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第八話 私が神だ






 ――――ビッグボア。大型で牙が肥大化したイノシシの化け物。人を見ると見境なく襲ってくる。

 ビッグボアは急に曲がる事ができない。一直線に突進する事しか出来ないため、回避などは簡単に行える。


 ――――ロングスネーク――――ラージウルフ――――


 大きい、長い、小さいなど、見た目が名前となっているモンスターは低級モンスターと呼ばれる事が多く、色がつくモンスターは中級モンスターと呼ばれる事が多い。



 ――――ブラックベア。全身真っ黒な毛をしている事からそう呼ばれている。その腕力は、人を簡単に肉塊へと変える事が出来るほど強大である。

 弱点は脳天。その部分だけは毛が薄く、簡単に刃物が突き刺さる。人間に求愛行動をする個体がいるとの噂があるが、定かではない。



「ブラックベア……尿素を嫌うなんて情報、どこにもないな」


 図書館に来て、モンスター図鑑を眺めること数時間。


 ヴェガ周辺のモンスターを筆頭に、様々なモンスターの情報が載っている書物に驚きを禁じ得ない。


 今まで自分は何をやってきたのか。この本を少しでも見ていれば、もう少し上手くやれたんじゃないかと思う。


(まあ、昔の僕は聞く耳を持たなかっただろうな)


 本なんて読んでも仕方ない。実践による経験、鍛錬こそが全てだと思っていた。


 しかし先達の記録は偉大だった。この情報を知っているのと知らないのじゃ大きく違うだろう。


 なんで誰も教えてくれなかったのか……なんて思っても自分を正当化なんて出来やしない。


(この情報が、130%の恩恵なのか……?)


 正直に言うと、肩透かしである。


 もちろん物凄く有益な情報だったし、これを知ればンスターを討伐する事だって難しくないのかもしれない。


 こんな有益な施設を発見できただけでも御の字ではあるが、あんな眩暈に晒され、130という数字まで引き上がった理由としてはどうなのだろう。



(仕方ないか。でもせっかく入館料を払ったんだし、もう少し……)


 それほど高額ではないが、お金を払ってこの施設に入ったのだ。


 元はもう十分に採れたとは思うが、せっかくなのでもう少しと興味を惹かれる本を探して歩き始めた。



(効率のいい素材採取……王都食べ歩きマップ……ストームウルフ討伐記録……高ランク冒険者一覧表……)


 効率のいい素材採取に興味はあるが、後にしよう。


(隣国ルクバトについて……可愛い受付嬢一覧表……ユニークスキル……!?)


「可愛い受付嬢一覧表」


 ではなくて。


「ユニークスキルについて……スキルスキー・アズライト著」


 一冊の分厚い本を手に取り、その場でパラパラと捲ってみた。


 確認されたスキルの一覧も載っているようで、面白い記述もあったのでこれを読む事にした。



 ユニークスキル――――神より授かりし各種超常現象の総称。オリジナルマジックのように自然現象をベースとした力以外の力の事をいう。


 本質はオリジナルマジックと同じだが、自然環境に大きく左右されるオリジナルマジックとは違い、ユニークスキルは発動場所を選ばず発動効果にも変化はない。


 しかしユニークスキルは自然の影響は受けないが、本人の影響を多分に受ける事が分かっている。


 オリジナルマジックは自然の力を消費して行使するが、ユニークスキルは使用者の力を消費して発動されるという事だ。


(ええ? そうなの? じゃあオリジナルマジックの方が当たりじゃね?)


 しかし魔術の研究が進んだ昨今、ユニークスキルを授かった方が当たりだという事を先に伝えておこう。


「な、なに!? そうなのか!? なぜです!?」

「お静かにお願いします」

「あ、すみません……」


 まず初めに、同世代に同じユニークスキルやオリジナルマジックは存在しない。長い歴史がそう物語っている、同じユニークスキルが同時に確認された事は一度もない。


(ふむっ)


 ユニークスキル持ちが亡くなった数年後に、同じユニークスキルが確認された例は何度もあるが、同時期に存在したという記録はないのだ。


 もちろん、ユニークスキルを隠す者、公表しない者もいるだろうが、それにしても全く確認されないのは妙である。


(確かに)


 それはオリジナルマジックも同様だったのだが、一昨年、とある出来事が起こった。


(ふむふむっ)


