車。
船員。
商人。
様々な国の人間が行き交っている。
だが。
辺境伯の馬車を見て、周囲の視線が一瞬集まる。
しかし大きな騒ぎにはならなかった。
この町では、辺境伯の一行が出入りするのは珍しいことではない。
馬車は町の中心を抜け、そのまま宿へ向かう。
港の匂いと潮風が町に流れていた。
そして。
宿の裏口で止まった。
扉がすぐに開く。
宿の従業員たちだった。
女将が一歩前に出る。
「辺境伯様」
落ち着いた声だった。
慌てた様子はない。
ソフィアが短く言う。
「一泊する」
女将はすぐに頷いた。
「部屋はご用意できます」
「いつもの部屋をお使いください」
ソフィアが先導する。
一行はそのまま中へ入った。
ソフィアが騎士の一人を見る。
「補給船を出す手配をしておけ」
「承知しました」
騎士はすぐに港へ向かった。
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ノアたちは宿の部屋でしばらく待つ。
やがて。
騎士が戻ってきた。
表情が少し硬い。
「ソフィア様」
「補給船ですが」
「整備中とのことです」
ソフィアの眉がわずかに動く。
「整備?」
「はい」
「ドックに入っております」
「数日かかるそうです」
沈黙。
アウルが言った。
「数日?」
「足止めかよ」
アウルが笑う。
「じゃあ港町でも散策するか」
「せっかくだしな」
だが。
ソフィアは首を横に振った。
「駄目だ」
「港町は人の出入りが多い」
「危険だ」
アウルは肩をすくめる。
「真面目だな」
そして言った。
「じゃあ補給船の様子くらい見に行こうぜ」
「どうせ港だろ?」
ソフィアは少し考えた。
そして頷く。
「……確認しておく必要はある」
「決まりだな」
一行は宿を出た。
港へ向かう。
海風が吹いていた。
船が並ぶ桟橋。
荷を運ぶ船員たち。
そのときだった。
「もし」
声がした。
振り向く。
そこに立っていたのは、一人の女だった。
紫の髪。
黄金の瞳。
一行を見て、その女は足を止めていた。
海風にロングコートが揺れる。
女はゆっくり微笑んだ。
ノアはその女を見る。
まだ知らない。
この出会いが。
新しい流れを生むことを。




