救助
久々のクロイツたち登場です!
5話前に、新しく配属されたアネモイ型特別偵察艦アネモイに乗ったクロイツ達が、訓練航海に出て3ヶ月が経つ頃からスタートします。
第17話 救助
クロイツ達が特別偵察艦アネモイで飛び立って3ヶ月が経った。今日は3ヶ月ぶりの母港への帰港となる日。
3ヶ月ぶりに地上へと変えれる事で、アネモイの乗組員達は浮き足立っており、副官のイヴァンは彼らをまとめるのでパタパタしていた。
クロイツはと言うと、艦長席に座り優雅なティータイムをしていた。
それが目に入ったイヴァンは、プツンと音を立てるかのようにキレた。
「クロイツっ!!何でお前は優雅にティータイムなんかしているんだ」
イヴァンにそう言われたクロイツは、悟りを開いたかのような顔で彼に語りかける。
「イヴァン、そうピリピリするなって。久しぶりに地上へ帰れるんだ。乗組員が浮き足立つのも当たり前さ。君もここに来て一緒にゆっくりしよう」
その言葉にイヴァンは更にキレる。
「お前がそんなんだから乗組員までダラダラと仕事をするんだよ!艦長ならしっかりしろ!さぁ、もうティータイムは終わりだ。しっかり働け!」
イヴァンはそう言うと、クロイツが持っていたティーカップを取り上げ、片付けてしまった。
そのあまりの速さに唖然としていたクロイツは、ふと我に戻りイヴァンへ反論した。
「イヴァン、落ち着きなよ。もう航海も終わるんだ、これまでの事を思い出して紅茶で一息つくのも悪くないよ?」
そう言われたイヴァンは呆れた表情で口を開く。
「クロイツ……」
「おっ!分かってくれたかい?さすがは親友だ!ささ、ティーカップを用意しよう」
早とちりして上機嫌になったクロイツにイヴァンから雷が落ちた。
「バカやろう!!!これは仕事だぞ。ピクニックに来てるわけじゃないんだ。遠足も、お家に帰るまでが遠足だろうが!しっかりしろバカ艦長!」
イヴァンのあまりの声量に艦橋内の空気が一気に重くなった。
少し間が空いて、艦橋内の乗組員達がそそくさと動き始めた。これまでのダラけた表情とは一変して、キリッと引き締まった顔つきで仕事に取り掛かった。
そして、イヴァンに直接怒鳴られたクロイツはと言うと、仕方がないという雰囲気を出しながら、渋々自前のティーセットを片付けていた。その顔は『めんどくさい』という表情だった。
その表情を無視しないのがイヴァンである。
「クロイツ、俺の対応に何か不満があるように見えるんだが。久々に艦内全てのトイレ掃除やるか?」
そんな言葉を吐いたイヴァンの表情は、口角を上げて白い歯を見せているのだが、目は笑ってなかった。
その表情を見たクロイツは、ビクッと身体を震わせて思いっきり首を横に振りまくった。
その反応を見たイヴァンは、良しと頷くと早く片付けで仕事をしろと言い残して艦橋から去って行った。
イヴァンが艦橋入り口から出るとき、ふとクロイツに振り向いて釘をさした。
「しっかりと見ているからな」
その言葉に恐怖を覚えたのは、クロイツだけではなかった。艦橋内で働いている乗組員全員が背筋を正して職務を遂行し始めた。
それを確認したイヴァンは、少し表情を緩ませて艦橋から出て行った。
イヴァンが艦橋から出てすぐ、艦橋内にまでイヴァンの怒鳴り声が聞こえたのは言うまでもない。
怒鳴り声が聴こえるその度に、艦内の乗組員全員の背筋が良くなった。
クロイツ達の乗るアネモイが、辺境星系の首都星カーラミネまで600光秒(1億7987万5474.8㎞)に差し掛かったところで不可解な反応をレーダーが探知し、観測員が報告を上げる。
「艦長、レーダーに遭難信号を探知しました」
「そうか。場所は?」
「方位0ー4ー5。我々の位置から0.5光秒先、左にズレたポイントです」
「よし、機関全速。これより救難信号ポイントへ急行する。イヴァン中尉を艦橋に呼んでくれ」
