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第九話 神っぽくない神






〖なぜ無視をする〗

「…………」


〖見えているのだろう〗

「…………」


 図書館を叩き出された後、僕はいつも赴いている近くの森に足を運んでいた。


 読書に大分時間を使ってしまったが、まだ陽は高い。それであるならばとモンスター討伐へとやって来たわけなのだが。



〖神を無視するな〗

「…………」


 どうやらスキルが壊れてしまったようだ。


 %表示はないし、複数あった文字列は一列だけになっている。それにこの、語り掛けてくるような感じも不気味だ。


 あまつさえ自らを神と自称する始末。声が聞こえたり姿が見えたのならまだしも、文字って。


 やはり昨日の疲れがまだ残っているのかもしれない。今日は休んだ方がいいのだろうか。



(そもそもこんなに表示されて、また倒れたりしないだろうな)


〖そこは問題ない〗

「――――っ!?」


〖これは神択肢の力ではない〗

「なっ……」


 頭の中に浮かんだ疑問に、文字が答えた。


 それに驚き固まっていると、再び文字の表示が変わり始めた。


〖神択肢を流用してはいるが〗

〖少年の力は消費していない〗

〖私が送り込んでいるだけだ〗


「送り込む……え? 本当に神なの?」


〖神である〗

「うそくさ」


〖嘘ではない〗

「証拠は?」


〖そういうのウザい〗

「ウザいってなんだよ!?」


 絶対に嘘だ。こんなふざけた物言いをする奴が神様だなんてあり得ない。


 神ってこう、威厳があるというか、荘厳な雰囲気というか。そんなのをバチバチ感じるはずなんだ。


 今感じているのは、ただの偉そうなオッサン。いや偉そうな文字列。



〖誰がオッサンや〗

「お前の事だよ」


〖お前言うな神だぞ〗

「神っぽくない! あと読点付けてよ、読みづらい」


〖文字数制限がある〗

「一気に安っぽくなったぞ神様よ!」


〖神に安いも高いもないんだよ〗

「神っぽくないんだよ! 言葉づか……文字づかいとかも!」


〖神に性格や性別などない〗

「だ、だからなにさ?」


〖神っぽさなどない〗

「…………」


〖それは人が勝手に作り上げた〗

〖偶像であろう〗

「まぁ、言われてみればそうかもしれないけど」


〖私は少年が退屈しないように〗

〖ふざけてやってあげてんだっちゃ〗

「だ、だっちゃ? ふざけんなっ!」



〖そう怒るな〗

〖私は過去に存在した幾億もの人間〗

〖から得たもので少年と会話をして〗

〖いるのだ〗

「よ、読みづれぇ……」


〖様々な言葉づかいや性格を真似て〗

〖いるのだから仕方がないでしょう〗

「それは分かったけど、統一できるだろう!?」


〖もちろんできるよ〗

〖これは暇を持て余した〗

〖神の遊びだよ♡〗

「人の目の前で遊ぶなッ!!」


 こいつが本当に神なのかは分からない。暇を持て余しているとか、遊びだとかそんな事を言う奴が。


 ただまぁ、冒険者になってからはずっと一人だった。笑う事なんてほとんどなかったし、こんな楽しい会話をした記憶だってない……楽しいか?


 神じゃなくてもいいか。そっちが暇つぶしをするってんなら、こっちも暇つぶしとして使ってやるよ。



〖傍から見ると〗

「な、なんだよ?」


〖独り言を言っているように見える〗

〖から気を付けた方がいいよ〗

「だったら引っ込んでろッ!!」


 ――――

 ――

 ―



 神の文字が見えるようになって、一時間ほど。


 自称神の言った事は本当のようで、目の前に文字列が現れまくっても気分が悪くなるなんて事はなかった。


 表示され過ぎて目が疲れるという事はあるが、体調的には特に問題なさそうである。



〖ウケる〗

(ウケねぇよ! これでも必死なんだ!)


 未だにモンスターの一匹も倒せていない事を聞いた神は、最近の若者が良く使う言葉で僕を馬鹿にし始めた。


 頭の中で思った事が伝わるのを思い出してからは独り言もなくなり、傍から見ても変な人には見えないはずだった。


〖虚空を見つめる変な人には見える〗

(だったら少し黙ってろッ!!)


