リューズの過去、そして未来へ
リューズは慣れ親しんだ雪道を歩く。
指定された位置の樹林の中に辿り着けば、地面に小さな足跡がいくつもついていることに気がついた。子どもの足跡だ。きっと樹林の中で元気に遊んでいたのだろう。
その様子を想像して、ふっとリューズの表情が和らぐ。
母国に戻り、雪の上に作られた子どもたちの足跡を見る。それによって息子の死を思い出してこの心は荒れるかと思いきや、この静謐な銀世界の中にいるせいか、激情が荒れ狂うことはなかった。ただ静かに、息子との記憶が思い起こされる。
己の息子も、雪の中を元気に駆け回っていたな……と、リューズは息子と過ごした時間に思いを馳せた――。
◇◇◇
十年前――。
「父ちゃーん!」
こちらに向かって、一人の少年が駆け寄ってくる。まだ七歳になったばかりの子だ。リューズと同じ緑がかった黒髪をしている。息子のリュゼだ。
「おいおいリュゼ、そんなに急いだら転ぶぜ?」
「もう七歳なんだから転ばないよ! うわっ!」
「ほら、言わんこっちゃねぇ」
雪に足を取られて盛大に転んだ息子に駆け寄る。
助け起こして体中についた雪を払ってやると、リュゼが背負っていた鞄から何かを取り出す。うさぎと鳥一羽ずつだった。
「父ちゃんはうさぎか鳥を狩ってこいって言ったけど、両方狩ってきたよ!」
「お! でかしたぞリュゼ! それでこそ父ちゃんの息子だ!」
「へへっ、父ちゃんにはいつも欲しいと思ったものは諦めるなって言われてるもんね!」
「おう、教えを守れて偉いぞ!」
リュゼは五年前に妻を病で亡くしてから男手一つで育ててきた大切な息子だ。そんな息子が健気に己の教えを守っているとあれば嬉しくないわけがない。
リューズはわしゃわしゃとリュゼの頭を撫でた。
すると、人が近づいてくる気配がした。
「お前はまだそんな教えをしているのですか、リューズ?」
「ロイドか」
気配のする方を見遣ると、鼠色の長髪をしたロイドがそこにいた。
ロイドが眼鏡を指でくいっと押し上げる。
「そんな教えをしていたらリュゼが強欲に育ってしまいます」
「もちろん人に迷惑はかけるなって言ってるから問題ねぇよ」
「そういう問題では……」
「それに、大切なもんを手に入れることと、それを守ることを俺ぁ悪いことだとは思わねぇぜ」
「……そうですか」
ロイドが踵を返して歩き出す。
「……何を言っても、無駄なようですね」
そう呟きを残して去っていった。
リュゼがリューズの服の裾を掴む。
「ロイドさん、どうしたの……?」
「あー、なんか嫌なことでもあったんだろ。リュゼが気にすることはねぇよ」
ここ数か月でリューズとロイドの間には距離が生まれていた。前はもっと仲の良い友人同士だったのだが、最近ではぎくしゃくした関係が続いている。だが、いつかはまた仲良く酒を酌み交わす日が来るだろうと信じて疑っていなかった。
リューズは深く気にすることはせず、安心させるようにリュゼの頭を撫でた。
その日の夜。いつものようにリューズはリュゼと二人で夕食を取っていた。
「ねぇ父ちゃん」
「なんだ?」
「今日ね、ロイドさんとこんな話をしたんだ」
「ロイドと話したのか。どんな話だ?」
「大切な人が二人捕まって、どちらかしか助けられないとしたら、どうやって助ける人を決めるかって話」
その内容を聞いて、リューズは苦笑いを浮かべる。
「随分重い話してんなぁ……。で、お前ぇさんは何て答えたんだ?」
「わかんないって言った。父ちゃんならどうする?」
その問い掛けの答えを、リューズは一つしか持ち合わせていなかった。自身の胸を叩いて答える。
「もちろん、〝どっちも助ける〟だ」
「どっちかしか助けられないんだよ?」
「それでもだ。最後まで、何が何でも大切なものを手放さない方法を考えるんだ。絶対に諦めちゃいけねぇんだぜ」
「絶対に……諦めない……」
「あぁ、そうだ。いいかリュゼ」
リューズはリュゼにいつものように語りかけた。
「欲しいと思ったもんは、何がなんでも手に入れろ。もちろんそれは人様に迷惑をかけないものに限るがな」
「物を盗んだりとかはだめなんだよね?」
