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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第6章 ロスマリヌスの不義

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闇の中の本願

「裏の仕事は順風満帆。カネがカネを生んで、堪えられないねぇ」

余程儲かっているのか…バラトフは下卑た笑いを浮かべた。


「兄貴が書付をすり取る仕事を見つけてきて、それを俺のところがする。紙切れ一枚がとてつもないカネになるなんて…フッ、フハハハハハ!笑いが止まらねえや」

高らかに笑うバラトフは、悪役に相応しいと言っても過言ではない。今は得意になっておけ…どうせお前達の命運は今日尽きる。


「そうは言うがな、バラトフ。書付を盗む仕事を見つけてくるのも大変なんだぞ。幸い私はあちこちに顔が効くから不自由はしないがね」

ナイトンの日頃のあれやこれやがなければ、この構想は成り立たない。それが分かっているから、ナイトンも少しばかり得意げだ。


「これからもお前のその腕を活かして、頼むぞ…バラトフ」

一転して真剣極まる表情で、ナイトンはバラトフに依頼した。


「ああ…任しとけ」

ナイトンが何を考えているのかは分からないが、それを察したバラトフも真面目な顔つきで答えた。


「私とお前が実の兄弟だなんて世間の人が知ったら、誰もがあっと驚くだろうねぇ…」

秘密を知る当事者としては、愉快でたまらないのだろう…ナイトンはうっすらと笑みを浮かべた。


「兄貴は本妻の子、俺は妾の子だけどな」

兄弟の関係を語るバラトフは、どことなく複雑な心境を抱えているように見える。


「僻んでいるのかい?」

「いや…結果的にはよかったさ。兄貴の本願を達成するためにはな」

ナイトンは何らかの目的を持って悪事を働いているようだ。それが何なのか?気になるところだな。


「お前とは一生縁が切れないね」

ナイトンとバラトフは、こみ上げてくる思いを抑えるようにくくくと笑った。


「そいつは腐れ縁っていうヤツだ」

ここでフィオドラが吐き捨てるように言い放ち、物陰から姿を現した。ナイトンの本願とは何か?それを明かすために、こいつらの会話をもう少し聞きたいところだったが…フィオドラはそうは思わなかったようだ。


「フィオドラ…なぜここに…」

まさか自分達の会話を聞かれているとは思わなかったのだろう…ナイトンはそれ以上の言葉が出てこないようだ。今になって、ようやくフィオドラがそこにいることに気が付いたバラトフは、驚きを隠せないでいる。


「会長、アコギにも程があるでしょう…どうしてレメキから、米切手をすらせたんですか!」

フィオドラは強い口調でナイトンを問い詰めた。ナイトンもバラトフも、これまでの緩んだ雰囲気から一転して、緊張感のある面持ちで立ち上がった。


「お前も知っている譲渡証書さ…アレがちょいとした手違いから、レメキの手に渡ってしまった。あいつにシウテクトリ商会のブロメルのことを聞かれた時には、肝を冷やしたよ」

その時のことを思い出しているのだろう…ナイトンは苦笑を浮かべた。


「ヤツはシウテクトリ商会に土地が譲渡されていることを知ってしまった。それだけでなく、それを軍の魔法戦士に届け出ようとしていた。そんなことをされれば私は一巻の終わり…何としても証書を取り戻さねばならなかった」

ナイトンは強い口調で言い切った。


シウテクトリ商会は名ばかりの幽霊商会。それが明るみになることは、ナイトンの身を滅ぼすことを意味する。誰がどう見たって終わりだ。ナイトンがレメキから米切手をすらせた理由はよく分かる。


「この件がなくても、レメキはいつか私が幽霊分限者だと見抜くだろう。まだ、それを知られる訳にはいかなかった。いずれはレメキにも…そう思っていたが、そうもいかなくなったのでな…そこでヤツから米切手をすることにしたのだ」

ナイトンには複雑な感情が見え隠れしている。


どうもナイトンはレメキを仲間に引き込むつもりだったようだ。それだけレメキのことを買っていたのだろう。結果的には上手くいかなかったが…。レメキの人となりを考えると、それは自明の理のようにも思える。それでもナイトンは諦めきれなかったのだろう。


「それにしても…自害するとはな。しかもあのようなやり方で…迷惑なことだよ」

ナイトンは不快感をあらわにした。


自ら命を絶つにしてもやり方を考えろ!そう言わんばかりのナイトンに、俺は激しい憤りを感じてしまう。だが、焼身自殺でなければ、レメキがもっと目立たない方法で命を絶っていたら…その後の展開はまったく違うものになっていた可能性が高い。俺達が関わることも、なかったかもしれない。立場の違いってヤツだ。


「おおい、野郎共!」

これ以上、話をする必要はない。そう判断したのだろう…バラトフが一声掛けると、ゴロツキに腕利きの用心棒が、邸宅の中から続々と出てきた。ここまでだな。


「この…人でなし!」

もはや逃げることなどできそうにない。もとより逃げるつもりなどないフィオドラは、短剣を抜きつつ激しくなじった。


「ついでに教えてやるよ…見習いの野郎も目障りなんで始末した」

優位に立つ状況からくる余裕だろう…バラトフはぞんざいに言い放った。


「証書を持っているはずだ…取り戻しなさい」

一方のナイトンは、育ちの違いを感じさせる丁寧な口調で命じた。


それを合図にゴロツキ共は下卑た笑みを浮かべながら小剣を抜き放ち、フィオドラに襲い掛かってきた。フィオドラはそれを短剣で受け流す。一見すると上手く捌いているが、そうではない。ゴロツキ共はフィオドラを嬲り殺すつもりだ。今は見ているだけだが、いずれ腕利きの用心棒達も加勢してくるだろう…そう長くはもたないぞ。


「ユリーシャ!」

フィオドラを保護しろ!それは皆まで言わずとも伝わった。


影となり潜んでいたアモルファスが、足下から噴出するように姿を現し、フィオドラを包み込んだ。それから一瞬の光と共にその姿を巨大ネコたんに変えたアモルファスは、フィオドラと共に裏庭から逃げ出した。


この展開は予想していなかったのだろう…ナイトンをはじめとした悪党共は、あっ!という声が聞こえてきそうな驚きの表情を浮かべていやがる。いいね、その表情…最高だぜ。

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