道連れ
瞬間の判断。
イチゾーは百頭丸を伸ばして――刹那の判断で諦めた。
もう無理だ。届かない。それは八咫烏としての合理的な思考。トリアージ。助けれる者は全力で助ける。だが、助けれない者は――
それは八咫烏衆が元は軍の特務であったことに起因して流れている血。思考の指向。八咫烏はどうしても『助けれない者に全力を尽くした結果取り零す量』を測ってしまう。
だからイチゾーは諦めた。
次にニゾーもイチゾーのその判断を見て諦めた。
だが――
「回収は任せます。それと――ごめんなさい。待ってますね?」
カエデが飛んだ。
一番反応が遅くて、一番身体能力に劣っているので、どう足掻いても手遅れだ。「ッ! 百と――」。それでもイチゾーは最後に付け加えられた言葉にカエデのやることを理解して、慌てて再び百頭丸を放つ。
手遅れだ。あの子供は穴に呑まれる。そう言う距離だ。
「ごめんなさい」
だから。
「ちょっと乱暴にしますね?」
だから、カエデは子供を掴むと思い切りトラックに向けてぶん投げた。少女の細腕。しかも技師。それでも腐っても八咫烏。少しは積まれた基礎がある。何の基礎が? 決まっている。それは旧時代より受け継がれた身体操作術。生身の人類が魔力を持ったモノに向かった名残り。人類の切り札の残り香。だから未熟で、基礎しかなくても――自分と交換なら子供の一人くらいは助けられる。
「こっ、ンの――」クソアホ酔っ払いが! その罵倒を飲み込む変わりに、イチゾーは思考を加速させる。
投げ返された子供。百頭丸で掴んで、隣のトラックの荷台に放り込む。雑になった。痛みをこらえる声が聞こえた。悪いが無視。視線も送らない。鳴けたンなら無事だろ? そんな感じ。ニゾー。まだ状況把握が出来ていない。その背中を左手で掴み、テイクバック。振りかぶる体勢を造る間に奔らせた視線で得物を見定めて――
「ぐな!」
「わりぃ! 頼む!」
文句を言うニゾー。そんなペンに謝りながら、容赦なく投擲。カエデの行動には理解が追い付かなかったニゾーだが、イチゾーの考えなら即座に対応してくれる。意図を正確に汲み取り、即座に飛翔体制。
流線形のボディが風を流す。魔力を得たペンギンが泳ぐ場所を海から空へと変えていた。それでもペンギンが泳ぐ理由だけは変わらない。狩りの為だ。「ぐが!」。咆哮一回。それで気合を入れて、トラックのフロント、防弾ガラスを容易くニゾーが蹴破り、護衛と思われる助手席のハンターにフリッパーで水平チョップ。顎をかすめて、意識を刈り取り――
「こっ、の、クソガキぃぃぃいいいいいいいいいいいいっ! オレに! 何の! 恨みがあるんだボケェっ!!」
「……いや、ほんと悪いね」
イチゾーを侵入させる。
少し申し訳ない。だって選んでしまったトラックは先程の鉄球だった。何と言うか集中して嫌がらせをしている様に見えてしまう。
「ぶち殺してやるからなぁ! 面覚えたぞテメェ!」
「……へーぃ? 一応逃がしてやるからそれで勘弁な、っと」
言いながら豚人種の運転手を引っこ抜いて適当なトラックの荷台目掛けて放り投げる。豚人種だけあって重い。「……」。やっべ。届かねぇ。予想される大惨事に、イチゾーがちょっと、うわ、となる。殺す気は無かった。本当さ。でも結果は――そんな感じ。だが、見ていた周囲の連中の中から昨日のジャイアントペンギンが飛び出し、救助してくれていた。有難い。これで遠慮なく目的を果たせる。
ハンドルを思い切り切って百八十度回転。トラックの進行方向を変えて、フルスロットル。逃げる他の輸送中隊とは逆に穴に向かって突っ込ませる。
「な?」
「あー……付き合って貰おうぜ」
助手席で気絶する人間種のハンターをぺしぺし叩きながら「こいつは逃がさんで良いの?」と言うニゾーの問いかけに、半笑いで「道ずれだ」とイチゾー。これからのことを考えると戦力は多い方が良い。「……」。ちょっとコイツ弱すぎる気もするけど……
「――数は、居るよな?」
「ぐあ」
ニゾーが「せやな」と返して――残りは、十三秒。
狙うは一。
「さぁ」とトラックを慣性に任せて、イチゾーがトラックから飛び降りる。「だ・れ・に――」数が居る。出来れば強い奴が良い。何処にいる? どの車に乗ってる? 決まってる。今回の輸送中隊の募集に於いて、唯一『位階参以上』と言う条件を付けていた会社がある。だから狙うのは――
