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魔獣進行

 合流地点では既に、ライト、リアナ、リューズ、ゲオルグの四人が集っていた。四人共特に何の異変とも遭遇していない。魔獣がいないこと以外は。


 皆体力が常人離れしているため、山登りもちょっとした散歩になり気分がのびのびとしただけだった。


 ただ、ゲオルグだけは魔獣がいないことに強いきな臭さを感じているのだが。


 ゲオルグを除く三人は、いい散歩だった! と感想を述べた後、未だ帰ってきていない二人と一匹を思う。


「ユリィたちが最後とはなぁ」

「そうね。一番最初に戻ってそうだったけど」

「何かあったんスかね……」

「まだ時間になったばかりよ。きっとすぐ来るわ」


 ユリクスたちが戻っていないことを心配そうに話す三人。その会話を余所(よそ)に聞き、ゲオルグは山道の上を見上げていた。その視線は険しい。


(この胸騒ぎ……何かあったのか、ユリクス……)


 胸の奥がざわつき、全身の肌がぴりつく。すぐにでも何かが起こるような、そんな気がしてくる。そして、ゲオルグの直感は当たった。




 ゴゴゴゴゴゴゴ……




 大地が小刻みに揺れる。


「なんスか!?」

「地震!?」


 突然の揺れに戸惑うライトたち。


「ユリィたちも心配だが、こりゃあ一旦アクアトラスに戻った方がいいのか?」


 ユリクスの強さを信頼して、まずはアクアトラスの守護を優先した方がいいのではないかとリューズが提案する。しかしゲオルグは首を横に振った。


「いや、状況がわからないまま戻っても仕方ねぇ。ユリクスたちの到着を待つぞ」

「了解っス!」


 原因不明の揺れに対する不安を押し殺してユリクスたちの到着を待つ。その間にも少しずつ揺れが大きくなってきているように感じられた。


「……来たな」


 ゲオルグがユリクスの気配を感知する。同時に近づく風の音。


 ビュォォォ!


