「五大元素」
第18話「五大元素」
朝日が昇る、山の麓で闇が顕現する
「終わりの時は来ました、これより始まるは暗黒ぞ、皆の者準備はいいかの?」
闇に包まれた葛の葉の側に4つの影が現れる
「死の刻は来たれり、我が力存分に振るおう」
其れは死の使い手なり
「私に敗北などありえませんとも、ええそうですとも!」
其れは狂乱の道化師なり
「決着の時が来たわ、今夜で終わりよ」
其れは妖艶なる夢魔なり
「運命は動き出す、それが俺のいる意味だ」
其れは重なり合う幻想なり
葛の葉が手を前に出す
「夜よ来たれ、我は闇を統べる者、我は光に影を差す者、よって此処に闇は訪れる<闇夜に来たる妖気-漆黒の行脚>!」
空が闇に包まれる、登って居たはずの日は闇に沈み辺りは妖気で満たされる
屋敷にて
「皆起きろ!空の様子がおかしい」
アンデルセンの叫び声で僕は目を覚ます、廊下では慌ただしい足音が聞こえる
「私達が夜まで寝てたってわけではなさそうね、屋敷の時計を全部確かめて来たけど結界の中にあったのも含めて全部朝の8時を指してたわ」
「俺の魔法と真逆のことをされたってことか、こちらにその手がある以上考えておくべきケースだったな」
僕は障子の外の会話を聞いて飛び起きる
「夜になったってどういう...」
そこまで言って僕は空を見て唖然とする
漆黒と称するのが相応しいような風景が広がっている、月はおろか星の1つも輝いていないその空を見ていると自分が飲み込まれてしまいそうだった
「そうだ、ユリアとマキアは?」
「まだ戻って来てないみたいね、敵に囚われてはいないようだし暫く様子見の方がいいかしらね」
「そうだな一度落ち着いて現状を確認しよう」
アンデルセンの提案で僕たちは広間に集まる
「今の所屋敷から見える範囲に怪異の兆しはない、あと1時間程度は安全だと言えそうだな」
アンデルセンの周りに本が数冊浮かんでいる、あれも使い魔の一種だろうか
「晴明さんはどこに?」
「あいつなら外の見張りをしてるわ、なんでも気になることがあるとかで」
ドンッ、庭の方から何かが落下したような音がした
「今度は一体なんなのよ」
メディカと僕は庭へと走って行く、するとそこには傷ついたユリアとマキアがいた
「晴明に伝えて...結界の守りを固めるんだ!」
ユリアが必死に叫ぶ、何があったのかはわからないがそんなことを考えている場合ではないことだけはわかる
「晴明さん聞こえますか!」
「そちらの状況は伝わっています、屋敷の結界に回す魔力は増やしましたが一体どういうことなんですか?特に結界の損傷も見られませんし」
「幻覚だよ、あの空の変化は地上を暗闇に染めるだけじゃない、怪異の存在を隠匿しているんだ」
「ユリアの話は本当だ、戦闘準備を始めろ!」
結界の外の様子を見に行っていたアンデルセンの声で僕たちに緊張が走る
「ユリア達はここで休んでて、決着は僕らだけでつける」
僕はその場を立ち去ろうとするがマキアに止められる
「幻想種を1人で相手するなんて無茶だよ〜、幻想種は契約者の近くにいたら魔力の回復速度は上がるからすぐに戦闘できるよ〜」
そうなのか、今更幻想種についての基本知識を知った気がする
僕はユリアを抱えて結界の中に踏み込む、すると先程まで見ていた景色が一変する
「嘘だろ....」
怪異達が闇の魔力を纏い進軍してくる、その数千を優に超える
「ボク達である程度は相手をしてたんだけどキミ達が一向に異変に気付かないからおかしいと思って戻って来たんだよ」
結界の内側にいるときは微塵も感じなかった魔力がそこら中に溢れかえっている
「どうやら怪異の魔力も上がってるみたいだし空の異変は色々影響がありそうね」