 オリジナルマジックを、人工的に生み出す事に成功したのだ。


「なにーーっ!?」

「お静かにっ!!」

「す、す、すみませんっ」


 そもそも通常の魔術は、遥か昔から人と共にあった。家庭用の小さな魔術から、モンスター討伐をなす強大な魔術までもが、今では当たり前のように使われている。


 もちろんそんな中で、オリジナルマジックが群を抜いて強大だったのは事実だ。


 しかし先日、とある炎系統のオリジナルマジック持ちの協力もあり、ほぼ同様の効果を持つ魔術が魔術国にて生み出されたのだ。


(魔術国すげー)


 諸君らも知っている通り、魔術は誰にでも扱う事ができる。しかしオリジナルマジックだけは、授かった本人しか使用できないと言うのが通説であった。


 しかし通説は覆った。根幹的には違うのかもしれないが、ほぼ同じ効果をもたらす魔術が他にあるのならば、オリジナルなどと名乗るのは片腹痛い。


(片腹いてーぜ)


 研究が進めば、今後更に他のオリジナルマジックと同様の効果を持つ魔術が生み出されるであろう。


 オリジナルマジックに未来はない。オリジナルマジックがハズレ神託と呼ばれる日も遠くないだろう。


(オリジナルマジックがハズレ神託? それはどうなんだろうな……)


 ここで話はユニークスキルに戻るが、当然、ユニークスキルの研究も行われている。


 しかし現時点での学者たちの回答は、ユニークスキルは再現不可能という事だ。


 自然という我々に馴染み深いものを根幹とするオリマジと違って、ユニークスキルの根幹は意味不明、理解不能だと言う話だ。


(オリマジって……略し始めたぞコイツ)


 あくまで現時点ではあるが、ユニークスキルの再現は不可能。しかしオリジナルマジックはどんどん研究が進められている。


 つまり、ユニークスキルは唯一無二ではあるが、オリジナルマジックは複製可能。何れはユニークスキルを持ちながら、オリジナルマジックを行使できるようになるという事だ。


(ユニークスキル持ちのオリジナルマジック持ち……すげぇ!!)


 まあ、その研究には何百年掛かるか分からないと言われているので、今考えても無意味な事だが。


「無意味ッ!! この時間無意味だったよ!!」

「次騒いだら叩き出す」

「あ……す、すみません……」


 ともあれ、人間程度が作り出せるオリジナルマジックとは違い、ユニークスキルはまさに神の御業、格が違う。


(格ねぇ……)


 ユニークスキル持ちは神に選ばれた子なのだ。なぜ選ばれたのか、それは分からないが理由は必ずある。


 己を、そして神を信じるのだ――――


(神を信じる、か)



 この次のページからは、現時点で確認されたユニークスキルの情報が載っているようだ。


 一応確認したが、神択肢の情報は載っていなかった。このスキルスキーが言っている事が本当なら、過去にも神択肢持ちはいたと思うのだが。


 しかし言われてから気づく。神を信じるなんて、意識した事もなかった。


 こんな凄い力を授けてくれているのに、神という存在を信じるかと言われると……いるんじゃない? 程度。


 少なくとも身近な存在じゃない。神託だって魔術を使用して確認する、いわゆる人が行う儀式だったし。


 直接神様の声が聞こえるとか、姿が見えたとかであれば分かるけど。


(ただ、少しは信じてもいいだろう。こんなスキルを与えられちゃね……)


 十二の時、スキルがあると告げられた瞬間から、急にスキルの名前が頭に浮かんだ。


 不思議な感覚だった。ずっと昔からあったようで、今まさに授かったとも思えた感覚。


 それは人智を超えた神の所業。そして神択肢というユニークスキルの存在。


 神が与えてくれた、先を見通せる文字列。未来を見通せる力なんて、それこそ神しか持っていないだろう。


(つまり神様はいるんだな。もしかして今も見てくれているのかな……?)



〖見ているぞ〗


「…………ぇ?」


〖やっと信じたか〗


「…………はぇ?」


〖待ちくたびれたぞ〗


「な、なんだ? スキルを使ってないのに文字が……」


〖見えているようだな〗


「な、な、な……」


〖私が神だ〗


「かっ……かみィィィィィィ!?!?」


 僕は図書館から叩き出された。


お読み頂き、ありがとうございます

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