 強い風が四人の前を通り過ぎ、ゲオルグたちが腕で顔を覆う。風が収まると、ユリクスとメラに乗ったティア、そしてイヴァンが合流地点に辿り着いていた。


「あれ!? イヴの(あん)ちゃんだ!」

「貴様! 誰が(あん)ちゃんだ!」


 ライトの呼び方にイヴァンがツッコむ。その(はた)から見たら親しげな様子にリューズが首を傾げた。


「ライトの知り合いか?」

「もしかしてシーガラスで助けてもらったって言ってた人かしら?」

「そうっス! でもどうして……」

「……イヴァンに関する説明は後だ」

「ユリクス、何があった」


 ユリクスとゲオルグの切迫した声に、ライトたちも気を引き締めてユリクスの言葉を待つ。


「……何があったかは後で話す。今はこの揺れの原因、魔獣をどうにかするのが先だ」

「魔獣だと?」

「……あぁ。今、山の頂上あたりから魔獣の軍勢が下りてきている。このままではアクアトラスが潰されるぞ」


 同じ地点から一斉に下りてくる魔獣たち。その異常性にゲオルグは状況を当意即妙に察した。


「……なるほどな。解放者(リベレイター)がこの山と森の魔獣を操ってアクアトラスを襲わせようとしているってことか」

「……そういうことだ」


 二人の会話を聞いてライトたちは血の気が引いた。魔獣の巣穴でも精々二桁ほどの魔獣しか同時に相手にしたことはない。山中、森中の魔獣など一体何体いることか。


「ユリクス、操っている解放者(リベレイター)は?」


 全ての魔獣を相手にするより、操っている黒幕を相手にした方が早い可能性があると考えての質問だ。しかし。


「……既に行方を(くら)ませている。それに相手は〝神の六使徒(ディーオ・アポストロ)〟だ。奴を倒す時間はない」

「よりにもよって〝神の六使徒(ディーオ・アポストロ)〟か……。だが、それだけの強者(つわもの)なら大量の魔獣や龍種の魔獣を操れても納得だな」


 納得はできる。だが、それは必然的に全ての魔獣を相手にするほかないということでもある。一同は腹を括った。


「魔獣を相手にするなら一先(ひとま)ず森を抜けるぞ」

「……あぁ」


 全員で身体強化を施して森を駆けながら、話を再開する。


「ユリクス、感じ取れる魔獣の数はおよそ何体だ?」

「……およそ四万、といったところか」


 その数に一同は絶句した。山中森中の魔獣が集まっているのだから、それだけの数がいてもおかしくはない。だが実際に聞けば絶望感しかない。しかし、逃げるわけにもいかない。一度腹を括った以上、この中で撤退を考える者はいなかった。


 ゲオルグが嘆息する。


「まったく、俺が昔冒険者たちを集めて撃退した魔獣たちでも一万しかいなかったってのによ」

「そういえばライオーネで言ってたっスね」

「あの時の軍勢が可愛く思えるぜ。まぁ、俺もあの時より強くはなってるしな……一万は相手にできそうだ」

「寧ろ一万を相手にできるなんて、流石ギルド総長ね」

「他の冒険者たちにも討伐に参加してもらうのか?」


 ゲオルグはしばし考える素振りを見せると口を開いた。


「冒険者たちにはブレイクスルーされた魔獣を討伐してもらう方針でいきたい。相手も数が多いし、あまり大人数で向かって混戦になれば逆に危険だからな。そのために聞くが、ユリクス、お前は何体相手にできる?」

「……」


 ユリクスは顎に手を当てて考えた。そして一言。


「……全部?」

「「「……」」」

「…………あー、やめとけや。お前の方が化け物認定されかねねぇよ……」


 全員に「うわぁ……」という表情を向けられてユリクスは顔を顰めた。聞かれたから答えたのに。解せぬ。


 ゲオルグが咳払いして話を戻す。


「さっき言った通り、冒険者たちには俺たちを突破した魔獣の相手をしてもらうとして、ユリクスが二万、俺が一万、残りの一万をライト、イヴァン、リアナ、リューズで狩れ」

「む。俺とて一万くらい相手にできるぞ」

「イヴは怪我人だから無理しちゃいけない」

「こんな怪我なんでもない」

「あー、ボクたちだけじゃ心もとないんで、イヴの(あん)ちゃんに助けてもらいたいナー」

「ふんっ、そういうことなら仕方あるまい」


(((ちょろい)))


 思わず忍び笑いをする一同。


 討伐配分が決まり、後は迎撃場所である。


「それだけの数相手にするのに森の中じゃ戦いにくいったらないからな。場所は森を抜けた後の草原がいいだろう。魔獣の進行方向を確認しながら、できるだけ町から離れた場所で戦うぞ」


 森を抜け、馬車には乗らずに身体強化と風魔法を付与したまま疾風の如き速さで駆ける。ものの数分で関所までの距離を走破し、やっと一行は足を止めた。


 役人の男が急いで駆け寄ってくる。


「これは総長、そんなに急がれてどうなさいました?」

「緊急事態だ。悪いが検問に来た冒険者をここで止めておいてくれ。俺たちは急いでギルドに向かう」

「了解しました」


 ゲオルグの切迫した様子にただ事じゃないと察したのだろう。役人も表情を引き締めて(だく)とした。


 ゲオルグを先頭にギルドへ向かう。人の往来が激しいので小さくなったメラを抱きしめたティアをユリクスが抱え上げて走る。全員の瞬発力と反射神経は常人離れしているので、人にぶつからずともギルドに辿り着くことができた。


「カラルはいるか! 緊急事態だ! この場にいる冒険者たちも集まってくれ!」


 ギルド総長からの号令に周囲がざわつく。ざわつきながらも従わせてみせるのは流石ギルド総長の威厳と知名度といったところか。


 奥から出てきたカラルが歩み寄ってくる。


「どうしました総長? 調査で何かありましたか?」

「何かあったどころじゃねぇよ」


 支部長のカラルとこの場にいる冒険者たちに聞こえるよう、現在の状況を説明する。一時はパニックになるかと思いきや、冒険者たちはゲオルグたちから逃れた魔獣だけでいいという話に、戸惑いながらも混乱は避けられた。それだけ総長と〝ギルド総長の懐刀(ガーディアン)〟への信頼は厚いということだろう。


