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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第6章 ロスマリヌスの不義

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切られた切り札

俺達が朝の会合を終えてコテージで寛いでいた頃、フィオドラはラデガスト商会を訪ねていた。もちろん、ネコたんが跡をつけている。それだけでなく、ネコたん2号も同行している。事前に面会の約束を取り付けてはいなかったが、それでもナイトンはフィオドラに会ってくれるようだ。


ここにはウォーダンがいるはずだ。商会の内情を探るのはリスクがあるが、不可視の錫杖をフィオドラの側から離さないようにすれば大丈夫だろう…そう判断して、俺達はこの会談をひそかに覗かせてもらうことにした。


「よく来てくれたね、フィオドラさん。あれからどうしているのかと…心配してたんだよ」

内心はどうあれ、ナイトンはフィオドラが自身のもとを訪ねてきてくれたことを、嬉しく思っているように見える。


「今日は、会長に見てもらいたい物があります」

どうやらフィオドラは切り札を切るつもりのようだ。それは例の書付だろう。それを見たナイトンがどんな反応を示すのか…要注目だな。


「私に?何だろう…気になるね」

ナイトンもそれを予想しているのかもしれないが、それでも余裕があるようにしか見えない。たいしたもんだね。


フィオドラがナイトンに差し出した物は書付だった。それに目を通したナイトンは、一瞬だが表情が強張ってしまうのを抑えることができなかった。


「シウテクトリ商会の…ブロメル。見も知らない人の書付だねぇ…」

決してそうではないはずだが、この場ではそう言う以外にないだろう。


「それが、レメキの遺品の中から出てきまして。もしかして、会長のお探しの物ではないかと思ったんです」

この書付が何を意味するのか?それはフィオドラも分かっている。もちろん、それをおくびにも出さない。


「冗談じゃない。私はシウテクトリ商会のブロメルなんて人は知らないよ。私が探しているのはねぇ…売掛の書付なんだよ」

ナイトンのヤツめ…上手いことやりやがるぜ。今日のところはフィオドラがそれを持っている。それが分かれば十分なんだ。


「それじゃあ、これは…何の関りもないと」

フィオドラはシウテクトリ商会に関わる真実を知っている。それでもここはがっかりして見せた。


「もちろんさ。どうしてレメキがそんなものを持っていたのか…不思議なこともあるもんだねぇ…」

それは俺達も知りたいところだ。それはともかく、ナイトンとしてはここは知らんぷりする以外にない。


「分かりました…それじゃあこれは、私の方で始末いたします」

それを受けたフィオドラの見解は、理に適っている。とは言え、ナイトンがそれを放っておくとは思えない。


「よろしく頼むよ。それじゃあ、私は立て込んでいるからこれで…」

ナイトンは書付の件をフィオドラに任せ、応接室を立ち去った。


面会を済ませたフィオドラも、ラデガスト商会を後にした。十分な距離を取って、ネコたんが跡を追う。ネコたん2号はラデガスト商会で待機だ。この面会を受けてナイトンは必ず動くはず…そう読んでの待機だが、その読みは間違っていなかった。


いかにも…という感じの人相の悪い男が、裏口から出てきたのだ。それとなく周囲を警戒する様、隙のない歩き方…こいつはおそらく用心棒だろう。俺はネコたん2号に跡をつけさせることにした。


用心棒らしき男は、がらくた屋の裏手にある邸宅へ向かった。がらくた屋には、お休みのお知らせ札が掛けられている。昨晩のことがあるので、がらくた屋の主をはじめとした黒翼の連中は、邸宅で息を潜めていた。


そこへやって来た用心棒らしき男を、門前で暇を持て余していた下っ端のゴロツキが奥へ通した。それで用が済んだゴロツキは、再び門前へ戻ってきた。


廊下の掃き掃除をしていたアミティエも、ただならぬ雰囲気を察したようだ。ここが動きどころと判断したアミティエは、静寂の魔法をかけつつ忍び足でギリギリまで近付いた。


「なんだと!書付はフィオドラが持っていやがったのか?」

がらくた屋の主…黒翼のボスが驚くのは無理もない。フィオドラが持っているという見立てであれだけ家捜しをしたのに、見つからなかったんだからな…。


「へい…それでフィオドラは、ラデガストの会長を揺さぶりに来たらしいんっすよ」

話が話だけに、用心棒らしき男も興奮している様を隠せないようだ。声が上擦っている。


「まずいわね…どうします?」

昨晩の家捜しの失敗と、それを受けての今朝の暴露。女スリが焦るのもよく分かる。


「ガタつくんじゃねぇ…」

動揺する黒翼の連中を、ボスは凄みを利かせた声で収めた。


「フィオドラが持ってることが分かればそれでいい。近いうちに、あの小娘にでもすり取らせるさ…」

ボスはアミティエの腕を評価している。それが失敗しても、実力行使の二段構えでいくつもりだろう…敵ながら天晴れですな。


「しかし、会長は…フィオドラは始末した方がいいと言っていますが」

用心棒らしき男が、ナイトンの指示を伝えた。秘密を知った者は消す…ナイトンの指示は理に適っている。


「始末だと…」

その言葉を聞いた黒翼のボスは、不快感を隠そうとせずに舌打ちをした。


「兄貴のヤツ、汚ねえ仕事はみんな俺に押し付けやがる」

その気持ちは分からんでもないが、そんなことよりボスは聞き捨てならないことを言いやがった。兄貴って…ナイトンと黒翼のボスは、実の兄弟なのか?


「いいじゃありませんか…兄弟なんですから」

女スリは黒翼のボスを宥めるつもりだったのだろう…だが、これで間違いない。ナイトンと黒翼のボスは、実の兄弟だ。


「丁度いい。今晩の会合で文句を言ってやる」

黒翼のボスは、ケラケラと笑いながら言い放った。


どうやら今日の夜に会合が開かれるようだ。おそらく定期的に開かれているのだろう…どこでやるのかは分からないが、ラデガスト商会の会長であるナイトンとがらくた屋の主が、おいそれと会えるとは思えない。


それにその会合では誰から書付をするのか…などの話し合いをしていたはずだ。おおっぴらにできるような話じゃあない。それを踏まえると、会合が開かれるのはこの邸宅である可能性が高い。


そういう目で見ると、この邸宅はナイトンが訪れたとしても特におかしくはない。俺達がここを観察するようになってから、ナイトンがここを訪れたことはなかった。俺の読み通りになれば、今晩は山場になるだろう…。


十分すぎる情報を得たアミティエは、この場を後にした。百戦錬磨の黒翼の連中でさえ、それには誰も気付かなかった。

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