「あぁそうだ。人様に迷惑をかけないもの。例えば、大切な人との平穏な日々みたいなもんだ」
「じゃあ父ちゃんとの日々だね!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか! まぁそうだな!」
リューズはリュゼの頭をくしゃくしゃと撫でて続ける。
「手に入れたもの、手に入りそうなもの、俺にはもったいねぇとか、そんな資格ねぇとか言って切り捨てるな。己の全ての力を使って掴み取れ。そして手に入れたら絶対に手放すな。守り通すんだ。最後まで諦めちゃいけねぇ。いいな?」
「うん!」
「よし! いい子だ!」
「わっ! 父ちゃん撫で方痛いよ!」
リュゼの頭を撫でながら、リューズは決意を固める。この愛する息子を守り抜こうと。
この決意は、妻を失い男手一つでリュゼを育てていくと決めてから毎日続けていることだ。
リューズにとって、何よりも大切な息子。リュゼへの教えは、己への戒めでもある。
(必ず、何があってもこの子を守る)
今日もいつものように己に言い聞かせて、愛する息子と共にその日を終えた。
次の日、リューズがリュゼと雪で遊んでいる時だった。一人の人間が近づいてくる気配。
「ロイドか」
「おはようロイドさん!」
「おはようございます、リューズ、リュゼ」
歩み寄ってきたロイドがそのままリュゼを見遣る。見つめるその瞳に、リューズは胸騒ぎを覚えた。
「リュゼ、昨日の問いの答えは出ましたか?」
「うん!」
二人のやり取りを見て、リューズは違和感を感じ取る。
(そもそも、どうしてロイドはリュゼにこんな問い掛けをした……?)
その理由を問いただすよりも、リュゼが無邪気に答える方が早かった。
「ぼくはどっちも助けることを諦めないよ! 大切な人ならどっちも助けてみせるんだ!」
握りこぶしを作って答えたリュゼ。その姿を見て、ロイドは目を細めた。威圧感を孕んだその瞳に、リューズは咄嗟にリュゼを自身の後ろに隠した。
「……ロイド、お前ぇさん、一体何を考えてる……?」
その問い掛けに、ロイドは瞳の威圧感を消した。眼鏡を指でくいっと上げて、いつものすまし顔に戻る。
「いえ、別に。では俺はこれで」
「あぁ……」
踵を返してロイドは歩き去っていく。姿が見えなくなるまで、リューズはリュゼを隠したままでいた。
「……ぼく、何か悪いこと言っちゃったのかな……」
俯いてそう呟くリュゼ。幼いリュゼなりに、ロイドの威圧感を感じ取ったのだろう。リューズは屈んでリュゼと目線を合わせると、安心させるように微笑みかけた。
「リュゼは何も悪いことなんてしてねぇよ。これは、父ちゃんとロイドの問題だ」
「早く仲直りしてね……」
「あぁ、心配すんな。すぐ前みたいに一緒に酒を飲むようになるさ」
そう言うと、リュゼは安心したように笑んだ。リュゼの頭を撫でて、先に家に帰っているように言ったリューズはロイドの家に向かった。早くリュゼの不安を払拭してやりたかった。ならば善は急げだ。
ロイドの家の前に辿り着くと、リューズは柄にもなく緊張していた。緊張するような仲ではないというのに、最近のロイドの様子に不安が拭えない。
少しだけ震える手で玄関の扉をノックする。
「ロイド、いるか。リューズだ」
呼び掛けると、すぐに扉の向こうに気配が。扉がゆっくりと開かれる。普段通りのロイドがそこにいた。
「何か御用ですか?」
「ちょっと話がしてぇんだ。入ってもいいか?」
「えぇ、どうぞ。俺もお前と話がしたかったので」
促され、中に入る。
居間に通され、暖炉の前に置かれた二つの椅子に向かい合って座った。
少しの沈黙の後、リューズは話の口火を切った。
「なぁ、お前ぇさん、最近変じゃねぇか?」
「そうでしょうか」
「あぁ。リュゼにあんな問いをしたり、俺の教えをやけに否定すんじゃねぇか。前はそんなことなかったろ?」
「別に。今まで言わなかっただけです」
「ならなんで急に言い出した? 俺と距離を置くようになった? 教えてくれ、ロイド」
問い詰めると、ロイドは立ち上がって鷹揚に暖炉に歩み寄った。後ろで手を組み、じっと、暖炉の炎を見つめている。
ロイドが落ち着いた声音で話始めた。