「了解しました!」
クロイツは、観測員から報告があった救難信号発信ポイントへ急行するよう指示を出した。
そして、クロイツから呼ばれたイヴァンが艦橋へ入る。
「クロイツどうしたんだ?」
「レーダー観測員が救難信号をキャッチした」
「そうか。観測員、救難信号以外の通信等はないか?」
「反応ありません。発信元の通信機がダメになったのかもしれません」
「わかった。負傷者がいるかもしれない、医務室に準備するよう指示を出しておこう」
イヴァンは観測員にそう言うと、艦橋から医務室へ通信を行った。
「医務室、こちら艦橋のイヴァン中尉。今、救難信号発信ポイントに向かっている。負傷者がいるのかもしれない。用意していてくれ」
「こちら軍医。了解した」
医務室へ連絡したイヴァンは、クロイツに呼ばれて身体を向き直した。
「イヴァン、この艦に救護者の収容場所はあるのか?」
「何言ってるんだ?あるに決まってるだろ。1つだけ広い部屋が」
「そうだっけ?1つだけの広い部屋……」
当たり前のような口ぶりで言われたクロイツは、全く思い当たる節がないので頭をひねっていた。そんなクロイツを見てイヴァンは当然のことだろうと言う感じで、クロイツに返した。
「わかんないか?お前の部屋だよ。艦長室」
「なっ!!さすがにイヴァン、それはダメだろ」
言われて初めて気が付いたクロイツは、慌ててその考えを改めようとした。
「何がダメなんだ?お前は毎日ゴロゴロしてろくに仕事もしなかっただろ?だから、首都星に帰還するまで部屋は没収だ。良い艦長だなぁ〜自分の部屋を救護者に与えるなんて」
イヴァンは、クロイツにニヤニヤしながら答えた。
クロイツはそれを見て絶望した顔で艦長席に座り込んでいた。さっきも怒鳴られたクロイツは、イヴァンへの反抗の意思を無くしていた。
反論してこないクロイツを見たイヴァンは、面白くなさそうな顔をしているが、これを承諾として受け止め、手の空いている乗組員を連れて艦長室を整理しに向かった。
イヴァンのいなくなった艦橋は、どこか哀しい空気が流れていた。艦橋内の乗組員が可哀想な目でクロイツをチラチラ見ている。それをクロイツは気にせず落ち込んでいた。
すると、レーダー観測員が報告を告げる。
「艦長、救難信号発信ポイントが見えてきました」
クロイツはその言葉を聞いて気を引き締めて答えた。
「わかった。レーダー観測員はそのまま続けてくれ。他の奴は目視で目標の状態を確認せよ」
クロイツの言葉に、目視で確認していた乗組員から報告が上がる。
「艦長、目標エンジン部分破損しております。あの状態での航行は不可能かと」
「そのようだね。ちょっとまて、目標の付近に漂っている物体はなんだ?」
「あれは……救命ポッドでしょうか?少し損傷しているようですが…」
「あれを至急収容してくれ!」
「り、了解しました!」
クロイツから指示を受けた乗組員は、急いで艦底部のハッチ付近にいる作業員に連絡を入れ、救命ポッドを収容させた。
収容した救命ポッドは、艦体後部の格納庫へと運ばれた。
ポッドが運ばれてからすぐにクロイツとイヴァンが来た。
「クロイツこれは?」
「目視で確認していた奴が見つけたものだよ。少し損傷はしているが、救命ポッドだ」
「この中に人が?」
「それを今確かめるんだ。一応軍医を寄越してくれ」
「わかった」
イヴァンへ軍医を呼ぶよう伝えたクロイツは、救命ポッドへと歩み寄った。
その救命ポッド機体のサイドには『 PTS.N-34/R 』と書いてあった。
この意味は『民間輸送船・登録番号34/救助求む』である。文字通り緊急脱出用救命ポッドのなっていた。
そのポッドの周りは無数の傷が付いており、一部焼けたような跡が残っていた。
ポッドの上部に取り付けてある窓からは、11〜12の男の子が入っているのが確認できた。




