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乳ガンになった話を書いておく。  作者: 雷鳥文庫


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13/13

生きているのは不思議、という歌詞を噛み締める。

 さて、放射線治療の話に戻りましょう。



ロッカーで上半身ハダカになり、そこに検査服を着ます。

それで照射の部屋に行くわけで、そこで脱ぎます。

徒歩二分、往復四分くらいしか着ないわけなんです。


なんだかな。でもそんなものですね。



靴を脱いで台の上に横たわると、スタッフが二人程きて、胸のマーカーを見て、位置を調整してくれます。

その後タオルを当てられて照射スタート。


まあ、それ自体は痛くも痒くもありません。


ジーッジッジッジッジッ。


みたいな音が聞こえて、身体の上の機械が反転して当てていくわけなんです。


イメージは歯医者のレントゲンに似てるかな。

機械が回って撫でるように当てていく。


照射初回の時、さあこれからと言う時に電話がかかってきました。

「はい、はい。わかりました。」

放射線科の先生が頷いています。


「手術をした乳腺科の先生からですよ。リンパに一個転移してたから、そこもキチンと叩いて、と。」

「はい。」

気にかけて下さってるんですね、ありがたいです。

「貴女の場合は25回で60グレイです。60グレイだと手術扱いになって、手術特約付けてたらその保険もでますよ。良かったですね?」

(グレイとは放射線の線量の単位らしいですよ。)


「は、はい。」

それは何というか。良かったです?


「放射線治療をすることによって、」

先生の説明は続きます。

「あらたに放射線の影響によって微量にガンが出来ます。」


えええ。


「それもたたく。モグラ叩きみたいなものだけども、まず乳房全体を50グレイでたたいて、追加で10。これでまあ大丈夫でしょう。

だからね、間隔を空けないで来てくださいね?土日の二日間なら良いですけど、それ以上だと増えてしまうかも。」


わかりました。


それから毎日の放射線治療通い。

この頃はBGMにジブリのオルゴールの音楽があちこちで良くかかっていました。

内科、歯医者、かご○屋。


そしてこの放射線治療室でも。


じ、じじじじじー。

と言う器械音。

その後ろから聞こえるBGM。


ああ、ものの○姫…ト○ロ。

ジブリの音楽はなんとオルゴールの旋律に合うのでしょうか。


良く覚えているのは千と〇〇の神隠しの旋律です。


…生きている不思○、死んで○く、不思議。


ああ、母を思い出す。



二十年くらいまえ、母の手術の時帰省しました。


その頃ちょうどこの映画が流行っていて、こちらに戻る飛行機の中聞きました。

ええ。良くあるその年の流行歌の特集のチャンネルです。

あの時、飛行機の頼りないイヤホンから聞こえてきたメロディ。


その歌詞。


――――悲しみは消えないとか、向こうできっと会えるとか。

ゼロになる身体とか、そう言う歌詞が何故か、ぐっと胸に迫ってきて。


…大丈夫。手術自体は成功したと、取れるものは取ったと、言われたじゃないの。

お母さんはきっと大丈夫。治る。


……だけど、この不安は何だろう。本当に大丈夫なら、あんな言い方をするだろうか。


嫌な予感で飛行機の中で、泣けてきました。





生きているのは不思議な事なのか。死んでしまうのも不思議なのか。




自分でも無意識に落ちていく涙。揺れる飛行機。

あの心細さ。


その時の歌詞が忘れられません。

母はその二年後に亡くなりました。


…余命宣告より半年も早かった。




 そして、自分自身が放射線治療室で毎回このメロディを聞くことになった訳です。




人の生死は不思議なものなんですよね。





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