第十話 神と共に
【落とし罠を作成――――62%】
【尿袋を作成――――※※】
【木に登り待つ――――44%】
【今日はもう帰る――――※※】
【※※※※※※※※――――※※】
神との会話を切り上げ、いよいよモンスター討伐に頭を切り替えた僕は、神択肢を使って選択肢を表示させた。
➡【落とし罠を作成――――62%】
出来そうな事と確率的に、落とし罠を作成する事に決めた。
確率が少し微妙なのが心配だが、今回の表示ではこれしかない。
半分以上の確率で成功するが……僕は運が良い方なのだろうか? 今まで考えた事もなかった事を考えながら罠を作る。
〖そもそも〗
〖確率はあくまで神の力が作用する〗
〖可能性というだけである〗
(うおっ!? 固い……これ以上は掘れないかな?)
〖神の力が作用しなかったとしても〗
〖それイコール失敗ではない〗
(なんだって? 今忙しいから後にしてよ)
〖ちゃんと聞けやボケ〗
(ああ分かった、はいはい)
目の前の邪魔な文字にうんざりしつつ穴を掘りながら、神様がいう事を頭で整理した。
確率から漏れて、いわゆる外れた場合。その場合は悪い事が起こるのではなく、神の力が働かないだけで、普通に良い事が起こる可能性もあると。
(そういう事だろ?)
〖その認識で問題ない〗
いくら確率が低いといっても、端から候補から除外する必要はないという事だろう。
という事は、普通に考えたら失敗するような行動でも、神の力さえ生じてしまえばたちまち良い事に大変身という事か。
すげぇな、神の力。
(そういえばさ、130%に確率が変わったのってアンタのせい?)
〖口の利き方に気を付けろッ!!!〗
「うわっ!? び、ビックリした……」
なんか急に文字が大きく表示された。それに文字の色が赤くて本当に驚いた。
(こんな事も出来んのかよ……というか邪魔だからやめてよね)
〖これは面白い〗
〖!!!!!!!!!!!!!!!〗
「だから止めろっての!!」
感嘆符だったか、それを連続して送ってきやがった。警告のイメージがあるせいか、物凄く心臓に悪い。
くそ、驚いたせいで罠が崩れてしまった。またやり直さなければ……。
〖先の答えだが〗
〖確かに私が改変を行った〗
〖聖書でも読んでもらおうと思って〗
(な、なんで聖書?)
〖いくら神択肢を介すとはいえ〗
〖神を心から信じていなければ〗
〖人と通ずる事は出来ないのだ〗
(……そういうのって、神の力でどうとでもなるんじゃないの?)
〖どうとでもならん〗
〖下手に私が人に干渉すると〗
〖人は〗
(人は?)
〖消滅する〗
「こえぇよっ!!」
消滅って死ぬという事だろうか? 急にこの文字と会話をするのが恐ろしくなってきた。
(ぼ、僕は大丈夫なんだろうな!?)
〖だから神択肢を介しているのだ〗
〖文字を送り込む事が干渉の限界〗
〖それが可能なのは神択肢だけだ〗
(ふ~ん。それは分かったけど、改変って大丈夫なの? 結構しんどかったぞ)
〖話をすり替え〗
〖話は変わるが少年〗
「おい、今すり替えるとか書いてなかったか? そもそも変えんなよ」
〖うるせぇなぁ〗
「うるさくねぇよ!? いいから答えろッ!」
〖私が干渉したのはスキルだ〗
〖故に人との接触には該当しない〗
(なんだよ……なら一安し――――)
〖しかしまぁ〗
〖あの改変は下手すりゃ〗
〖死んでたね〗
「……は?」
〖スキルの力に少年が耐えられるか〗
〖それは賭けだった〗
「…………」
〖でも生きてたし〗
〖終わり良ければ全て良し〗
〖だから許してちょんまげ〗
「人の命を賭け事に使うんじゃねぇぇぇぇ!!」
――――
――
―
「き、きたっ!」
落とし穴を完成させ、待つ事数分。
罠というくらいなのだからモンスター討伐に使用するのだろうと予想していたが、62%に漏れる可能性もあった。
しかしどうやら62%をもぎ取ったようだ。
「ビックボアだ!!」
脇目も振らず猪突猛進で突っ込んでくるイノシシの化け物。
都合よく落とし罠の方向に、都合よく低級モンスターが、都合よく掘り終わってから数分というタイミングで現れた。どう考えても神の力が作用したのだろう。
(ビックボアは曲がる事ができない……つまり真横に回避すれば問題ない!)
「ブモぉぉぉぉぉぉ!!!」
人を簡単に殺せる脅威が間近に迫る。いくら落とし罠を用意し、対策方法も知ったとはいえ恐怖しか覚えない。
(こ、こえぇ……)
今まで負け続けてきた相手だ。それに心の準備をしてなかった。ただ選択肢に従って穴を掘ったら急にモンスターが現れたのだから。
〖何を恐れる必要がある〗
「…………」
〖その力を疑うのか〗
「……いいや、信じてるさ!」
落とし罠の後ろに立ち、剣を構えながらビッグボアを威圧する。
逃げ惑う事しか出来なかった僕とは違う。スキルを活用し、知識だって仕入れた。
神の力だって信じてる。なにより自称だが神様が見てくれているんだ。
〖自称ではない〗
(よしっ! そのままこいっ!)
「ブモぉぉぉぉぉぉ!!!」
罠があるなんて想像すらしてないだろう。その程度の頭しか持たないモンスターが、ただ僕だけを目掛けて突進してくる。
――――ドゴォォォォン………ブモぉぉぉぉぉぉ!?!?――――
そしてあっさりと、僅か数十分で作った落とし罠にビックボアが引っ掛かるのだった。
「よしっ! 落ちた!」
回避する必要すらなかった。正直こんなに上手くいくとは思っていなかった。
土煙を上げる落とし穴に恐る恐る近づくと、そこには頭でも打ったのか、動きが鈍くなったビッグボアの姿があった。
走り回っている姿しか見た事がなかったビッグボアが、討伐してくださいと言わんばかりの姿で蹲っている。
「ついに……僕はっ!!」
剣を構えて一呼吸。ビッグボアの首筋に狙いを付けた。
そして一閃。今までの苦労は何だったのだと思う程に、あっさりとビッグボアの頭が落ち、その命を終わらせた。
「はは……はははっ! やったんだ! 僕はやったんだ!!」
初めてモンスターと対峙してから約三年。
周りになんと言われようと冒険者であり続けた。モンスターの一匹すら討伐出来ないダメ冒険者だったが、必死にしがみ付いた。
ここからだ、再びここから始めるんだ。周りを見返してやる、最高ランクにだってなってやる、そして約束を守ってやる。
「僕はやったぞーー!!」
〖最低級程度で大袈裟な〗
「クソ神がッ! 水を差すんじゃないよ!!」
しかし気を良くし自信がついた僕は、この後も同じ方法で三体のビッグボア討伐を成功させるのだった。
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