「リューズ、お前はこの国をどう思いますか?」
「どうって……」
リューズは質問の意味がわからず口籠る。ロイドはリューズのその様子を気にした風もなく続けた。
「他国よりも犯罪や抗争が多いのは何故だと思いますか?」
「……」
確かに、マモンディーノ王国は七つの国の中で最も犯罪や抗争が多い国だと言われている。しかし突出しているというわけでもなく、話題にする必要性をリューズは感じなかった。故に、ロイドの心慮を探るために言葉の続きを待つ。
ロイドは炎から視線を外さずに続ける。
「それは、この国の人間が強欲だからです」
「強欲?」
「えぇ。自己中心的な考え。己の欲を抑える自制心のなさ。……神人族は特に顕著だ」
「……それは、俺にも当てはまるって言いてぇのか」
漸くロイドが炎から視線を外す。炎からリューズに向けられた視線は鋭いものだった。
リューズは無意識に手に力を入れて拳を作る。
「二択を迫られ、それを無視してどちらも掴み取る。……そんなことができると本当に思っているのですか?」
そう問いかけられ、リューズは立ち上がる。
「確かに、全てを手に入れ、守り抜くことは難しいことだ。でも大切なもんなら絶対に諦めねぇ。その考え方を俺ぁ悪いことだとは一切思わねぇよ」
「それが強欲だと言っているのです。欲したものを全て手に入れるなど、強欲の最たるものだ」
「ならお前ぇさんは大切な人との日々を切り捨てられるって言うのか!? ……少なくとも俺にはできねぇ。妻を失ってから、リュゼは必ず守り抜くと誓った。そしてリュゼとの平穏な日々には、今まで関わってきた連中も、生まれ育ったこの国も必要不可欠だ。……もしもリュゼとこの国が天秤にかけられたとしたら、俺ぁリュゼとの平穏な日々のためにどちらも選択する」
リューズの言葉を聞いたロイドは、リューズから視線を外して眼鏡を指で押し上げる。
「本当に、どこまでも強欲ですね。大切なものには順序付けが必要で、守るには他を切り捨てる必要がある。それがわからないから、この国の者たちはマキャベリストで溢れかえっているのですよ」
「……まぁ確かに、目的のために手段を選ばず、他人に迷惑をかけることはあっちゃならねぇとは思うがな」
「しかしお前だって、リュゼとの平穏な日々のためには手段を選ばないでしょう?」
「……」
リューズは咄嗟に否定することができなかった。リュゼとの幸せな日々のために、自分がどこまでできるのかがわからなかったから。
ロイドは暖炉の炎に視線を戻した。
「俺は変えたい。この国の現状を。強欲に塗れた人間が蔓延るこの世界を」
「世界を……変える……?」
世界という規模の大きな話に、リューズは面食らう。
ロイドが再びリューズを見遣った。
「リューズ、お前も俺と共に世界を変えたくはありませんか?」
「……俺ぁ、お前ぇさんの言っている意味がわからねぇ。それに、お前ぇさんの考え方に同調もできねぇよ」
「……そうですか。何を言っても無駄だったようですね」
溜め息をついたロイドはリューズから視線を外すと、居間を出る扉へと向かった。
「何れ、俺の言った言葉の意味がわかる日が来ます。そろそろお引き取りを」
「……わかった。また話そうぜ」
リューズは居間から出て玄関へと向かった。ロイドが玄関の扉を開け、促されるままに外へ出る。すると、扉が閉められる直前に耳が小さな声を拾った。
「また、話す機会が来るといいですね」
その言葉に振り返った時には、扉は完全に閉まっていた。
帰ってからはリュゼの前で何事もなかったかのように振る舞い、そして迎えた夜。隣で眠るリュゼの背を撫でながら、ロイドの言葉の意味を考えていた。
――俺は変えたい。この国の現状を。強欲に塗れた人間が蔓延るこの世界を。
――また、話す機会が来るといいですね。
(一体、何を考えているんだ……ロイド…… )
いくら考えても、友の気持ちを理解することはできなかった。
……そして次の日。とうとうこの日はやって来た。
用があって出掛けていたリューズは家に向かって全力で走る。周囲の雪が一切合切溶けてしまうほどの大きな炎が立ち上る町の中を。
(リュゼ……どうか無事でいてくれ……!)