メディカがマキアを連れて隣に立つ
「遠くに三箇所大きな魔力反応があるよ、どうやら幻想種達も来ているようだね」
「それじゃあこれが本当の最終決戦ってわけね、面白いじゃない私はピエロをやるわ、智也はダムザをお願い」
「ダムザは前回と同じ場所にいると思うよ、そこだけ生命の気配が殆どないからね」
「了解、じゃあ健闘を祈るよメディカ」
「あんたの方こそこんなことをで散ったら許さないんだからね」
メディカはそう言うと風に乗って消える
「それじゃあ始めよっか、修行の成果見せてあげるよ!」
僕は近づいてくる怪異の群れに突っ込む
「前に立つと危ないよ<雪原より出でし槍-シャンバラ>!」
智也が地面に片手をつくと周りの地面が雪に包まれ怪異達の足元から氷が突き出る、氷の牙は闇を砕き無に変える
「たった1日の修行でここまで成長するとはね、もう流石としか言えないよ」
「まだまだこれからだよ」
僕は怪異達の中でも一際強い魔力を持った者と対峙する
「<アイスブレード>!」
氷の刀が怪異に迫るが怪異の持っている妖刀に阻まれる
「これならどうかな?」
智也が一歩踏み込むと怪異の下に魔方陣が展開され氷剣が怪異へと突き刺さる、怪異はなすすべなく消えていく
これこそ智也がメディカに教わった魔方陣の新しい使い方である
「ただの怪異でも油断できないね、そろそろ魔力は回復した?」
「本気とまではいかないけどサポートなら十分出来るよ」
「ならダムザのいる場所まで一気に突っ切ろう」
智也とユリアは共に戦場を駆けていく
一方メディカは風の魔法で以前ジョーカーと戦った地に舞い降りる、そこには大量の怪異が蔓延っていた
「ガヤガヤとうるさい奴らね、吹き飛びなさい<翡翠風-エメラルディア>!」
旋風が吹き荒れ怪異を一掃する
パチパチパチと拍手の音が聞こえる
「なんと素晴らしい魔法でしょう、ですがそれすらも私には届かない、ええ届かないないのですよなんと素晴らしいのでしょう」
ジョーカーが拍手をしながらメディカへと歩み寄る
「ほんと聞いてるだけで腹立つ言い方よね、まあそれも今日で聞き納めだけれどね<多重境界元素-炎<パイルファイア>!」
魔方陣から放たれた炎の形状は通常のそれとは大きく異なったものだった、それは薔薇の花びらのように重なり合いそれでいて個々に燃え盛っている
あいつの魔法は属性の変化、だけど一度に大量の魔法の属性を変えることは出来ないはずだわ
紅蓮の薔薇にジョーカーが指を触れる、瞬間炎がジョーカーの指に吸い込まれるように消えていく
「嘘でしょ、ちょっとそんなのあり?」
推測とあまりに違う結果にメディカは頭を抱える
「今宵の私を見くびらないでいただきたい、葛の葉様の結界は我らの力を増幅させ新たなる覚醒をももたらしたのですから!」
ジョーカーが手をかざすと蒼き薔薇が燃え盛る
「紅き炎など生温い、エレメンタルよ自らの炎で消えなさい!」
「そっちこそ見くびりすぎよ<第二元素-蒼海の印ポセイドン>!」
水の竜巻が蒼炎を飲み込む、炎は飲まれても尚その限りを尽くし燃え盛る
「まだ足りないっていうわけねマキアお願い!」
「しょうがないな〜<エンチャント-激流>」
マキアの魔力で強化された渦が炎をねじ伏せ蒸発する
「さっき結界って言ったわよね、つまり空がおかしくなったのは陽を陰に変える魔法なんかじゃない、この地域一帯が葛の葉の結界の中だってこと?」
「それはどうでございましょうかねえ?貴方がいる場所は現実なのでしょう?それならばいいではありませんか、夢に酔っているのは私達だけなのですからねえ」
その時空から一筋の雷撃がジョーカーに落ちる
