第39話 王都の街
王都の大通り。
石畳の道は広く、両脇には店が並んでいる。
武器屋。
服屋。
魔道具店。
露店の香ばしい匂い。
行き交う人々の数も多い。
中央島とは比べものにならない賑わいだった。
ノアは思わず辺りを見回す。
「……すごいな」
アウルが笑う。
「だろ?」
「王都は人が多い」
「中央島とは違うだろ」
「はい、かなり」
ノアは素直に頷いた。
そのときだった。
ノアの足が止まる。
「あ」
ソフィアが振り向く。
「どうした」
ノアは少し困った顔をする。
「アリス……」
「控え室に置いてきたままだ」
沈黙。
ヘレナが小さく息を吐いた。
「私が呼んでくる」
「お前たちはここで待っていろ」
そう言って、王城の方へ戻っていった。
アウルが首を傾げる。
「アリス?」
ノアが少し言葉に詰まる。
「僕の……えと……」
横からソフィアが言った。
「侍女だ」
アウルは納得したように頷く。
「なるほど」
「世話係か」
ノアは苦笑する。
「まあ、そんな感じです」
しばらく待つ。
やがて。
石畳の向こうから二人の姿が見えた。
ヘレナ。
そしてその後ろにアリス。
アリスは一行を見ると小さく頭を下げた。
「お待たせしました」
ノアが少し申し訳なさそうに言う。
「ごめん、忘れてた」
アリスは柔らかく微笑む。
「大丈夫です」
「ノア様らしいですから」
アウルが手を振る。
「よし」
「改めて案内してやる」
王太子は楽しそうに歩き出した。
王都の大通り。
露店の並ぶ市場。
商人の声。
遠くで鐘の音が鳴る。
人の流れの中で、ノアは少しだけ視線を感じた。
通りすがりの女性。
店の娘。
貴族の令嬢らしい少女。
ちらりと視線を向けてくる。
「……人が多いな」
ノアは軽く流す。
その横で。
ソフィアの眉がわずかに動く。
アウルが立ち止まる。
「まずはこの辺だな」
「商人街」
指差す先には大きな市場が広がっていた。
「王都の中心の一つだ」
ノアは目を輝かせる。
「へえ……」
王都の街は広い。
そしてまだ。
ノアは知らない。
この散策が、これからの運命を少しずつ動かしていくことを。