突如始まった人間族たちの襲撃。本当に突然、神人族だけを標的に人間族たちが殺戮を始めたのだ。
最初は一人の人間族の男が殺人という罪を犯したのかと思った。しかし、その周辺にいた他の人間族たちの瞳がその一人と同じであることに気づいてしまった。そして同時に響いた周囲からの悲鳴。
リューズの頭にはリュゼの安否だけが過った。
身体強化を施して町を駆ける。その道中で顔見知りが殺される光景を見た。助けたかった。けれど体はリュゼの元へと向かう。
みんなを助けたい。止まらなくては。止まってはいけない。早くリュゼの元へ。
悲鳴を聞きながら、ただ家に向かって走り続けて、漸く家が見えてきた。玄関から不安げに顔をのぞかせているリュゼの姿が見える。
「リュゼ!」
「父ちゃん!」
リューズの姿を見つけたリュゼが家から出てくる。
互いに駆け寄って、もう少しでこの手が届く――。
ドバンッ!
一発の銃声の後、ピュンッと風切り音が聞こえた。
それを認識した瞬間、目の前でリュゼの頭から血が迸り、体が前に傾いていった。
「リュゼッ!!」
リュゼを助け起こしたが、目に飛び込んできたリュゼの瞳は空虚なもので、息はもうしていなかった。即死だった。
現実を受け入れられず、呆然とその場に座り込んだまま動けない。
誰かの足音が聞こえてきて、呆然としたままそちらを見た。
「お前は本当に口だけですね、リューズ」
「……ロイド……?」
横に立っていたのはライフルを抱えたロイドだった。すまし顔のロイドからライフルに視線を転じて、漸く脳は認識した。この男が、リュゼを殺したのだと。
「……なんで、リュゼを殺したんだ……っ、なぜっ!!」
リューズの叫びを意に介さず、ロイドは眼鏡をくいっと指で押し上げると言った。
「これでお前もわかったでしょう」
「なに……?」
「お前はここに辿り着くまでの間に、どれだけの人間を見殺しにしてきたんですか?」
「は……」
「昨日、全てを守ると言っておきながら、お前はたくさんの人間を見殺しにした。挙句、最愛のリュゼすら守れなかった」
「それ……は……」
「お前はちゃんと大切なものに順序を付けた。しかし、俺は見ていましたよ。お前がここに来る途中、人が死ぬ度に何度もその足を止めかけたところを。そんな迷いなど捨てて、リュゼのためだけに走っていればリュゼは助かったというのに」
「……」
「お前は迷いながら順序付けをし、そして中途半端な思いを抱えた結果最も大切なものまで失った。これで俺の言ったことが正しかったと証明され、お前が口だけだというのがわかったわけです」
リューズはロイドの言葉の意味を飲み込んで、息が詰まった。何も言い返せなかった。その通りだと、思ってしまった。
体の感覚が少しずつ失われていく。指先すらも動かせなかった。
「……本当に、どうしようもない男ですよ、お前は」
ロイドのその言葉を耳が拾ったのを最後に、リューズの感覚は失われた。
それからどれだけの時間が経ったのか。感覚が戻ってきた時には、傷だらけでリュゼの亡骸を抱えたまま町を出ていた。どうやって町を出たのか覚えていない。ただ、自分が血濡れていて、リュゼが冷たくなっていることには気がついた。
気がついて、リューズは膝から崩れ落ちた。
「ぐっ……う……っ……」
感覚が戻ってきたせいか涙が滂沱と溢れ出した。もう立ち上がる気力もない。
傷だらけのまま冷たいリュゼを抱えながら、長い長い時間独りで泣き続けた。
◇◇◇
「……大切なものには順序付けが必要……本当にそうなのか……?」