「おっと私としたことが少々喋りすぎてしまったようです、まあ貴方は此処で消えるのですから問題はずです、そうなのですよ!」
「冷静な雰囲気になったと思ったら急に元に戻るなんて情緒不安定なのかしらね」
ともあれ異変の原因が判明したのは好都合だわ、あとはその解除方法とあいつの言っていた'夢に酔っているのは私達だけ'という言葉が気にかかるわね
「アンデルセン聞いてたかしら?」
メディカは式札に耳打ちする
「大丈夫だ全部聞こえている、今の話が本当だとするのならそいつは相当な大規模魔術だ、いくら代償を払っているといっても葛の葉1人で到底手に負えるものだとは思えない、おそらく幻想種三体が柱となってその魔法を支えているんだろう」
「なら誰か1人でも倒せれば結界の均衡は崩れるってことね、それなら簡単よ私があいつをやればいいんだから」
「他の2人も何らかの力を手に入れている可能性が高い、ダムザは特に厄介だからな智也が勝つためにも頼んだぞ」
メディカは前を見据える
「そういうわけだからあんたには消えてもらうわ」
メディカの身体を魔力が巡る
「我が偽りの伝承を此処に!我は願いの化身なり、例えこの身が尽きようともその祈りは必ず叶う、故に伝承は結実する<収束するは始まりの5-シンフォニア>!」
大気が震える、燃ゆる灼熱、荒ぶる海域、吹き荒ぶ暴風、裁断せし光、全てを飲み込む闇、五大元素は此処に紡がれる
「例え伝承であっても魔法であることには変わりありませんねえ」
ジョーカーが手を構える、だが伝承は全く変化しない
「五大元素が全て同時に存在する、それこそが私の伝承の力よ、勝負あったわね」
勝ち誇った顔でメディカは勝利を宣言する
「そうですか、私はとても悲しい、悲しいのですよ、この力を使わなくてはいけないことがね!」
ジョーカーが叫ぶ
「これより始まるはマジックショー、今宵の空気は歪んでおりますご来場の皆様はお気をつけくださいまセ!」
伝承が揺らぎ境界を失う、同時にメディカの周りの空気も灯火が吹かれたように揺らめく
「魔法が歪んでる...いや違う空間を歪ませてるわけ?」
呆気にとられたメディカをよそにジョーカーは笑う
「歪みなさい、その形も残さぬほど歪みなさい!」
その言葉の通りメディカの伝承は拳ほどの大きさになってジョーカーの手で潰される
「貴方では私には勝てないのですよ!そうなんですよ!」
「空間の圧縮による魔法の無効化なんて反則級じゃない、これじゃあこいつを引き付けてるのが限界だわ、アンデルセンあんたの方はどうにかならないの?」
「わかった結界の解除は俺が試みよう、どうやらこちらにも現れたようだ」
屋敷の結界の外、暗き静寂の中で影が動く
「お嬢さん、このような夜は出歩かない方がいい」
闇を裂き妖艶なる幻想種が現れる
「久しぶりね探偵さん、だけど残念ね私はあなたに構ってる暇はないの」
キュリアスが手をかざす
「魔方陣展開、この一撃は天を裂く<滅びの理-ルイナス>!」
屋敷全体を覆い尽くすほどの大きさの魔方陣が屋敷上空に現れる、魔方陣は闇の中で一層強く輝き膨大な魔力を放射する
「物語をここに紡ぐ、遥か昔人々は魔と決別したこれは星々の記憶なり<顕現するは境界の日-ボーダーセパレーション>!」
グリムニアに宝石がまた1つ増える
人々が魔を行使していた頃原初の魔法戦争は起こった、その後魔の力は現世から消え去り今に至ると言う、魔法の存在の境界線それが今再び引かれる
魔方陣から放たれた膨大な魔力が何かに遮られる
「私の一撃が防がれるなんて...その魔法面白いわね」
「物語は真に近づくほどより強力になる、古の時代に行われた魔法戦争、お前も幻想種であるのなら知っているであろう?」