 どうでもいい事をベラベラと……ツラツラとか。とにかく、文字を送ってよこす自称神。


 今まで取り憑かれた人も大変だったんだなと、同情してしまう。



〖悪霊みたく言うな〗

(悪霊みたいなもんだろ……)


〖そもそも人間と通じたのは少年が〗

〖初めてだ〗

「え……なんでだよ? 昔の神択肢持ちがいただろ?」


〖声に出ている〗

「むぐっ」


〖神択肢を持つのは少年が初めてだ〗

(そうなの!? この長い歴史の中で僕だけ!?)


〖選択肢を手にした者は大勢いたが〗

〖あれはハズレだから当たりやすい〗

(ハズレだから……当たりやすい?)


 選択肢というユニークスキルの事を聞くと、本当にハズレスキルだった。


 選択できる文字列が目の前に表示されるだけで、神択肢とは違い%表示などはない。行動指標を与えてくれるという意味では、使えなくはないのかもしれないけど。



〖神択肢のような当たりスキルは〗

〖当選確率を低く設定してある〗

(と、当選確率? くじ引きみたいな感じ?)


〖左様〗

(ごめん、読めない)

〖さよう〗

(ごめん、意味が分かんない)

〖そうだ〗



〖神の名を冠する力は強大だ〗

〖ゆえに当たる者を少なくした〗

(当たる者って……神様が決めてるんじゃないの?)


〖全自動神託だ〗


〖十二の人間に自動的に神託が〗

〖ランダムに下るように構築済み〗


〖未だに当選者がないスキルもある〗

(それは……あまり聞きたくなかったな)


 運命なんてなんのその。神を崇拝し祈りを捧げている聖職者や、神聖国家アルビレオの人が聞いたら卒倒するんじゃないだろうか。


 まぁ神様が授けてくれているのに変わりはないのかもしれないが、そんな設定があったなんて驚きだ。


 スキルスキーも、選ばれたのには理由があるって言っていたのに。



〖運が良かっただけだ〗

〖御当選おめでとうございます〗

(あ、ありがとうございます)


 しかし喜んでいいのか分からん。運は良かったようだが、他にはなんの理由もないなんて。


 神に選ばれし勇者様なんて、存在しないということか。



(そうだ。当選確率で思い出したけど……神択肢の%って、やっぱり良い事が起こる確率?)

〖もの凄く噛み砕けばそうだね〗

〖あれは神の力が作用する確率だよ〗


(神の力が作用……とりあえず、良い事が起こる確率でいいんだね?)

〖まあいいんじゃない〗


 やはり僕の考えは正しかったようだ。確率が高いものを選び続ければ、神の力とやらが作用して良い事が起こる。


 これぞ当たりスキル。選択肢なんていうハズレスキルとは訳が違うぜ。



〖しかし神択肢の真価は〗

〖そこではない〗

(そうなの? 十分凄い気がするけど……)


〖まず前提として〗

〖行動自体は自力で成功〗

〖させなければならない〗


〖例えば〗

〖木に登る————99%〗


〖このような表示の場合〗

〖木に登る事が出来なければ〗

〖99%は作用しない〗


 それはなんとなく分かっていた。行動自体が成功する確率じゃないって事は。


 以前に表示された『剣を投合して注意を逸らす4%』とは、気を逸らす事ができる確率が4%なのではなく、気を逸らす事が出来たなら4%の確率で良い事が起こるという事だったのだ。


 つまり、行動自体を成功させる事が出来そうなもの、かつ確率が高い文字列を選べばいいという事か。



(それで? 神択肢の真価ってなに?)

〖それは後のお楽しみ〗


(なんだよ、教えてくれてもいいだろ)

〖一つ言うとしたら〗


〖今少年に表示されている選択肢は〗


〖人間の選択肢であるという事だ〗

(なんだよそれ、意味が分かんないよ)


〖もっと択べ〗


〖さすればいずれ・現れる〗

(それ読点じゃないぞ)

〖さすればいずれ。現れる〗

(惜しいっ)


 神様が言うには、神択肢もっと進化するらしい。


 これ以上どう進化するのか分からないが、楽しみにしていおけと言うのならばそうしよう。


(というかあの文字列、選択肢って言うの?)

〖うん〗


お読み頂き、ありがとうございます

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