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第46話 宿町の再訪

 夕暮れ。




 アウルが窓の外を見て言う。




「着いたな」




 ノアも外を見る。




「宿町だ」




 行きにも立ち寄った町。




 王都に近い街道の中継地だ。




 馬車はそのまま町へ入る。




 日暮れの時間帯。




 街道にはまだ人が多い。




 旅人。




 商人。




 荷車。




 そして――




 騎士。




 辺境伯の馬車。




 ざわっ。




 自然と視線が集まる。




 アウルが苦笑した。




「やっぱ目立つな」




 馬車は町の中心へ進む。




 やがて見えてきた。




 三階建ての大きな宿。




 街道でも有名な高級宿だ。




 ソフィアが短く言う。




「裏へ回れ」




 御者が頷いた。




 馬車は建物の裏へ回る。




 裏口。




 御者が馬車を止めた。




 馬車の扉が開き、ノアたち四人が順に地面へ降りた。




 騎士たちが周囲を警戒する。




 そのとき。




 裏口の扉が開いた。




 出てきたのは女将だった。




 そして。




 一瞬。




 動きが止まる。




 視線が、ノアに向く。




「……あ」




 ほんの小さな声だった。




 女将はすぐに頭を下げる。




「辺境伯様」




 ソフィアが頷く。




「一泊する」




「部屋を三つ」




 女将は慌てて答えた。




「は、はい」




 だがその視線はもう一度だけ、ノアへ向いた。




 覚えている。




 銀の髪。




 不思議なほど整った顔。




 女将はすぐに視線を逸らした。




「こちらへ」




 一行は宿の中へ入る。




 磨かれた木の床。




 柔らかな魔石ランプ。




 高級宿らしい静かな空気だった。




 廊下を進みながら女将が言う。




「部屋はすぐご用意いたします」




 ソフィアが言う。




「三部屋だ」




「ノアと王太子殿下」




「一部屋」




 ノアが少し驚く。




 アウルが笑う。




「よろしくな」




 ソフィアは続ける。




「私とアリス、クラリス」




「三人」




「騎士と御者」




「四人部屋」




 女将が頷いた。




「かしこまりました」




 やがて部屋の扉が開く。




「こちらです」




 ノアとアウルが部屋へ入る。




 広い部屋だった。




 ベッドが二つ。




 机。




 椅子。




 窓。




 アウルが周囲を見て言う。




「いい宿だな」




 ノアも頷く。




「街道の宿とは思えない」




 そのとき。




 アウルが立ち上がった。




「なあ」




 ノアを見る。




「館内見ようぜ」




「え?」




「せっかくだ」




 アウルは笑う。




「こういう宿って結構面白いぞ」




 ノアは少し考えた。




「まあ……」




 肩をすくめる。




「いいよ」




 二人は部屋を出た。




 廊下。




 階段。




 宿の中は静かだった。




 食堂。




 談話室。




 旅人たちの声が遠くから聞こえる。




 その途中。




 給仕の若い女が二人を見た。




 そして。




 足が止まる。




 視線。




 ノアへ。




「あ……」




 頬が少し赤くなる。




 ノアは気づいていない。




 普通に歩いている。




 アウルは気づいた。




 ニヤッと笑う。




「お前」




「目立つな」




「え?」




「いや」




 アウルは肩をすくめた。




「なんでもない」




 やがて夕食の時間。




 食堂。




 テーブルには三人。




 ソフィア。




 アウル。




 ノア。




 給仕の女が料理を運ぶ。




 スープ。




 肉料理。




 パン。




 その女の視線が何度もノアへ向く。




 皿を置くとき。




 少し距離が近い。




 ノアは気づかない。




 ただ普通に言う。




「ありがとう」




 女は一瞬固まる。




「……い、いえ」




 そのまま慌てて下がった。




 ソフィアがそれを見ていた。




 静かな表情。




 だが。




 ほんの少し。




 眉が動く。




 アウルがそれに気づく。




 ニヤッと笑った。




「人気だな」




 ノアが首を傾げる。




「何が?」




「いや」




 アウルはスープを飲む。




「なんでもない」




 食事は静かに続いた。




 その夜。




 部屋。




 ノアはベッドに腰を下ろす。




 アウルは窓の外を見ていた。




「中央島」




 ぽつりと言う。




「楽しみだ」




 ノアが笑う。




「そんなに?」




「ああ」




 アウルは振り向く。




「お前の島だろ」




 ノアは首を振る。




「僕のじゃないよ」




「辺境伯領」




 アウルは笑った。




「でも中心はお前だ」




 ノアは少し困った顔をする。




 沈黙。




 外では旅人の声が聞こえる。




 アウルが言った。




「まあ」




 ベッドに倒れる。




「よろしくな」




 ノアも横になる。




「こちらこそ」




 目を閉じる。




 不思議と。




 落ち着く空気だった。




 少し騒がしい旅。




 だが。




 今は心地いい。




 そのままノアは、ゆっくりと眠りに落ちていった。

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