樹林の中、一人で立ち尽くしたままリューズはぽつりと零した。
「おや、お悩みかい?」
「ッ! ガルダさんかよ。驚かさないでくれよな」
ガルダの声にリューズは肩を跳ねさせ、振り返って誤魔化すように笑った。
その表情を見て、ガルダは腰に手を当てて真剣な面持ちになる。
「ヘタクソな笑い方だ。本来のアンタはそんな笑い方をする奴じゃないんだろう? 一体何にお悩みなんだい」
問い掛けられ、リューズは笑みを消した。俯いてから吐露する。
「十年前、息子を殺した奴に言われたんだ。望むもの全てを手に入れることは強欲で、守るべきものには順序付けが必要だってな。実際、順序付けができなかった俺は大切なもの全てを失った」
「だから、ソイツの言っていることは正しかったんじゃないかと思ったわけかい。馬鹿だねぇ」
「……馬鹿だと思うか」
「あぁ、アンタは馬鹿だ。アンタには自分の信念はなかったのかい?」
「……」
信念。ある。手に入れたいものは手に入れる。手に入れたものは守り抜く。絶対に諦めてはならない、と。
だが、今ではその信念が正しいのかがわからない。
握り拳を作って俯くリューズの耳が溜め息を拾った。
「自分の信念を貫けない奴が強くなれるわけがないだろう」
「っ」
はっとして、顔を上げる。ガルダは厳しい目をしていた。その視線に射竦められる。
「アンタの欲しいもんはちんけなもんじゃないんだろう? それを掴み取ろうとして何が悪い。大切なもんを全て守りたいと思って何が悪い。……アンタが今手に入れたいもんは、守りたいもんは一体なんだ」
「……俺が手に入れたいのは、ユリィたちとの……アイツらとの平穏な日々だ。俺の守りたいもんは……アイツらだ」
「ならアンタはアイツらに順序付けができんのかい」
「それはできねぇ。アイツらには……誰一人欠けてほしくねぇ」
「そう思うのなら、アンタに足りないのは一つだけだな」
そう言い残してガルダは踵を返した。去っていくガルダの後ろ姿をリューズは静かに見送る。
「……俺に……足りないもの……」
一体何が足りないというのか。いいや、そんなことより。
思い出した。己は一体何のためにユリクスたちの旅についてきたのかを。
守りたかったんじゃないのか。仲間たちを。新たにできた大切なものを今度こそ。
そして、息子に顔向けできない生き方をもうしたくないんじゃなかったのか。
どんなに悩んだって、己は己の信念を間違いだとは思えない。仲間たちに順序を付けることが正しいとは一切思わない。胸を張って言い聞かせてきた息子への教えを間違いだったなんて思いたくない。
そうだ、ならば、証明するんだ。今度こそ。
守り抜くんだ。今度こそ。
もう二度と失わない。そうアクアトラスで誓ったんだ。
失いたくないから、守り抜くことを絶対に諦めない。必ず守り抜いてみせる。仲間たちとの平穏な日々を掴み取ってみせる……!
今の自分に足りなかったのは、大切な仲間と信念を今度こそ守り抜くという覚悟だ!
リューズは望みを掴み取り、大切なものと信念を今度こそ守り抜くという〝覚悟〟を魔力に変えた。
辺りを膨大な魔力が立ち込める。
「強欲、上等じゃねぇか!」
――順序付けなんてくそくらえ。何一つだって諦めない!
「今度こそ、守り抜いてみせる……!」
リューズの望みを何一つとして諦めないその覚悟に、シトリンの神核は光を灯した。
お読みいただきありがとうございます。
「マキャベリスト」にはいくつか意味がありますが、今回は「目的のためなら手段を選ばない人」という意味で使っています。