「そういうことなら、僕はできるだけ多くの冒険者たちに声を掛けて回ります」

「そうしてくれ。俺たちはここにいる冒険者たちを連れて先に草原へ向かう」

「わかりました。お気をつけて」


 ギルドを出て、民衆たちに状況を悟られないように注意しつつ冒険者たちを引き連れて草原へと移動する。関所にいた冒険者たちにも事情を説明し、納得させた。


「あの、総長」

「ん、なんだ?」


 草原へ移動したところで一人の冒険者がゲオルグに声を掛けた。その声音と表情から大きな不安を抱いていることがわかる。


「本当に大丈夫なんでしょうか……。それに、〝ギルド総長の懐刀(ガーディアン)〟の方が一人で二万だなんて……」


 四万という総数も、一人で二万を相手にするなどというのも前代未聞だ。不安になるのも仕方ないだろう。だが、ゲオルグはなんでもないように答える。


「問題ねぇよ。こいつらは揃って強ぇ。それに、こいつは龍王なんて呼ばれてる最強の〝ギルド総長の懐刀(ガーディアン)〟だぞ? 何も心配はいらねぇさ。なぁユリクス?」

「……」


 周りの冒険者たちが「最強だってよ!」と歓声を上げている中、ユリクスは。


(……カラル、本当にゲオルグに伝えたな……)


 と、龍王という異名が知られていることに殺気立っていた。その威圧感にやる気十分と勘違いしたのか、冒険者たちから更に歓声が上がる。


 ちなみに、ユリクスの心境を正確に察知したティアたちは揃って含み笑いだ。


 むすっとしていたユリクスだが、視線を森の一点に向ける。


「……ゲオルグ、魔獣が森に入った」


 ユリクスは魔獣の先頭が森に入ったことを感知した。地響きと揺れも大きくなっている。


「魔獣の進行方向はどうだ?」

「……森に入ってもそのまま直進を続けている。曲がる気配はない」

「了解だ。ならもう少し町から離れて迎撃できるな」


 ユリクスの気配探知を頼りに関所から距離を取っていく。なお、他の冒険者たちは関所とユリクスたちの丁度間の位置で待機だ。


 関所が小さくなったところでゲオルグがにやにやとユリクスを見遣った。


「それにしてもユリクスよぉ」

「……なんだ」

「意外だなと思ってよ。お前が積極的に迎撃に参加するなんて」

「確かにそうね」

「面倒くさいって言って他の町に行くの提案しそうっスよね」

「……それは……」


 ユリクス自身も否定はできない。少し前の自分なら確実に面倒だと言って関わらなかった。確かにどうして自分はこんなに積極的に動いているんだ?


「兄さんは優しいってことだよ」


 ティアが代わりに答える。この場合の〝優しい〟とは何だろうか。ユリクスは考えてみる。


 反対に、もしもこの迎撃に関わらなかったらどうなっていただろうか。恐らくティアたちはこの町に残ることを選択するだろう。ゲオルグやライトたちだけで戦っていたとしても、アクアトラスを救うことはもしかしたらできるかもしれない。だが、その身の安全は保障できない。……そうか、自分はライトたちが確実にこの戦いで生き残れるようにこの身を投じるのか。


 確証はない。自信もない。だが、ティアの言う〝優しい〟が、ゲオルグの言っていた〝仲間を思う〟と同じなのだとしたら……。


 ふと、ティアの胸元にある首飾りが目に留まる。それから過る、貝殻の首飾りを渡した時の光景。ティアの嬉しそうな笑顔。愛おしそうに首飾りを撫でる仕草。……どうして今思い出したんだ? 理由はわからない。だが、なんとなく胸の奥があたたかくなったような気がする。あの時は柄にもないことをしたと思ったが、悪い気はしなかった。忘れたくないと思う。……忘れたくない? ……そうか、これは〝思い出〟か。自分は、〝アクアトラスでの思い出〟を守りたいのか……。