「そんな昔のことは忘れたわよ、今の私は葛の葉様に仕える者そのような記憶は不要よ」
キュリアスが魔方陣にさらなる魔力を送る、境界は屋敷の本来の結界の手前まで押し下げられる
「何故この結界が押されているんだ、物語にお前が逆らえるはずなどないはずだ!」
かつて幻想種が経験した人と魔の決別、その物語を模したこの結界は幻想種であるキュリアスに対して本来以上の力を発揮するはずなのだ、それなのにキュリアスの魔法はなんの影響もないように境界を越えようとしている
「だから言ってるでしょう、私にそのような記憶は無いと!」
魔方陣がさらに輝きを増し境界を超え本来の結界を打ち破る
「これは少しまずいことになったんじゃ無いかい?」
ホームズが呑気に尋ねる
「ああ、結界は晴明を中心に俺たちに五芒星の加護を与えていたらしいからな、あれが破られた以上短期決戦で決めるぞ!」
アンデルセンはグリムニアを手にする
「物語をここに紡ぐ、彼方より放たれるその一撃は星を砕き命を滅する、人類に刻まれし罪はここに顕現する<断罪の光-リグナファプタ>!」
グリムニアにさらに宝石が輝く
暗き空に一筋の光が射す、光は一直線にキュリアスへと直進する
「それしきの魔法今の私には効かないわよ、天に帰りなさい<反転する光-リフレクトミラー>」
鏡が光を跳ね返す、さらに跳ね返った先にも鏡が出現し順々に反射していく
「消えなさい」
一枚の鏡がピキリと音を立てて割れる、受け手を失った光はホームズへと向かう
「残念ながら君の狙いは分かっていたよ<ストームゲイザー>!」
光が届くよりも先にホームズの魔法が発動し相殺する
「じゃあこれは読めてたかしら?」
屋敷の上空に先程と同じ魔方陣が現れる
「二重に仕掛けていたのか、なるほど僕ということが気がつかなかったなんてね」
感嘆するホームズをよそにアンデルセンは焦っている
「何故屋敷を狙うんだ、あそこにはもう何もないはず」
「それは壊してからのお楽しみよ、じゃあ遠慮なくいくわよ<ルイナス>!」
「理由は分からんがやらせるわけにはいかん、物語は繰り返す<ボーダーセパレーション>!」
宝石が輝き再び境界を紡ぐ
「僕も加勢するとしようか<風結界-ウィンドライン>!」
ホームズも結界を紡ぐ、だがキュリアスの魔法の勢いは止まらない
「おかしい、結界を二重にしても殆ど影響していないというのか」
「アンデルセン、後少しもたせてくれ守りが通じないのなら本体を先に叩く!」
ホームズがキュリアスに向かって魔法を放つ
「あなた達がどれだけ足掻いてもここでは私には敵わないわ」
キュリアスは魔方陣に魔力を送りながら指先で小さな魔方陣を描く、小さな魔方陣から飛び出す魔法がホームズを近づけさせない
「こいつは俺たちも部が悪いな」
魔法が境界を超える、魔力砲はホームズの結界もまるで無かったかのように砕き屋敷に直撃する
ドッカーン轟音が響く、屋敷は中心を貫かれ倒壊する
「こちらの任務は終わったわよ、こいつらの相手は私に任せなさい」
戦場の中心部、2人の男が対峙している
同じ姿、同じ魂を持ちながら違う運命を背負い歩む道を違えた者、1人は人として生き、また1人は人ならざる者として生きた、それぞれの物語が今ここで交わる
「よくやったキュリアス、では始めようか俺たちの物語を!」
次話 死の刻
第18話いかがだったでしょうか?
いよいよ最後の決戦が始まりました、敵として現れたのは葛の葉を除いて4人、どうやら彼も生きていたようですね
次回はダムザ対智也の決戦です、果たして智也は死の使いにどの様に挑むのか?
では次の物語で