「し・よ・う・か・なぁっ!?」
そこだ。
壱足・槍天から重ねての弐足・円天。カエデとは異なり、積んで、磨いて、継承した身体操作術。繰り出された槍の速度はそのままに、軌跡だけを弧に切り替えてのジャンピングローリングソバット。それをビートルワークスの車の上の護衛、やけど女に叩き込む。
「――来ると、思っていたわ」
煙草で焼けた声。赤い髪を後ろで一纏めにしたフライフェイスが、犬歯を剥いて獣の様に笑う。無駄にガタイが良かったから人間種だと思っていたが、耳が尖っている。精霊種らしい。
「待たせちまったかい、お姉さん?」
声音は薄く、軽く、イチゾー。
「いや? 来てほしくなかったわ、坊や」
対して、焼けた声音で、獣の眼光でフライフェイス。
「あ、そうなん? それは――連れない、な!」
当てた蹴り足を起点に機動を造る。宙に浮いた状況からの踵落とし。ぺき、硬いモノに罅が入る音。「へぇ?」。どこか関心した様な声音。見れば受けたフライフェイスの左腕が鎧に覆われ、そこに突き刺さったイチゾーの踵が装甲に罅を入れていた。「……」。やはり、格上。
先ずはそれが確定。だから――連れてく!
次にそれが確定。抜き放ったウォーハンマーのヘッドを持っての殴りつける様なラッシュ。受けさせ、避けさせる。こっちの方が早さは上。腕の鎧と言い、憑いてるのは『硬い』が『重い』蟲なのかもしれない。ラッキーだ。相性が良くて、今の目的を考えると都合も良い。素敵だ。だから――
「――――――――――――――――――――――――――――――」
ラッシュ! 無呼吸での全力稼働。裏拳を避けさせ、膝を入れて受けさせ、そこを起点にしてのヘッドバッド。揺れて、割れた。イチゾーの石頭に対しての鉄頭。負けた。だが揺らしてやった。不意を突いた。一秒にも満たない停止。砂金よりも、小さく、それでも値千金の隙。それを造った。造ったので、詰める。ハンマーの持つ場所をヘッドから柄へ。間合いを変えて、隙を狙う刺突、避けさせ、回して、鉤爪で服を絡めて――引き千切る。
「紫のレース」
随分と派手なモノをお召ですわね? とイチゾー。
「――」
殺す。とフライフェイス。挑発で一瞬沸騰した頭の前に、餌を出す。ラッシュを止める。フライフェイスが殴りかかって来るのに合わせてイチゾーが足を畳んでのバク転。即座にすかした右のストレートに足を絡めて――
「――ほんと、わりぃね」
フライフェイスを車の上から引っこ抜いて穴に放り込み、そのまま自分も飛び込む。
「おー……」
安全地帯に逃げ切っていることもあり、その光景にビートルワークスの護衛を中心に『あのルーキー、良いねぇ』見たいな雰囲気が漂う。ジャイアントペンギンはフリッパーで拍手とかしてる。
「……」
それをニゾーは見ていた。
見ていて、イチゾーの言葉を思い出した。
数は多い方が良い。
巻き込むなら強い方が良い。
「……」
ジャイアントペンギン。強者である迷宮ペンギンと言う種の中でも種族としての強者である。そんな訳で「ぐあ!」よっしゃ! とガッツポーズ。かまして、ワンショルダーバッグから預かっている桐の箱を取り出して、ジャイアントペンギンに見える様に掲げる。
「ぐあ!」
気が利くな! 返せ! とジャイアントペンギン。
「なっ!」
あばよ! とニゾー。
言うだけ言って返事を待たずに穴に飛び込んだので――
「ぐがああああああああああああ!」
ブチ切れたジャイアントペンギンを道連れにすることに成功した。
クズ兄弟では(。´・ω・)?
はい。
今日、有給とって都会シティの本屋さん行ってみたんですよ
電車で
でもその電車、何かおかしいんです
なんだろうなー、いやだなー、と思っていたらですね……なんと、自分以外無線イヤホンだったんですよ!
……マジかよ。有線俺だけかよ
そんな訳で本屋さんにいっぱい余ってたから興味がある人は見かけたら手に取ってみて下さい
あ、既に買ってくれた人!
アンケート! アンケート答えてss読んでみて! カエデちゃんのヒロイン力が高まってるから!
買えば誰でも読めるから力入れたから!
そんな感じです。




