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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第6章 ロスマリヌスの不義

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侵入のフィオドラ

「確かにお渡ししましたよ」

「はい…ありがとうございます」

夕暮れ時を迎えた頃、ロスマリヌス郵便の配達員がフィオドラのもとを訪ねていた。書留の手紙を配達に来たのだ。一礼すると、配達員は次の手紙の配達先を一瞥して、足早に去っていった。


1人残されたフィオドラは、戸惑いを隠しきれないでいる。手紙の差出人がアルクニクス商会だったからだ。どうやらフィオドラとアルクニクス商会の間には、何の接点もないようだ。


しばらく訝しげに赤い封蝋がされた封筒を見ていたフィオドラは、やがて踵を返して家内に入っていった。それから封筒を開け、中に入っていた手紙を読んだ。


「今晩に会合…」

そこにはラデガスト商会の会長ナイトンと、がらくた屋の主バラトフが、例の邸宅で協議することが記されていた。それからそこへの侵入手口も。それを読んだフィオドラは、何かを決意したように頷いた。


わざわざこの時間を選んで手紙を届けたのは、フィオドラに1人で来させるためだろう。そうすれば必ず俺達もやって来る。そして、その見立ては間違っていない。あの女が考えたのか…それともウォーダンが考えたのか…それは分からないが、上手いことやりやがるぜ。


そのうちフィオドラは例の邸宅へ向かうはずだ。俺達が動くのはそれからでいい。既に万全の準備を整えてあるからな…あとはその時が来るのを待つだけだ。


フィオドラはいつものように夕食をとると、レメキの御神体に短い祈りを捧げた。それから慈しむように御神体を撫で、覚悟を決めたような真剣な顔で家を後にした。もちろん、ネコたんが跡をつける。


さてと…俺達も動きますかね。コテージを出た俺達に呼応するように、フリゼルとサラビアが『フォルノノンノ』の2階の窓から飛び降りてきた。そこまでしなくてもいいと思うが、その意気やよしだ。


「フィオドラは既にヤツらの拠点に向かっているぞ」

俺は簡潔に事実を伝え、2人はこくりと頷いた。なぜそんなことが分かるのか…それを聞いてきたりはしない。それで十分なんだ。ありがたいことだぜ。


こういう時は家々を飛び越え、一直線に現場に向かうもの。俺達もそのようにして例の邸宅へ向かい、フィオドラよりも先に到着した。ヤツらに気付かれないように少し離れた所から邸宅の様子を窺うと、昼間は門前にゴロツキが立っていたが、今は誰もいなかった。


ネコたんの位置から、フィオドラがどこにいるのかは手に取るように分かる。どうやら少し待つことになりそうだ。そうなると、最後の詰めが話題に上ってくる。


「フィオドラは…どうするつもりですか?」

やはりそれが気になるのだろう…サラビアが遠慮がちに聞いてきた。


「既に手は打ってある」

俺は自信満々に嘘をついた。実際には何の手も打っていないが、ここはそう言う以外にない。まさかそれが嘘だとは思わなかったようで、サラビアはすんなりと納得してくれた。


そんな話をしながら、俺はずっとここを張っていたネコたん2号の回収もしていた。今は壁の一部になっているので、壁にもたれ掛かっているうちに黒雷と合体させる。それから、黒雷に少し細工をしてやった。今晩もばっちり決めてやるぜ。


そうこうしているうちに、フィオドラがやって来た。その意識は邸宅に向けられているが、周囲を十分に警戒している。さすがだな…これではサクリファスの時と同じようにはできそうにない。淡い期待はあっさりと打ち砕かれてしまった。


だが、ここからどうするのか?それは難問のように思える。邸宅は高い塀で囲まれ、門は固く閉ざされている…普通に考えれば、侵入はかなり難しいはずだ。


それを簡単にしてくれるのがウォーダンだ。フィオドラが邸宅に近付くと、まるで迎え入れるように門はひとりでに開いた。ウォーダンは条件を満たせば発動する解錠と静寂の魔法をかけていたのだ。裏切り者のようなもんだな。


このタイミングで、ユリーシャはネコたんを動かした。その姿を黒猫から周囲の影へと変えたネコたんが、フィオドラの影となったのだ。ウォーダンのかけた静寂の魔法のおかげで、フィオドラもそれには気付かなかった。


いつのまにかアモルファスが足元にいること以外は、フィオドラにもこうなることが分かっていた。あの手紙に書かれていた通りだ。俺達にとっては余計なことだが、フィオドラにとってはありがたいことだろう。


だが、この先は何が起こるか分からない。フィオドラは用心に用心を重ねながら、影から影へと動いていく。それに合わせてアモルファスも動いていく。その動き方は完璧で、誰も違和感を覚えないだろう。頭を悩ましていた難問が、こんな形で解決するとはね…ユリーシャ様様である。


「行くぞ」

不可視の錫杖でその様子を見ているのは、ユリーシャだけではない。俺も見ている。思わず見入ってしまうが、傍観する訳にはいかない。アマユキを先頭に、俺達もフィオドラを追って中に入ることにした。


どうやらナイトンとバラトフは、おしゃれで粋な裏庭を眺めながら寛いでいるようだ。すぐ近くにフィオドラがいることに、2人はまだ気付いていない。酒も入って少し気が緩んだのだろう…これまでのことだけでなく、これからのことも自慢気に語り始めた。

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