 思い出を綺麗なままにしておくために、町を守る。十年前の思い出は〝赤〟で埋め尽くされてしまった。アクアトラスでの思い出も、同じことにならないように。……そういうことなのかもしれない。


「兄さん、どうしたの?」


 不思議そうなティアと目が合う。


「……柄にもないことを考えた」

「え?」


 聞き返してくるティアの顔を見ていられなくて、ユリクスはふいっと顔を逸らした。


「え、何、兄貴今何考えてたんスか!? 柄にもないことって何!?」


 喧しくもライトが突っ込んでくるのでユリクスはライトの顔を鷲掴んで止める。それが照れ隠しを表す行動とは気づかずに。


「何照れてんのよユリィ」

「がっはっはっ! なんかよからぬことでも考えたのか!」

「……別にそんなんじゃない」

「兄さん、気になる」

「……気にするな」

「お前らほんと緊張感の欠片もないなぁ」

「全くだ」


 魔獣の軍勢がもうそこまで迫っているというのにこの緊張感のなさ。ガヤガヤといつも通りの調子を崩さないユリクスたちにゲオルグは脱力し、イヴァンは呆れたように息を吐く。だが、そんな二人も緊張している様子はない。


 わちゃわちゃしながら歩いていると、(おもむろ)にユリクスがその歩を止める。迎撃ポイントに到着したのだ。全員の表情が引き締まる。


 既に揺れは大きく、地響きに混ざって多くの足音まで聞こえてくる。魔獣たちはすぐそこだと嫌でも思い知らされる。


「……ティア、離れていろ」

「……うん」


 メラを抱えたティアに後方で待機しているように指示する。ティアはそれに素直に従った。


「ねぇ、あれ」


 ユリクスたちから十メートルほど離れたところでティアが指さす。方向は森。ユリクスたちがティアの指さす方向を見遣ると、そこは無残なものだった。


 魔獣の軍勢が木々も(はばか)らずに進行しているため、多くの木々がなぎ倒され、森が破壊されていく。砂塵を巻き上げ、地表が露出されていく。動物たちが必死に逃げていく気配を感じ取る。


 アクアトラスに到着する前と、今日の早朝に歩き楽しんだ清澄(せいちょう)な森が汚染されていく。


 ユリクスは胸の奥が熱くなる感覚を覚えた。なんだ、この感覚は。森を見ているうちに胸の奥が不快にざわつき、魔獣たちをこの感覚のままに鏖殺(おうさつ)してしまいたくなるこの衝動は一体なんだ。


 無意識にユリクスは拳を握りしめた。


 ライトが恐る恐るといった様子で顔を覗き込んでくる。


「兄貴、怒ってる?」

「……そう見えるのか」

「う、うん」


(……怒っている? ……そうか、これが〝怒り〟か)


 魔獣が操られ集められていたために作り出された偽りの姿であったとしても、澄み切った森を歩き楽しんだことはアクアトラスの思い出の一つだ。それを無遠慮に蹂躙(じゅうりん)されて、自分は怒っているのか。


 そして、森と同じようにアクアトラスの町まで蹂躙させてたまるかと、己は猛り立っているのだろう。ユリクスは〝怒り〟の感情を己に刻み込む。すると、不思議と力が溢れ出てくる感覚を覚えた。魔力が腹の底から、そして()()から湧き上がってくる。感じる全能感。


