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乳ガンになった話を書いておく。  作者: 雷鳥文庫


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放射線治療の毎日。

 私は毎日朝一番の時間で受診することが決まりました。

8時半から9時の時間帯です。


遅刻するわけにはいきません。受付開始がこの頃、8時半だったと記憶しています。

(コロナのせいかしら。いまは8時からのようです。)


8時5分くらいには受付の長蛇の列に並んでいます。

入り口で検温をし、マスクをしてることを確認され、手の消毒をします。

ちゃんとやらないと警備の人にチェックされちゃいますよ。うっかり忘れても安心だね!


 中に入ると折り返して列は続きます。朝一番でこんなにくるのですね。予約でない人もいるわけですか、

寒いから病院内に入れるとありがたいです。もう少し早いと、8時前だと外で待つ事になるから、その塩梅が大事なのです。


(行きは流石にバスを使ってます。歩きだと時間が読めませんから。)


待ち合所にはソファに座っている先頭集団がいます。

どれくらい前から来ているのでしょうか。凄いですね。


そこの上にはTVがあってNHKが固定でついています。

「カム○〇エヴリバディ」をやっている頃でした。

それを横目で見ながら、ジリジリと受付開始を待つのです。


さあ、受付機械に通したよ!

次は地下にいって、放射線科の受付だ。

そこで検査着とロッカーキーを受け取ります。


着替えたら待合所で待つのです。

そこで声をかけられるのを待つのですが、先着順みたいでしたね。最初の頃は4、5人いました。

だんだんと25日のお勤めを済ました人から来なくなります。



放射線照射は、そこにいる人からやっていく感じですから、

「早く着替えてスタンバイしたい。」

みたいな所がありました。


TVがあって、下にはマガジンラックがあります。

…ああ、ここにはありますね。カツラのパンフレットが。

私は抗がん剤をやってないから脱毛はしてませんが……。



おや?本も置いてあります。

絵本みたいな?開いてみましょうか。


「ここにいるあなたは、とても混乱して悲しんでいることでしょう…」

みたいなことが前書きに書いてあります。


ん?んんん?


パラリとめくってみます。



『否認』

「突然の告知に驚き、悲しみ、受け止められないでしょう…」


文には綺麗な花だの空だのファンシーな絵が描いて添えてあります。

しかし、内容はまったく可愛くありません。


次をめくりましょう。


『怒り』

「どうして自分がこんな目に合うのかと、次に怒りが湧いてくるでしょう。」





…うわあ。


これってさあ。


次。

『取り引き』

『抑うつ』

と重い内容が続きます。添えられている文は優しげですが、説教くさく人の内面に踏み込んできます。


………。


最後は、

『受容』


「…もうあなたの心は穏やかでしょう…」



添えてある絵は緩やかな川の流れと蓮(はす)みたいな花。





――――――――――もう、結構です。


俗に言う、『死を受け入れるまでの五つのステップ』

ですよね。


…うん。


どう言う意図かわかりませんが、放射線治療をする人は生きるのを諦めていないと思いますよ。



はあーーーー。



思わず長いため息が出ました。

(この時はまわりに誰もいませんでした。)


本を戻し、視線を上げてTVを見ます。

この頃はどこの局でもコロナ、コロナ。

コロナのことばっかりで世の中は暗く閉塞感に満ちていました。

普通の人だって鬱っぽくなったり、

「コロナ報道ばかり見るのヤダ。」

と、アマゾン〇〇イムとかで映画やドラマやアニメばかり見ていた頃です。


待合室のテレビは流石に考えています。

流れているのは、

「〇○〇ット!」のみ。


ええ、朝で唯一情報系ではない、ゆるーいバラエティです。

コロナのことなんか何もいいません。

感染者がまた最高を更新したとか、緊急事態宣言とか、

「蜜です!」

「ステイホーム」

「マスクの作り方」

なんて全然流れないのです。

TVを見て暗い気持ちにならないようにですね。きっと。

暗い気持ちになったら免疫力が下がるといいますし。

(それよりあの本をどうにかしろ)


それをぼーっと毎日眺めていました。


だから、今、かえって「〇○〇ット!」が見れないのでした。

あの閉塞感を思いだしてしまうんですね。






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