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第19話 白金の報告

 執務室。




 夜。




 静かな灯りの下、ソフィアは書類から目を上げた。




「入れ」




 扉が開く。




 ノアとアリス。




 二人並んで立つ。




「何だ」




 アリスが一歩前へ出た。




「本日、ノア様の能力について新しい発見がありました」




 蒼い瞳が細まる。




「ほう」




「操作が可能です」




 沈黙。




 ソフィアは椅子にもたれた。




「詳細を」





 ---




 中庭での実験を説明する。




 距離。




 集中。




 絞り込み。




 アリスの火魔法。




 詠唱時間。




 安定度。




 全て。




 ソフィアは黙って聞いていた。




 やがて口を開く。




「再現性は」




「高いと思われます」




「何度試した」




「十数回ほど」




「失敗は」




「ありません」




 蒼い瞳がノアへ向く。




「お前は」




「はい?」




「感覚はあるのか」




 少し考える。




「……白金に触れる感じです」




「触れる?」




「押すと散ります。寄せると集まります」




「なるほど」




 ソフィアは指を組む。




「範囲は」




「二歩程度が最も安定しています」




「三歩で低下」




「四歩でほぼ消失」




 ソフィアの思考は早い。




 距離。




 戦場。




 配置。




 兵数。




 すべて計算されていく。




「集中対象は」




「一人です」




「複数は」




「まだ試していません」




「試せ」




 即答だった。




 アリスが頷く。




「承知しました」





 ---




 沈黙。




 ソフィアは立ち上がる。




 窓辺へ歩く。




 海風がカーテンを揺らす。




「理解促進」




「精神安定」




「疲労軽減」




 静かな声。




「そして操作可能」




 小さく息を吐く。




「……厄介だな」




 ノアが苦笑する。




「悪い意味で?」




「良い意味でだ」




 振り返る。




 蒼い瞳は真剣だった。




「軍として見れば、戦略兵器に近い」




 ノアの肩が僅かに強張る。




 ソフィアは続ける。




「だが」




 一拍。




「ここでは違う」




 視線が柔らぐ。




「まずは理解だ」




 研究。




 観察。




 検証。




「急ぐ必要はない」




 そして。




 静かに言う。




「この屋敷の中ではな」





 ---




 部屋を出る。




 廊下。




 アリスが小さく息を吐く。




「怒られませんでしたね」




「うん」




 ノアも笑う。




「むしろ喜んでた」




「はい」




 少しだけ誇らしい。




 その背後。




 執務室。




 ソフィアは一人。




 窓の外を見る。




「……白金」




 呟く。




 触れられる力。




 操作できる力。




 それは。




 予想以上だった。




「やはり」




 静かに目を閉じる。




「囲うしかない」




 再認識。




 そして。




 物語は静かに広がり始めていた。

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