 拳を握り、開くを繰り返す。体が軽くなったような気もする。不思議な感覚だった。


 ゲオルグに問われた際に、全部を相手にできると言ったことは嘘ではない。だが、今なら本当に容易くできてしまいそうだった。


「ねぇ、あんた本当に大丈夫なの? なんか魔力の圧が凄い伝わってくるんだけど……」

「緊張してるってわけじゃなさそうだが……」


 リアナとリューズが心配そうに声を掛けてくる。どうやら魔力が漏れ出ていたらしい。ユリクスはしばし考えた後、正直に答えた。


「……今なら何でもできそうな気がする」

「へ?」

「は?」

「おう?」

「なに?」


 ライト、リアナ、リューズ、イヴァンが素っ頓狂な声を上げる。そんなにおかしいことを言っただろうか。


「おいおいユリクス、お前随分ハイになってんなぁ! お前も危地に立つと燃えるタイプだったか!」


 何故か心底嬉しそうに、または楽しそうにゲオルグに絡まれる。首に巻かれた腕が鬱陶しい。ユリクスはゲオルグの腕を払い落とした。


「……別にそういうわけじゃない。本当にそんな気がしただけだ。それに危地じゃない」

「そういえば本当なら四万相手にできるんだもんな、お前」


「あー」とライトたちが揃って呆れた目をする。


 ふと、ライトが何かに気づいたように目を見開いた。


「……どうした」

「……〝龍の一族は怒らせてはならない〟……」

「どうしたのよいきなり」

「えっ、あ、いや、龍の一族にはそういう言い伝えがあるじゃないっスか。兄貴がなんか怒ってるみたいでもあったから、それが関係してるのかなって……思って……」


 自信なさげに語尾が沈んでいく。


「確かに、龍の一族は怒りにより力が高まっていくと言われている。まさかここで実証されるとはな」


 ゲオルグがしげしげとユリクスを見遣る。


「ふんっ、ならばずっと怒っていればよかろう」

「……それは難しい」

「まぁ、兄貴は感情の起伏がほぼないっスからねぇ」

「というか今本当に怒ってるの? 魔力を除けばいつもと違いがよくわからないんだけど。特に表情」

「がっはっはっ! 俺にもさっぱりだ!」


 まぁ確かにユリクス自身も今怒りを理解したばかりなので、リアナたちがわからないのも無理ないとは思うが……そんなに表情に出ていないのだろうか。ユリクスは自分の表情筋の死んだ顔を触ってみる。うん、動いていない。


「……ライト、どうしたら顔が動く」

「うぇっ!? どうしたらって、普通は勝手に動くっスよ?」

「……動かん」

「あー、兄貴はそのままでもいいかもしれないっス」


 ライトだけでなく他の面々も頷く。何故だ。解せぬ。


 遠回しに、今更思いきり動かされても不気味だと言われていることには気づかない。


「おいお前ら、魔獣が来るぞ。準備できてんのか?」

「「「あっ」」」


 ゲオルグの呆れ混じりの言葉にライトたちは今の状況を思い出す。もうすぐそこまで魔獣が迫ってきていることを忘れていた。


「お前らほんと、大物だよなぁ」


 ゲオルグは腰に片手を当ててやれやれと首を振る。とにかく全員肝が据わっている。頼もしいったらない。ギルド総長として、一人の冒険者として、ユリクスたち全員をゲオルグは評価するのであった。


 五十メートル程先の森から魔獣の先頭が木々をなぎ倒して出てくる。そのまま予想通りにこちらに向かって前進してきた。


 草原を埋め尽くす魔獣の群れ。普通の人間なら泣き叫んで逃げるところを、ユリクスたちは広く横に一定の距離を取って毅然(きぜん)と立ちふさがる。神器を顕現(けんげん)させ、魔獣たちがこちらへ辿り着くのを今か今かと待ち構える。誰もが瞳をギラつかせ、獲物が来るのを待っている。魔獣たちは理解しているのだろうか。どちらが喰われる側なのかを。


 四万と聞いた時にはたじろいだが、今はもう彼らは誰一人として搾取される側にいない。その心は魔獣以上に獣の如く。


 さぁ、これから始まるのは魔獣によるアクアトラス襲撃ではない。神人族たちと伝説級冒険者による、一方的な蹂躙劇だ。






お読みいただきありがとうございます。


次回の更新は9日です。

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